英文契約書の用語(単語編) (No.4) ar – ar

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英文契約書翻訳に携わる中で、経験上、よく目にしたり、よく使われたり、または知っておいて損はないと思われる単語と用語について、契約書翻訳の観点から簡単な例文を作成してその用例(一部ですが)を見てみます。

arbitration

1. 「arbitration」とは

英文契約書でよく目にする単語の1つです。当事者間の紛争、解釈の相違等を解決する方法の1つとして、裁判所の訴訟によらず、当事者間で合意して、契約書にarbitration clause(仲裁条項・仲裁約款)を設けることが行われます。
一般に、いずれかの当事者の国の仲裁によるか、中立的な第三国の仲裁によります。

2.仲裁機関とは、

仲裁機関として、日本では、日本商事仲裁協会(The Japan Commercial Arbitration Association)があります。その他、有名なところでは、The American Arbitration Association(A.A.A) (米国)、London Court of International Arbitration(英国)等があります。

仲裁を用いることで、裁判によらずに迅速に紛争を解決する狙いがあります。

 以下に「仲裁条項」の簡単な例(日本商事仲裁協会の仲裁による)を作成してみました。

 All disputes between parties of this Agreement arising out of or relating to this Agreement shall be settled by arbitration in accordance with the Arbitration Rules of the Japan Commercial Arbitration Association.

3. 実際の仲裁

 実際には、これに加えて、条文の解釈の相違、有効性、当事者間の権利義務等、さまざまな事柄が付け加えられ、もっと長い文章になることが多く、また、例文のように、日本商事仲裁協会の仲裁によるもののほか、仲裁地を被告地にする場合、第三国にする場合等、さまざまです。

なを、第三者である仲裁人の裁定は当事者を拘束します。

 その他関連する項目:仲裁人(arbitrator)裁定(award)調停(mediation)、管轄裁判所(court of competent jurisdiction, competent court, court of jurisdiction等)、準拠法(Governing Law) 防訴抗弁(demurrer)、International Chamber of Commerce(I.C.C) ,United Nations Commission on International Trade Law (UNCITRAL)等。

arrangement

協定,取決め,配置,債務整理

arrears

延滞金,滞納

If Lessee is in arrears in the payment of Rent (賃借人が家賃を滞納している場合)

arrival of time

期限の到来

article

条、条項、物件
“Article” means an article of this Agreement.(「条」とは、本契約の条項を意味する。)

参考図書

  • 法律用語辞典 有斐閣
  • 英和中辞典 研究社
  • コンパク六法 岩波書店
  • Oxford Dictionary of English 他

英文契約書の用語(単語編) (No.3) al-app

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英文契約書翻訳に携わる中で、経験上、よく目にしたり、よく使われたり、または知っておいて損はないと思われる単語と用語について、契約書翻訳の観点から簡単な例文を作成してその用例(一部ですが)を見てみます。ここに記載してない単語、用例も多くあります。さらに詳しくお知りになりたい場合は、辞書、専門書をご覧ください。「単語」の範囲も、主に、いわゆる民事、特に契約書で良く使用されるものとしました。

allotment

割当て、分配、分担額

allotment of shares(株式の割当て)

alter

変更する,改める、改ざんする、

alteration

変更(部分的)、改変、変造

alteration of articles of incorporation (定款の変更)、alteration of securities(有価証券変造)

alleviate

罪を軽減する

alternative

二者択一、alternative plan(代替案)、alternative dispute resolution=ADR代替的紛争解決方法

amend

修正する、改める、改正する

amendment

変更、修正、改正、amendment of a count(訴因の変更)「modification」、「change」も使用されます。

「No modification or amendment of this Agreement shall be valid or binding unless made in writing and executed by the parties hereto.」(本契約の変更または修正は、本契約の両当事者より書面が作成され、署名される場合を除き、無効であり、法的な拘束力を有しない。)

amicable

友好的な; 平和的な、円満な。amicable settlement(和解)‐「All disputes or differences which arise out of this Contract, it is to be settled by an amicable settlement between the parties hereto.」(本契約に起因する係争または紛争は、両者間の和解により解決されるものとする。)

amicus curiae

法廷助言者

amnesty

恩赦

amortization

償却、債務の償還、amortization shares (株式の償却)、amortization term (償還期間、割賦償還期間)

