1. 英文契約書の形式
英文契約書は、レター形式等のインフォーマルなものから、伝統的なフォーマルな形式のものまで様々です。
2. 英文契約書の前文
フォーマルな形式の英文契約書の前文に関してよく目にするものとして、例えば、以下の様なものがあります。(ここでは売買契約書を例にとります。)
This AGREEMENT, made and entered into this first day of June, 2014, by and between:
(1) ABC Corporation, a company organized and existing under the laws of the state of California, and having its principal office at xxx, Los Angeles, California 94100, U.S.A. (hereinafter called “ABC”), and
(2) XYZ Company, a company organized and existing under the laws of Japan, and having its principal office at xxx, 1-chome, Kunitachi City, Tokyo 186-0001, Japan (hereinafter called “XYZ”),
WITNESSETH:
WHEREAS, ABC desires to sell to XYZ certain products hereinafter set forth; and
WHEREAS, XYZ is willing to purchase from ABC such products.
NOW, THEREFORE, in consideration of the mutual agreements contained herein, the parties hereto agree as follows:
通常の英文とは趣を異にする部分もありますが、この場合は、頭書、契約日付、当事者名、その所在地、説明条項(これは、WITNESSETH 以下の部分です。)など基本的な事柄を記載してあるだけです。
なじみがないため、読みにくいと思われます。その理由は、例えば、「made and entered into」と「by and between」のような慣用句があります。簡単に言えば、「made and entered into」(締結された)と「by and between」(両社間において)という意味です。要は、ABC社とXYZ社の間に2014年6月1日に契約を締結したという内容が書かれているだけです。
なお、各社名の後ろには、例えば、ABC社の場合、「カリフォルニア州法により設立され、存続しており、記載の住所に主たる事業所(または、営業所)を有する」旨が記載されています。XYZ社も同様です。
いずれも慣用的な言い方で、慣れればそれほど難しいものではありません。
3. 「WITNESSETH」について
「WITNESSETH」は、以下を証する(証明する)の意味です。これは、「WHEREAS」と結びついて、その契約を締結するに至った経緯と契約が何を意図しているかを記載しています。一般的に「説明条項」と言われています。
この中で、「Consideration」という言葉は、一般に、約因と訳されます。ご存知の方も多いと思いますが、改めて確認のために申しあげれば、英米法に特有な概念で、契約が有効に成立するためには、契約が捺印証書(Deed)により作成されているか、あるいはその約束が「Consideration」によって支えられている必要があります。(「Consideration」とは、約束者がその約束の交換に、受約者から受け取る利益、または受約者が約束者からの約束と交換に負担する不利益とされます。)
Give and takeの関係が契約書に明示されている場合は、その契約書(レター形式の場合など)に「in consideration of」という文言が使用されていなくても問題はないとされます。
参考図書:法律用語辞典(有斐閣)、英和大辞典(研究社) コンパクト六法(岩波書店)、Trend (小学館)、Oxford Dictionary of English、日本法令外国語訳データベースシステム他