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販売店契約と代理店契約 その2

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販売店契約と代理店契約の違い

販売店契約と代理店契約 - リスク負担による違い

以前、英文契約書におけ販売店契約代理店契約の違いについて、簡単に書いたことがあります。その中で、その違いを、主としてリスク負担の問題でという観点から見てみました。「代理店契約」では、代理店(Agent)は、販売実績に応じて、販売手数料(Commission)を受け取り、販売代金の回収責任や販売した商品に問題がある場合の責任も代理店が負担し、代理店(Agent)は、取次を行うだけです。「代理店契約」は、「Agency Agreement」「販売店契約」は、「(Distributorship Agreement」と称されます。

 販売店契約と代理店契約 - 法律的な見方による違い

その違いが、主としてリスク負担の問題であるとしても、外から見ただけでは、一見似たような経済活動を行っているように見えます。しかし、見方を変えてみると「代理店」=「Agent」と「販売店」=「Distributor」は、法律的に別物です。すなわち「代理店」=「Agent」がある商品の「売主」(本人)=「Principal」の代理人であるのに対して、「販売店」=「Distributor」は、自己の名義と計算により売主から商品を買い取り、これを第三者=顧客に再販売するという違いがあります。

ちなみに、(日本の)法律用語辞典で、「代理」を見てみると、「AがBのためにCとの間で意思表示をし、又は、意思表示を受けることによって、その法律効果がBに直接帰属する制度のことで、Aを代理人、Bを本人、Cを第三者という(民法99条)」

そのため、例えば、販売店契約には、以下に作成した例文のような内容が盛り込まれます。

Distributor shall purchase the Products from the Principal and the Principal shall sell the Products to Distributor for resale in the Market, solely at Distributor’s risk and for Distributor’s own account based on the terms of this Agreement.

(「販売業者」は、「本人」から「製品」を購入し、また、本人は、「販売業者」の単独の危険負担により、および本契約の条件に基づく「販売業者」の自己勘定(取引)のために、「市場」での再販売のために「販売業者」に「製品」を販売する)

一般には、販売店契約と代理店契約を「販売代理店契約」と総称する場合がありますが、以上のように法的には、販売店契約と代理店契約に区別されています。

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

英文契約書の書き方(日経文庫)

 

 

英文契約書の用語、構文 (その22)(別紙/付属文書について) 

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 英文契約書の別紙/付属文書、「Addendum」、「Annex」、「Appendix」、「Attachment」、「Exhibit」、「Rider」、「Schedule」等

 英文契約書を読んでいると、ほぼ必ずといって良いほど目にするのが、「Addendum」、Annex」、「Appendix」、「Attachment」、「Exhibit」、「Rider」、「Schedule」等の英文契約書のいわゆる「別紙」、「付属文書」を表す言葉です。

「別紙」、「付属文書」が、英文契約書の中でどのように使われているかと言えば、例えば、その内容が多岐にわたるためこれを契約書本文に書くと煩雑になる場合、商品やサービス等の価格表など、将来的に変更される可能性のあるもの、契約書作成時に契約書本文中に書ききれなかったもの等々があります。

 別紙/付属文書は、契約書の一部を構成し、契約書と不可分一体

これらは、名称が別紙/付属文書となっていますが、これらは、契約書の一部を構成し、契約書と不可分一体のものです。そのため、英文契約書中の「最終性条項または完全なる合意(Entire Agreement)」と称される条項において、例えば、以下に作成した例文にように「別紙」、「付属文書」が、契約の一部を構成することを確認することもあります。

(1) 「All Attachments shall be deemed a part of this Agreement」

(すべての別紙は、本契約書の一部とみなす。)

(2) 「The Exhibits attached to this Agreement shall be made an integral part of this Agreement」

(本契約書に添付の付属文書は、本契約の不可分の一部とする。)

(3)「The terms and conditions in the addendums, exhibits and schedules attached hereto are the entire agreement between ABC Company and XYZ Corporation with respect to the subject matter thereof.」(本契約書に添付された付録、別紙およびスケジュールの条件は、本契約の主題に関してABC CompanyとXYZ Corporation間の最終的合意である。)