amount

総計、総額、総計〔いくらに〕なる。amount in controversy (訴額)、amount of damages(損害賠償額)、amount of redemption (償還額)、amount to be contributed (分担額)。

ancestor

被相続人、先祖

Anglo-American Law

英米法

annexation

付加、附合

announcement

通達、通知、

annual shareholders meeting

定時株主総会

annuity

年金

経験的には、「pension」を使う場合が多いかも。例えば、Defined Contribution Pension Law(確定拠出年金法)

answer

回答書、答弁、抗弁、責任引受け、答弁する

answer in writing (答弁書)

antedate

先日付

Anticipated acceptance

満期引き受け

anticipation

先制、予期、予想、事前行為、期限前に財産を取得したり処分したりすること、新規性がないこと(特許)

Anti-dilution (clause)

希薄化防止(条項)

Anti-Dumping Act

反ダンピング法

antitrust laws

独占禁止法=反トラスト法

apparent agency

表見代理

apparent authority

表見代理的権限、外見上の権限

apparent representing director

表見代表取締役

appeal

上訴、訴願、陳情

appeal to the supreme court (上告)

appearance

出席、出現、出場、裁判所への出頭、応訴

appellant

上訴人(下級審の審判を不服とし、上級審の審判を求める者,確定した判決の再審を求める者)

appellate court

控訴裁判所、上訴裁判所、上訴審、第二審裁判所

appendix

別紙、附属書類、付録

applicable articles of laws or ordinances

罰条

applicable law

準拠法、適用法

This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of Japan(本契約は、日本国の法律を準拠法として、これに従い解釈される)

application

申請‐If the application is accepted(申請が受理された場合)、請求、適用、application of law(法律の適用)、申込み、株式の申込み、弁済の充当、出願-patent application(特許出願)、home country application(本国出願)international application(国際出願)その他、多くの分野でいろいろな場面で使われます。

apply

適用する‐The following definitions apply to this Agreement(本契約には、以下の定義を適用する)apply mutatis mutandis (準用する)-The provision of the second sentence of the preceding paragraph shall apply mutatis mutandis to such case.(この場合においては、前項後段の規定を準用する。)この用語も、いろいろな場面で使われます。

appointed party

選定当事者

appointment

指名、任命-appointment and dismissal (任免)

appropriate

適切な

apportionment

分配、分割、配分、割当て

appraisal

鑑定、評価、査定

appraiser

鑑定人、評価人

appreciate

弁識する、一般的には「認識する」、「感謝する」の意味

apprehension

逮捕、捕捉

appropriation

充当‐appropriation of performance(弁済の充当)、財産取得,割当て、Appropriation of Earnings Plan(利益処分案)目的の特定、流用・私用・盗用、(政府)歳出予算

approval

承認、許可、認可、賛成、approval of board of directors (取締役会の承認)、approval of Diet (国会の承認)

appurtenance

従物、附属物 Appurtenance shall be subject to the disposition of the principal.(従物は、主物の処分に従う)

参考図書

英文契約書の用語(単語編)(No.2)ad-al

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英文契約書翻訳に携わる中で、経験上、よく目にしたり、よく使われたり、または知っておいて損はないと思われる単語と用語について、契約書翻訳の観点から簡単な例文を作成してその用例(一部ですが)を見てみます。ここに記載してない単語、用例も多くあります。さらに詳しくお知りになりたい場合は、辞書、専門書をご覧ください。「単語」の範囲も、主に、いわゆる民事、特に契約書で良く使用されるものとしました。これまでの「英文契約書の用語、構文」の内容と重なる部分もありますが、そのような部分を改めて確認し、別の観点から見てみます。なを、ここでは、列挙していない単語やそのほかの意味も多くあります。「単語」について、さらに多くの意味および使い方を知る必要がある場合、辞書や専門書をご覧ください。

adjudication of not guilty

無罪判決

adjunct of real estate

不動産の附合

adjective law

手続法(実態法は、substantive law)

adjudge

判決を下す

adjudgement

判決、そのほか judgment、a judicial decision、decision (of the court, ruling, sentence)等もあります。