従って、これらの内容を変更する場合、例えば、以下に作成した例文のように規定されます。

(4)「No modification of this Agreement shall be binding unless executed in writing by both parties.」(本契約のいかなる変更も、両当事者の署名のある書面によりなされない限り、拘束力を有しない。)

 さまざまな呼び方

ところで、「Addendum」、「Annex」、「Appendix」、「Attachment」、「Exhibit」、「Rider」、「Schedule」を一括して「別紙」、「付属文書」と書いてきました。

辞書を見ると、以下の様なさまざまな訳がなされています。例えば、

Exhibit=「別紙」、「添付書類」、「付属書類」、「付属文書」、

Appendix=「付属書」、「付属書類」、「添付文書」、

Attachment=「別紙」、「付属書」、「添付書面」、

Schedule=「付属明細書」、「付則」、「スケジュール」

中には、例文(3) 「Addendum」、「Exhibit」、「Schedule」のように、契約書本文以外に複数のいわゆる「別紙」が使用されることもあります。組織または政府機関等によっては、内規、法律によってどの言葉をどのように使うかが定められている場合もありますが、多くの場合、英文契約書の起草者が任意で選択する場合が多いように見受けられます。

英文契約書の起草ということで思い出しましたが、自身の経験からも、作成に長い期間を要する契約(例えば、1つの契約を作るのに半年とか1年またはそれ以上かかる場合)では、英文契約書の本体部分のみをある程度完全な内容とし、交渉や内容の決定(価格、仕様)に時間がかかるものは、別紙/付属文書の形にしておきます(もちろん予定価格、仕様が当初から厳密に定義されている場合もありますが)。この1つのテクニックで、ずいぶんと助けられました。

なを、これらの言葉を当方で訳す場合は、翻訳する英文契約書の内容に即して、適切な言葉を選んでゆきます。以上、契約書翻訳の視点から見てみました。

例文に訳文が付いている場合、それらの訳文は暫定訳(法律文を除く)です。
本ブログの内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。

弊社では、豊富な経験と知識に基づき原文に忠実かつ適格な翻訳を適正価格でお届けします。英日翻訳、日英翻訳のいずれにも対応しております。お客様の作成したAI翻訳による翻訳文を原文と対比して校正するポストエディットも承っております。

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

英文契約書の長文読解-すっきり翻訳の心得  その1

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「英米法」と「大陸法」

契約書翻訳に際して、英文契約書や英文契約書の解説書に接していると、よく「大陸法」とか「英米法」とかという言葉を目にします。周知のように、「英米法」は、イギリス、カナダ、アメリカ、オーストラリア等、かつてのイギリスの植民地を中心に使われ、慣習法、判例法に負うところが多く、他方、「大陸法」は、フランス、ドイツ、イタリア等、ヨーロッパ大陸を中心にローマ法に主たる起源をもつ法体系です。(いずれもその具体的な内容は、例によって専門書をご覧になることをお勧めします。-ウェッブ検索によるものは、その内容の真偽が定かでない場合も多いようなので)

とりあえず英文契約書の内容を理解するに際しては、こられを掘り下げて仔細に吟味する必要もないかと思われます。むしろ、その内容に、契約に対する当事者双方の意図が正しく記載され、これにより契約が正しく履行され、さらに当事者間の誤解や紛争を防ぐための事柄が記載されているものであるか、どうかを判断すること、またはドラフティングを行う場合、そのような内容の英文契約書を作成することが必要です。契約書翻訳の視点から解説してみます。

 一般的かつ包括的な表現の不在

ただし、英文契約書の特徴の1つとして、上記の法体系による影響なのか、ある事柄について「*一般的かつ包括的表現」を行うよりも、ある事柄について、「そこに含まれるであろう個々の事例を1つ1つ列挙する傾向」があり、これにより文章が長文化する傾向が生じる原因の1つと考えられます(もちろん、英文契約書の文章が長文化する傾向はこのことだけが原因ではありませんが)。

(*日本の契約書の場合、一般的・包括的/抽象的に表現される傾向があり、例えば、良く眼にする内容として「本契約に定めなき事項または疑義を生じた場合、両当事者の協議によりこれを解決する」等の一文が定番として記載されているのを良く見かけます。もちろん英文契約書でも、例えば「Matters not stipulated in this Agreement or any doubt, with respect to the interpretation or performance of this Agreement shall be discussed and resolved based on the coordination between the parties」)のような一文(当方作成の例文。)を記載することもあります。)

また、ある事柄(あることに対する契約)について、様々な相手方に対して長年使用されている契約書などでは、問題の発生、時代の変化等、さまざまな要因により、それが当初作成した時点では、考え得るすべてのことを網羅した内容であっても、加筆、修正、削除等が行われます。これにより、中には、文章が、複雑化し、時として「木に竹を接ぐ」的な文章になることもあります。

英文契約書では、その一面だけを見ても条項の一文が長くなり、日本の契約書と比べ、相対的に複雑化する傾向が見られます。このことが、英文契約書の内容を理解するうえでの1つの妨げになっているかと思われます。そこで、ためしに長文を読解について少し書いてみます(英文契約書の長文を理解するためのコツをつかむ多少の手助けにはなるのでは???)。長文を読解については、一度書いてみたいとの希望がスタッフにあったのですが、例文の作成に手間がかかるので、年末の業務が終了した今になってしまいました。

including, but not limited to / include, but is not limited to」または「including without limitation /including, without limitation 」については、以前のブログで取り上げたことがあります。

今回は、これらの表現を使用して、「すっきりした翻訳」に挑戦してみます。作成した以下の例文を基に、実践的に説明いたします。また、その他のヒントも掲載ました。

ABC Company shall, to the fullest extent permitted by law, indemnify, defend upon request, and hold harmless XYZ Company and its members, officers, directors, employees, agents, representatives, subsidiaries, affiliates, successors, and assigns (collectively, “Indemnitee”) against all losses, claims, damages, expense and liabilities sustained or incurred by the “Indemnitee” for any damage, harm, loss or injury of any kind, direct or indirect, to any property, entity or person,  including, but not limited to, claims for injuries to employees of the “Indemnitee”, ABC Company and/or any related party, arising directly or indirectly out of any act, omission, conduct, negligence or default by ABC Company or its related party or their respective officers, directors, employees, agents, representative, subsidiaries, successors, or assigns (“ABC Company’s Parties”) and/or arising directly or indirectly out of or in any manner associated with the Obligations under this Agreement or any contact with or encountering of any property, equipment, vehicles, facilities or personnel of the “Indemnitee”, regardless of whether any such liability, damage, loss or injury is caused by, results from or arises out of the negligence, fault or other liability of the “Indemnitee” or any other party to be indemnified.

今回作成した例文は、192ワードあります。一見して「大変そう!」、「何か翻訳が難しそう。」、「長い文章は苦手!」などと思われる方も多いのでは!

 ポイント1-インデックスとなる単語、表現を見つけて、グループ化

このような場合、インデックスとなる単語、表現を見つけ、かつ、グループ分けすることで、すっきりとした翻訳が可能になります。まず、以下のように上記の文章をグループに分けます

ABC Company shall, to the fullest extent permitted by law, indemnify, defend upon request, and hold harmless XYZ Company and its members, officers, directors, employees, agents, representatives, subsidiaries, affiliates, successors, and assigns (collectively, “Indemnitee”) against all losses, claims, damages, expense and liabilities sustained or incurred by the “Indemnitee” for any damage, harm, loss or injury of any kind, direct or indirect, to any property, entity or person,

 including, but not limited to, claims for injuries to employees of the “Indemnitee”, ABC Company and/or any related party,

arising directly or indirectly out of any act, omission, conduct, negligence or default by ABC Company or a its related party or their respective officers, directors, employees, agents, representative, subsidiaries, successors, or assigns (“ABC Company’s Parties”)

and/or arising directly or indirectly out of or in any manner associated with the Obligations under this Agreement or any contact with or encountering of any property, equipment, vehicles, facilities or personnel of the “Indemnitee”,

regardless of whether any such liability, damage, loss or injury is caused by, results from or arises out of the negligence, fault or other liability of the “Indemnitee” or any other party to be indemnified. 