adjust

清算する、調整する、調停する

administration

行政、管理、遺産管理、このほかにも、さまざまの意味があります。また、他の語を合わさって以下のような熟語を作ります。

administrative action

行政処分、行政行為

administrative agency

行政機関

administrative authority

職務権限、行政権

administrative disposition

行政処分

administrative guidance

行政指導

administrative law

行政法

administrative litigation

行政訴訟

administrative measures

行政処分

administrative organ

行政機関

administrative power

行政権

administrator

遺産管理人、管財人、管理者、行政官等

その他いろいろな意味に使われます。

admiralty

海事法、海事裁判所

admiralty case

海事事件

admissibility of evidence

証拠能力、証拠の諾否

admission

告白、自認、加入承認

admission of claim

請求の認諾

*ここは「admission」の項目ですが「claim」は、いろいろな意味があり、いろいろな用い方をされる注意すべき単語です。例えば、特許関連では、「クレーム」、「特許請求の範囲」、「請求項」等とされます。

admonishment

訓戒、

admonition

訓戒、説諭

adobe

住居

adopted child

養子

adoption

採択、採用、養子縁組

adoptive parent

養親

advance

貸金、立替え等、他の語と組み合わされて、例えば、advance payment(前払い、前渡し金)等、熟語を作ります。「advance」は、動詞としても「(…を)進める、(…を)(…へ)前進させる」、「期日を繰り上げる」等の意味で使われます。

advance disbursement

立替金、「disbursement」は、「支払い、支出、支払金、出費等」金銭にかかわる意味

advance receipt of a bribe

事前収賄

adverse

反対の、利害関係の相反する

他の語と組み合わさり、熟語を形成します。adverse witness(相手方証人)、

* adverse party(相手方)、adverse effect(悪影響)material adverse effect(重大な悪影響)など。

*「相手方」については、経験上、the other partyが多く使われるようです。

adversary system

当事者主義、対審制度。英米法の手続上の制度です。

adverse claim

異議申立て、反対主張

adverse possession

不法占有

advocate

弁護士、主唱者,

affiant

宣誓供述者、供述者

affidavit

宣誓供述書

affiant

宣誓供述人

affirm

〈下位裁判所の原判決を〉維持する、確認する、確約する。

affirmative defense

積極的抗弁

against one’s will

意思に反して

agent

代理人、代理店、仲介人

agency

代理、代理店、特約店、政府機関、庁、局、斡旋、このほかにも、さまざまな意味があります。さらに他の語と組み合わさって、さまざまな熟語をつくります。例:government agency(政府機関)、public agency(行政機関)、agency agreement(代理店契約、代理人契約)、regulatory agency(監督官庁・規制機関)、agency disclosure(代理行為開示)、agency in fact(任意代理)等々。

agreement

合意、取り決め、協定、契約等

他の語と組み合わさり、熟語を形成します。license agreement(ライセンス契約、実施契約)、agreement about relief of liability(免責約款)、agreement for arbitration(仲裁契約)、agreement of sale(売買契約)、agreement of settlement(協定)等

alien

外国人 「外国人」としての意味では、経験上、「foreigner」を使用する場合が多いようです。

alienation

財産を移転する、財産権を譲渡する
「譲渡する、移転する」の意味では、transfer, assignment, conveyanceが多く使われます。

all element rule

オールエレメントル-ル、全要素考慮の原則

allegation

申し立て、陳述、主張。動詞は「allege」

参考図書

 

 

英文契約書の用語

英文契約書の用語(単語編) – No.1(aa-ad)

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これまでも「英文契約書の用語と構文」について見てきましたが、英文契約書翻訳に携わる中で、経験上、よく目にしたり、よく使われたり、または知っておいて損はないと思われる単語と用語について、契約書翻訳の観点から簡単な例文を作成してその用例(一部ですが)を見てみます。ここに記載してない単語、用例も多くあります。一般に英単語は、1つの単語に様々な意味を持つ場合が多くあります。さらに詳しくお知りになりたい場合は、辞書、専門書をご覧ください。「単語」の範囲も、主に、いわゆる民事、特に契約書で良く使用されるものとしました。