 ポイント2

ここで注目するポイントは、「including, but not limited to、」「arising directly or indirectly」と「regardless of whether ~」です。

 「including, but not limited to」の場合、その前にある文章を訳した後に、「including, but not limited to」で分け、「上記は、以下を含むが以下に限定されない」と限定すれば、すっきりと訳すことができます

「 (例文の下線部分の訳)を含むが「(例文の下線部分の訳)に限定されない」というように、一つの文章の様に訳すと長くなり、読み手もどこに焦点を置いて読む(訳す)のか迷ってしまいます。

 また、「arising directly or indirectly」と「and/or arising directly or indirectly」のように、同じ文章があるときは、必ず、xxxおよび/またはxxxのように、「arising directly or indirectly」の文章ごとに訳します。

 ポイント3

また、長い文章の後に、「regardless of whether ~」のような言葉がでてきた場合、前の長い文章から訳し始めて、「(それ以前の文章を全部入れて)、whether以下であるか否かにかかわらない。」とすると、訳すのが大変になります。この場合、長い文章を訳した後に、[上記は、whether以下であるか否かにかかわらない。」とします

この様に整理した後に、文章として読んで分かり易いようでしたら、そのままのこれを訳文といたします。

ただし、文章の流れが若干スムースでないように思われる場合、読みやすくするために、シャッフルして文章を入れ替えることも可能です。

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)

Merriam-Webster (Webster)

Collins Concise Dictionary (Harper Collins Publishers)

英文契約書の用語、構文(その21) 「文頭の否定」

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英文契約書における文頭の否定

前回、「In no event shall」で始まる文章について見てみました(「In no event shall」に導かれるその後の文章部分は、[~でない]の意味になる)。

例:In no event shall someone be liable for ……………(いかなる場合も(人は)…………に関して責めを負わない。)

「In no event shall」のほかにも、文章の文頭に否定を意味する語句が置かれると、その語句に導かれる文章の内容は、否定文になります。英文契約書に限らず、英文において一般的に見られることですが、今回は、英文契約書でよく見かける例に関して、思いついたもののいくつかについて、契約書翻訳の視点から作成した例文を通して見てみます。

「Nothing~

Nothing in this Agreement shall be construed as creating ……….

(本契約のいかなる内容も、……….を生じると解釈されることはない。)

Nothing in this Agreement shall require ……….

(本契約のいかなる内容も、……….を求めないものとする。)

None of ~

None of the parties may assign or transfer any of its or their rights or obligations under this Agreement.

(いずれの当事者も、本契約に基づく当事者、もしくは各当事者の権利と義務を、譲渡または移転することはできない。)

Neither~nor

Neither we nor you will be prevented from disclosing confidential information;

「当社と貴社のいずれも、以下の機密情報の開示を妨げられない。」

No someone shall~

No party shall be responsible for ~

(いかなる当事者も~に責任を負わない)」

In no case ~

In no case may this agreement be transferred by the Company

(会社は、(決して)本契約を譲渡してはならない。)

辞書を見ると、例えば「In no case ~ 」「In no way~」いずれも「決して~しない」との意味が書いてあります。繰り返しになりますが、これらの用語が文頭に置かれると、通常、その後に続く文章は、肯定文を記載します。ただし、文章全体としては、否定文になります。このような形式で文章を作成すると、文体として、いわば締まりのある文章に仕上がりますが(あくまで個人的感想です。)、自分でこれらの表現を使って文章を起草する場合、なれないうちは注意が必要かもしれません。実際、ごくまれですが、多くの英文契約書に接する機会が多いためか、これらの表現を使いイティブが起草した文章で、これらの用語が文頭に置かれているにもかかわらず、その後に続く文章を否定文で書いているというような例も、経験しています。

余談ですが、掲示などの表現で、「No changes can be made to the tickets.」の様に表現することがありますが、「We can make no changes~」の様に、言い切ってしまうような感じでなく、No changes can be made~」の様に、「チケットの変更はできないことになっています」表現を使い、「決まりですので、ご了承の程、お願いします。」というニュアンスにします。

口語でも、「No xxx, No life」と言うように、XXXがないと生きていけないなどの表現もあります。絶対、何か欲しいとき、何かしてほしいときなどに使用します。

例えば、音楽好きなら、「No music, No life.」 お菓子が好きなら、「No cookies, No life.」、「No chocolates, No life.」

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

英文契約書における独特の用語、構文(その20)「 no event shall」

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英文契約書における文頭の否定

英文契約書を見ると、定義条項が設定されており、重要な語句に一貫した意味を与えています。また定義条項に加え、さらに各条項に、文言が定義されている場合もあります。定義条項がない場合でも、各条項に、文言が定義されていることが多くあります。 一見すると、あいまいさが排除されているようにも見えます。ただし、実際に英文契約書に接してみると、たしかに重要な語句は、定義されていますが、慣れていないと、「混乱」するような書き方の文章があります。慣れてしまえば、どう言うものでもありませんが、最初のうちは人により戸惑うことがあります。その意味からすると、いわゆる「何となくあいまいさ」が感じられる部分かもしれません。契約書翻訳の視点から見てみます。

「In no event shall」で始まる文例

今回、1つの例として「In no event shall」で始まる文章(文章の冒頭におかれている場合)を例にあげてみます。 通常、「In no event shall」から始まる文章は、「In no event shall」に導かれるその後の文章部分を、「~でない」とします。

例文としては、以下の様なものがあります。

In no event shall someone be liable for …………………………… (いかなる場合も(人は)……………………………に関して責めを負わない。)

In no event shall」の中に「No」と言う文言があるため、「In no event shall」に導かれるその後の文章の内容は否定文になります。(In no event willの形もあります)

In no event shall ABC Corporation be liable for any damages caused by or in relation to this Service. (いかなる場合も、ABC  Corporationは、「サービス」に起因する、または関連する損害賠償に対して責任を負わない。)

この例では、一読して意味がはっきりしていますが、「In no event shall」に導かれる長文では、熟読しないと、意味を取り違えるような書き方がされている文章もあります。

以下の例文を作成してみました

実務で目にする内容と比べると相当簡単なものです。

「In no event shall」:(A) ABC  Corporation be liable for any damages caused by or in relation to this Agreement, (B) ABC  Corporation’s liability in respect of any and all claims arising from or related to this Agreement exceed 1,000,000 Yen; and (C) ABC Corporation’s liability for any claim extend beyond the period hereof.

いかなる場合も、(A)ABC Corporationは、本契約に起因する、または関連する損害賠償に対して責任を負わない。(B)ABC Corporationは、本契約に起因する、または関連する申し立てに関して、百万円を超える責任を負わない、(C)ABC Corporationの責任は、本契約の期間を超えない。

 すなわち、文頭の文言「In no event shall」は、文章全体を否定するため、以下のように「肯定文」で書かれている文章 (A)、(B)、(C)の部分は、内容的に「否定文」になります。

  • (A)は、文面上では、責任を負う(be liable for):否定されているから賠償責任を負わない。
  • (B)は、文面では、責任は百万円を超える(exceed 1,000,000 Yen):否定されているから百万円を超えない。
  • (C)は、文面では、責任は、契約期間後も延長( extend beyond the period hereof):否定されているから延長されない。

上記のような書き方をしなくても、自分で起草する場合、例えば、Aの文章の場合、

「ABC Corporation shall not be liable for any damages caused by or in relation to this Agreement.」 とすれば、わかりやすく、簡単です。(複数の項目を列挙するには、「In no event shall」:を使うのが便利かもしれませんが。)

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

 

英文契約書の条項「一般条項」 (その3)「修正条項」

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今回は、英文契約書の条項-修正条項について契約書翻訳の観点から見てみます。
英文契約書では、書面重視の考え方、習慣等から、一般に、その内容は考え得るすべての事項を可能な限り取り決める傾向があります。

これらは、以前に触れたことがある口頭排除の原則(Parol evidence rule)、最終性条項(1)または完全なる合意といわれる(Entire Agreement)に代表される概念です。おおざっぱに言えば、当事者間の文書、口頭における当事者間の了解事項についての最終的な合意を記載した文書が、契約書となります。

 すなわち、当事者間で文書により合意した事柄以外は、契約内容として認めないという姿勢を確認するため、英文契約書の条項「一般条項」の中にも、あえて口頭排除の原則や、最終性条項を補完する意味で、いわゆる「修正条項」なるものを設定することが一般的に行われています