これまでの「英文契約書の用語、構文」の内容と重なる部分もありますが、そのような部分を改めて確認し、別の観点から見てみます。なを、ここでは、列挙していない単語やそのほかの意味も多くあります。「単語」について、さらに多くの意味および使い方を知る必要がある場合、辞書や専門書をご覧ください。なを、個々の単語の品詞についての記載は行いません。

abandon 放棄する、訴訟を取り下げる
abandonment 排除、中止
abode 居住、住所           [類]domicile
abolition 廃止
abrogation 廃止
absence 不存在
absentee 不在者
abstract 抄本[形]抽象的な

abstract of family register、abstract copy of family registration、abstract of his/her family register:戸籍抄本、abstract of title:権原要約書

abuse 悪用、不正使用、虐待
acceleration 期限の利益の喪失、弁済期日の繰り上げ(繰上げ弁済)。

上記いずれも、期限が到来するまで債務の履行を請求されないことである「期限の利益」を失うことです。この単語の意味を辞書で見ると、まず先に出てくるのが、「加速、促進等」ですが、契約書を含む法律文書では、上記の意味として使われる場合があります(前後関係を確認する必要があります)。

「期限の利益の喪失」を「the loss of the benefit of time」または「forfeiture of the benefit of time」等と記述する場合も多くあります。

なを、「期限の利益を喪失する」という場合、例: the bond-issuing Company shall forfeit the benefit of time in relation to the total amount of such bonds(当該社債の総額について期限の利益を喪失する)会社法。

期限の利益は、benefit of term、benefit of time等です。

accept 受諾する、受け入れる、収受する、受理する、譲り受ける
acceptance 受諾、受理、承諾、引き受け

acceptance of debt:債務の引き受け

acceptance of performance: 弁済受領

acceptance of succession: 相続の承認

このほかにも、他の語との組み合わせでさまざまな成句を形成します。

access 入手、立ち入り、アクセス
accession 添付
accessory 共犯

accessory building: 附属建物

accessory thing: 従物

accessory to a crime : 従犯

accommodation 融通、約束・行為、宿泊設備、和解

accommodation party: 融通者、便宜供与者

accomplice 共犯
 accord 合意、協定、代物弁済

accord and satisfaction: 合意、協定、代物弁済

 account 口座、会計、計算書、勘定

bank account: 銀行口座、account receivable: 売掛債権

accounting 会計

accounting book: 会計帳簿

accrue 発生する、(権利、利息等が)生じる

例:Interest on this loan accrues at a rate of 5.0% per annum.(本件貸付の利息は年率5.0%です。)

accrued expenses:未払費用、accrued income:未収収益など、accrued xxxxの形式で使われることも多くあります。accrueの名詞形accrualも多く使われます。

例:accrual basis‐発生ベース。

accusation 告発
acknowledgment 承認、認知

動詞は、acknowledge。The User acknowledges that ABC Corporation is the sole owner of all intellectual property rights「利用者は、ABC Corporation が、の単独所有者であることを承認する。」

acquaint 告知する、知らせる [類]notify, inform
acquisition 取得、獲得

acquisition of share option:新株予約権の取得

acquisition or loss of property rights [名]物権の得喪

acquisition or loss of rights [名]権利の得喪

acquisition value [名]取得価額

このほかにも、他の語との組み合わせでさまざまな成句を形成します。

acquit 無罪を言い渡す、(責任等)を免除する、acquit oneselfで、責任を履行する
acquittance 債務消滅、債務消滅証書
act (個々の)行為、行為、法律、判決書

Act of God:不可抗力、act of government: 統治行為、act of procedure: 訴訟行為、act out of necessity: 緊急避難。このほかにも、他の語との組み合わせでさまざまな成句を形成します。

訴訟、訴権
action 行動、訴訟、動作、行為の過程全体、action for an objection: 異議の訴え、action for damages: 損害賠償請求訴訟、action in personam: 対人訴訟、action on title: 本権の訴え
actual 現実の、実際の

他の語との組み合わせで成句を形成します。

actual possession: 直接占有、actual proof: 実証、

actual harm: 実害

addendum 別紙、添付書類、附属文書
addition 付加物、追加料金、addition of count: 訴因の追加
addressee 受信人
adequate 十分な、適切な

他の語との組み合わせで成句を形成します。例:adequate cause:正当な理由、adequate remedy: 適切な救済(策)

adhesion contract 附合契約、附従契約
adjacent 隣接、近隣(必ずしも境界を接しているとは限らない)
adjourn 延期する、一時停止する、中止する
adjournment 延期
adjudication 裁定、裁判、adjudication of an appellate court: 上訴の裁判、adjudication of bankruptcy: 破産宣告