その目的は、契約締結後における、文書によりなされる以外の当事者間の口頭による契約内容のあらゆる修正を排除するところにあります。

記載方法は、いろいろありますが、基本的に、「契約のいかなる変更も、両当事者が署名した書面にもの以外は、無効である(有効ではない)」旨の一文が記載されます。

例えば、「No amendment or modification of this Agreement shall be effective unless in writing and signed by both parties.」(本契約のいかなる修正もしくは変更も、両当事者が署名した文書による以外無効である)のような例文を作ることができます。最低この内容で問題ないと思われますが、実際には、上記のような文章にいろいろな要素が(多くは、多分起草者の考えにより)加えられます。例えば、上記にいくつかの他の具体例を加えたいとか、詳細に規定したい場合、「No amendment or modification of this Agreement and “no waiver of any provision hereof” shall be effective unless in writing and signed by both parties.」この例では、「権利放棄」を加えてみました。また、「両当事者が署名した書面」について、署名人を指定したい場合は、「No amendment or modification of this Agreement shall be effective unless in writing and signed byauthorized representatives ofboth parties.」のように「authorized representatives of」(授権された代表者)を入れると、それ以外に者が署名しても、その変更は、無効となります。

いずれにしても、契約内容を変更したら、内容を問わず書面を作成し、当事者間で確認することです。

例文-最終性条項(1)

「This Agreement constitutes the entire agreement, and supersedes, whether orally or in writing, all prior agreements and understandings of the parties hereto with respect to the subject matter hereof, and cannot be amended or otherwise modified except in writing executed by the parties hereto.          (本契約は、最終的合意を構成し、口頭・書面によるものを問わず、本契約の主題に係わる本契約の両当事者間のすべての以前の合意と了解に優先し、また、本契約の両当事者が署名・捺印した書面による場合を除き、修正、または他の方法により変更することはできない。)

参考図書:

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

英文契約書の書き方(日経文庫)

英文契約書の用語、構文(その19)

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英文契約書の前文-頭書と説明条項で使われる用語(続き)「become effective,come into force, remain in effect,continue in effect,continue in full force and effect]

前回、「in witness whereof」、「whereas」、「now, therefore」、「Recitals」など、伝統的なスタイルの英文契約書の前文-頭書と説明条項で使われる用語について見てみました。

今回は、以前に触れた「Term(期間)」の条項で、良く見かける表現や用語(become effective,come into force, remain in effect,continue in effect,continue in full force and effect)です。「英文契約書の条項 「一般条項」の「Term(期間)」の中で以下のような例文を作成したことがあります。

「This agreement shall be effective from the 1st  of January, 20xx and remain in full force for the period of xx years from that date, 」(本契約は20xx年1月1日から発効し、その日からxx 年間有効に存続する)

この中で使った「be effective」という表現があります。「(契約)が発効する/(契約)が有効になる」と意味です。

「(契約)が発効する/(契約)が有効になる」といういろいろな表現

「be effective」のほかにも、同様な意味を表すものとして、例えば「take effect」、「become effective」、「come into force」、「have effect」、「enter into force」、「come into effect」、「go into force」などいろいろあります。上記の例文を基にして、これらのいくつかを使った例文を作成してみました。

a. 「become effective」

「This agreement shall become effective on January 01, 20xx…………」(本契約は20xx年1月1日に発効する)

例えば、以下のようにも使われます。

「The present Act shall become effective as of the day of its promulgation.」(この法律は、公布の日から、これを施行する。)裁判所法

「This agreement shall become effective upon acceptance by Party A」

(本契約は、 Aが承認した時点で発効する。)

b.「come into force」

「This Agreement shall come into force on January 01, 20xx………… 」

c.「come into effect」

「This Agreement shall come into effect on January 01, 20xx………… 」

以下のようにも使われます。

「Merger shall will come into effect on …………… 」

「Notification shall come into effect when it is delivered in writing to the actual address of the other Party…………」(通知は、相手方の実際の住所宛に送達されたときに有効になる)