ここに記載してない単語、用例も多くあります。さらに詳しくお知りになりたい場合は、辞書、専門書をご覧ください。

 

参考図書

英文契約書の用語

英文契約書の用語と構文 (その24) 「有効」「無効」等について

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「有効」「無効」という用語

前回、英文契約書に限らず、契約書の中で目にする用語「正当」「適切」これらに類する用語について、それらの意味と使われ方について契約書翻訳の観点から見てみました。これらのほかにも、契約書でよく使用されている用語として、「有効」、「無効」があります。これらは日常において使用される用語であるとともに、契約書またはその他法律文書において重要な役割を担っています。なお、例によって、個々の意味を深く掘り下げるのではなく、これらのことばを表すのに、英文契約書(または法律文書)では、具体的どのような単語を用いて、どのように使用されているかを簡単に確認してみます。まずは、それぞれの意味を契約書翻訳の観点から簡単に確認してみます。

 「有効」とは。

効力、効果のあること。役に立つこと。

(一般に、効力は、一定の働き、効果を及ぼすことができる能力)

例:資源の有効利用。

* 効力に関連して「法の効力」、「効力規定」等の概念がありますが、ここでは触れません。

「有効」の意味を表すのに使用される主な単語(主に契約書・法律文書)

有効な:「effective」、「valid」、「efficacious」、「available」、「effectual」など

有効になる:「become effective」、「come into effect」、「take effect」など

発効する:「become effective」、「come into effect」

有効である:「be effective」、「be valid」、「be available」など

ここにあるのは、主に契約書・法律文書に使われることが多いものですが、その他にも、「有効」の意味をあらわす言葉はいろいろとあります。

 「無効」とは。

効力・効果のないこと、効力・効果のないさま。

法律行為がその効力発生に必要な要件を欠くために,意図した法律効果が発生しないこと。取り消しの場合と異なり、何人の主張がなくとも当然に効力を生ぜず、追認や時の経過によっても有効とならない。

参考図書:法律用語辞典(有斐閣)他

「無効」の意味を表すのに使用される主な単語(主に契約書・法律文書)

「無効」の:「ineffective」、「invalid」、「unavailable」、「ineffectual」、「null and void」

「無効になる/失効する」:「become ineffective」、「become null and void」

「expire」、「lapse」(主に期間の満了の意味で)

「無効にする/失効する」:「annul」、「nullify」

ここにあるのは、主に契約書・法律文書などに使われることが多いものです、「無効」についてもその他いろいろな言葉があります。

辞書を見ると、例えば、「有効」、「無効」を表す「effective」と「ineffective」は、一般に「望んだ効果が得られる」意味で用いられ、同じく「valid」、「invalid」は「法的に効力がある」、「法的に効力がない」に意味で用いる、とありますが、実際には、さまざまに使用されています。

以下の例は、契約書ではありませんが、わかりやすい例として、法律文で使用されている「有効」、「無効」の例を見てみます。

「有効」の例:

第一項の規定により提示した旅券がその効力を失い、又は当該旅券に記載された有効期間が満了したとき。

(iii) The passport presented pursuant to the provision of paragraph (1) has lost its validity or the valid period entered in the passport has expired. (出入国管理及び難民認定法施行規則)

許可の有効期間が満了したとき。

If the valid term of the license has expired.(職業安定法施行規則)

介護支援専門員証の有効期間は、申請により更新する。

The effective period of a Long-Term Care Support Specialist Certification shall be renewable by the submission of an application.(介護保険法)

 申込みの有効期限があるときは、その期限

where there is a time limit for application, such time limit;(特定商取引に関する法律施行規則)

「 無効」の例

前各項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。

Any special provisions that run counter to the provisions of the preceding paragraphs, which are disadvantageous to the Purchasing Party, shall be invalid.(特定商取引に関する法律 )

消費者契約の条項の無効 (消費者契約法)

Nullity of Consumer Contract Clauses

ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。(民法)

provided, however, that, in cases the other party knew, or could have known, the true intention of the person who makes the manifestation, such manifestation of intention shall be void.

「有効」、「無効」も他の語と組み合わさって、例えば以下のような意味の用語となります。(他にもいろいろあります。)

有効期間:valid period / effective period / valid term

「有効」、「無効」に関連する用語として「発効」、「失効」があります。意味としては、例えば「発効」の場合:「法律や規則などの効力が発生すること」のように説明されていますが、契約書でもよく使われることあり、これらも含めて、以下に例文を作成してみました。

This Agreement shall be effective as of the date of execution of this Agreement.