冒頭の例文、「This agreement shall be effective from the 1st  of January, 20xx and remain in full force for the period of xx years from that date, 」(本契約は20xx年1月1日から発効し、その日からxx 年間有効に存続する)の中で、「remain in full force」という表現があります。「~の期間(契約)が(引き続き)有効である」と意味です。この用語と同じ意味をもって使われる用語としては、「remain in effect」、「continue in effect」、「continue in full force and effect」などがあります。ここでは、上記の例文の種類とは、異なる例文を作ってみました。

e.「remain in effect」

「Obligations under this Agreement with regard to the Confidentiality remain in effect for xxx years after expiration of this Agreement」(機密保持に関する本契約に基づく義務は、本契約の満了後、xxx 年間、引き続き有効である)

f.「continue in effect」

「This Agreement shall continue in effect unless terminated by mutual agreement of the parties in writing」(本契約は、書面による両当事者双方の合意により解除される場合を除き、有効に存続する。)

g.「continue in full force and effect.」

良くみかけるのが、契約のある条項が何らかの理由で法的に無効でも、残りの条項は、有効であるとの表現、「The remaining provisions of this Contract shall continue in full force and effect even if …………………」(…………………の場合でも、本契約の残りの条項は、引き続き有効である)

ぐるっとパス奮戦記

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 美術館見学が趣味の私は、美術館を検索しているときに「ぐるっとパス」を見つけました。なんと、平成14年4月から平成15年3月と記載され、2,000円でした。「わあ~!すごい!」 この金額で、たくさんの博物館、美術館、資料館が見られ、はたまた、神代植物園、上野と多摩動物園、葛西臨海水族館等々が見られる、こんな良いことがあっていいものかと、熱く、「ぐるっとパス」に取りつかれました。

 そこで、9月12日に、仕事を早退して、上野の国立博物館で、特別展「台北 國立故宮博物院-神品至宝-」を見るときに、入場券に加え、「ぐるっとパス、お願いします。」と声軽やかにお願いしたのですが、切符売り場の人が、「ぐるっとパスのことはご存知ですか?」と聞き返したときには、「ハイ」と答えながら、一抹の不安(そんな大層なものではありません)が芽生え、心の中で「えっ」とたじろぎましたが、「ぐるっとパス」の魅力の方が勝り、「ぐるっとパス」への興味は収まりませんでした。

 購入して、その日は、意気揚々と国立博物館の中で見学しました。その後、よくよく見れば、2か月間の期間限定で、そこから、私の「ぐるっとパス」奮戦記が始まりました。

 なんで「奮戦記」? だんだん読めば分かりますよ!

台北 國立故宮博物院-神品至宝-」では、翠玉白菜(すいぎょくはくさい)の展示期間が7月7日(月)まででしたので、残念ながら見られませんでした。「人と熊」清時代・18~19世紀の作を見ることができました。白黒半々の玉材を彫り分け、白い部分にモンゴル風の服を着た人物、黒い部分に熊を配しています。「まったく可愛い~!」「あは、相撲取ってる~!」人と熊さんは、手を組み合って、力比べをしています。「きっと、モンゴル相撲だ!」突き出たお尻や笑顔は愛らしく、みる者を幸せな気持ちにさせてくれます。

でも、実際は小さい玉材で、この白黒の玉材を人と熊と掘り分けるなんてすごい発想だね!

 その他の台北 國立故宮博物院の宝(展示物)もまさに目を見張るものばかりでした。全部、お伝えできないことは、残念です。

 折角買った券です。その日は、東京都美術館の「メトロポリタン美術館 古代エジプト展 女王と女神」も見学しました。

 美術館の案内には「アメリカを代表する美の殿堂、ニューヨークのメトロポリタン美術館が誇るエジプト・コレクションをまとまった形で紹介する初めての展覧会です。「女王と女神」をテーマに厳選された約200点の至宝が来日、全点が日本初公開です。」と記載されています。

 今回のテーマは、ハトシェプスト女王と女神様たちの生活を顧みることができました。

「女王と女神」の身の回りの品々は、まったく精巧で、煌びやかで、本当に往時をしのばせる物たちばかりでした。そのままの色と形を保った煌びやかな品々たち、「本当に豪華な生活を送っていたんだろうな!」

 古の中国とエジプトの圧倒的な存在感に浸った夕べでした。

 続く

美の宴

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本日、8月20日が最終日の、ホテルオークラで開催されている「美の宴」を鑑賞してまいりました。

【美の宴 ~琳派から栖鳳、大観、松園まで】と銘打ち、

第1章~奏でる~、第2章~舞い踊る~、第3章~集う~と「宴」に集う人々が舞い、奏で、楽しみを共有するイベントである宴を心行くまで堪能するという趣向で名画が参集していました。

琳派の俵屋宗達、酒井抱一を始めとし、上村松園、竹内栖鳳、伊東深水、小磯良平、横山大観、河合玉堂、下村観山、前田青邨等の江戸期から現代にいたるまでの日本画家を始めとしたたおやかな優しい色使いから、アンリマチスの奔放な色のほとばしりまで、見る機会をいただけました。

ホテルオークラの本館が、「新しいホテルオークラへ」へ

1962年の開業以来、「世界をもてなすホテル」と称されてきたホテルオークラ東京の本館が、2015年9月より建替えを行い、2019年春にリニューアルされるとのことです。本日は、中をじっくりと拝見させていただきたかったのですが、仕事が一段落したので、少しお時間をいただいて事務所から直接ホテルオークラ向かい、仕事場に帰社いたしました。雰囲気を堪能させていただきました。

券が2枚ありましたが、友人が行けないということで、美術館の入り口でお会いした方に、1枚差し上げました。

英文契約書の用語、構文 (その18) 「in witness」、「whereas」、「now, therefore」、「Recitals」

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ブログということで、その時に頭に浮かんだり、思いついたりしたことを書いているためと、書き手によっても、その時に書きたいことがあるため、「英文契約書の用語、構文」という仰々しい表題の割には、全体としての整合性もなく、順序立てた説明がなされた内容ではありません。ただし、、契約書やマニュアルといった、原文の忠実に訳すことが求められることが多い側としては、思いつき的に何かを書くことができるというのは、一種の息抜きになることがあります。

今回は、「in witness」、「whereas」、「now, therefore」、「Recitals」について契約書翻訳の観点から見てみます。前回、「whereof」が英文契約書の結びの冒頭で使われる場合について、以下の例文を作成しましたが、この中で、「IN WITNESS」は、「~を証するために」の慣用句です。いずれもいささか古めかしい表現ですが、伝統的なスタイルで英文契約書において一般的に使われています。

1. 「in witness」

IN WITNESS WHEREOF, the parties hereto have executed this Agreement …………」(本契約を証するために、本契約の両当事者は…………)

なを、「witness」の古い形である「witnesseth」が英文契約書の前文に「(本契約は)以下を証するものとする」の意味で使われている場合も相変わらず見受けられます。

「in witness whereof」と同じ意味で「in witness hereof」も「~(以上)の証として」の意味で使われています。

2. 「whereas」、「now, therefore

英文契約書の前文」には、「witnesseth」の他に、「whereas」、「now, therefore」など、英文契約書の結びの部分と同様伝統的なスタイルの用語が使われているのが良く見受けられます。「whereas」は、契約を締結するに至る経緯や契約当事者についての説明等が書かれています。そのため、「説明条項」などと言われますが、「whereas」それ自体を訳さないこともあります。例えば、

WITNESSETH

WHEREAS,

for many years, ABC Company is has sold XYZ products (hereinafter referred to as the “Product”)  through xxxxxxxx market in the world and desires to sell the products…………

(ABCは、長年にわたり、xxxxxxxx市場を通じて、XYZ 製品を世界中で販売しており、「製品」を販売することを希望している。)

WHEREAS,

EFZ Company is willing to purchase the product form ABC Company …………

(EFZは、ABCから「製品」を購入する意思がある。)

NOW, THEREFORE, in consideration of mutual agreement specified in this Agreement, the parties agree to the following:

(よって、本契約が規定する双方の合意を約因として、両当事者は、以下に関して合意する。)

などと記載されます。「Consideration」については、以前「英文契約書の前文」で触れたことがあります。

上記の例文は、フォーマルな形式の一例として作成してみましたが、とくに、これらのスタイルを踏まなくても、例えば、上記の例では、製品の引き渡しと代金支払いが明確に規定されていれば、問題ありません。

3. 「Recitals

上記の部分(英文契約書の頭書と説明条項)を「Witnesseth」と「Whereas」を使わず、以下のように「Recitals」(経緯)として記載することもあります。

     RECITALS

ABC Company desires to sell ………….

EFZ Company is willing to ………….

 これも、伝統的なスタイルです。

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)
ビジネス法律英語辞典(日経文庫)
Business English (Barron’s)
The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)