「本契約は、本契約の署名日の時点において発効する」

Terms and conditions of this Agreement shall become invalid upon the conclusion of the new agreement.

「本契約の条件は、新しい契約に締結とともに失効する」

なお、冒頭でも述べましたが、「有効」、「無効」とういう言葉は、多方面で使われています。個人的には、よく目にする例として、コンピューターやソフトウェアの機能を「有効にする」、「無効にする」という場合、それぞれ、「enable」、「disable」が使われます。

「有効」、「無効」については、このほかにも、いろいろな例や内容をもつものがあり、機会があれば、それらを見てみたいと思います。

参考図書:

法律用語辞典(有斐閣)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

Japanese Law Translation

英文契約書の用語と構文 (その23) 「正当」「適切」等について

英文契約書の用語と構文 (その23) 「正当」「適切」等について

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今回は、英文契約書に限らず、一般に契約書でよく使用されている用語である「正当」と「適切」について、その意味と使われ方について契約書翻訳の観点から少し見てみました。まずは、それぞれの意味を調べてみます。

 「正当」とは。

「正しく、道理にかなっていること」、「理の当然であること」。法律用語辞典(有斐閣)。例えば、「正当な補償」、「正当な業務」等、その他さまざまに使われます。

この用語を使用する場合は、以下の内容が前提とされるようです。

1.「法律等で正当であると認められている状態にあること」、

2.「ある行為の対象となる側にとって、正当であると受け入れられる状態にあること」

以下の例は、契約書ではありませんが、わかりやすい例として、法律文で使用されている「正当」の例を見てみます。

後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。

A guardian of an adult may, where any justifiable reason exists, surrender his/her office upon the permission of the family court.(民法 第四編第五編)

 簡易ガス事業者は、正当な理由がなければ、その供給地点における一般の需要に応ずるガスの供給を拒んではならない。

(1) A Community Gas Utility shall not refuse to supply gas to meet general demand at its service points without justifiable grounds. (ガス事業法)

「適切」」とは

 

「状況・目的などにぴったり当てはまること」。「その場や物事にふさわしいこと」。例として、「適切に判断する」「適切な表現」、「適切な(適当な)処置をとる」があります。

 類義語に「適当」があります。これは、「過不足なく、よくあてはまる」という意に用いることはありますが、「適切」よりも意味に幅があり、また、「ほどよいことをいう場合」もあり、また、「いいかげんな」、「あいまいな」、の意味で使用される場合もあります。例としては、「適当に選ぶ」「適当にごまかす」等。

 以下は、法律文で使用されている「適切」の例です。

  公的統計は、適切かつ合理的な方法により、かつ、中立性及び信頼性が確保されるように作成されなければならない。

Official statistics shall be produced with appropriate and reasonable methodologies, so as to ensure neutrality and reliability.(統計法)

 適格消費者団体は、不特定かつ多数の消費者の利益のために差止請求権を適切に行使しなければならない。

A qualified consumer organization shall exercise its right to demand an injunction properly for the interests of many unspecified consumers.

(消費者契約法)

 英文契約書を翻訳する際に、用語「正当」と「適切」に対応する英語をいくつかあげてみます。

「適正な」は、appropriate、proper、right、just、reasonable、legitimateなどがあります。appropriate、properは、「適正な」と「適切な」のいずれにも使用することができます。

「適切な」は、一般的に、appropriate、proper などが使われますが、その他に、adequate、を使用することもあります。

これらは他の語と組み合わさって、例えば以下のような意味の用語となります。(他にもいろいろあります。)

justifiable reason                            正当な理由

without any justifiable reason       正当な理由なく

reasonable assurance                    合理的な保証(正当な保証)

reasonable grounds                       相当な理由(正当な理由)

legitimate subscriber                      正当な加入者

just cause                                        正当な理由(事由)

without just cause                          正当な理由(事由)なく

authorized representative             正当な権限を有する代表者

valid SSL                                       正当なSSL

valid evaluation                            正当な評価

legal reason                                   正当な理由

adequate support                            適切な支援

adequate management                   適切な運営

appropriate discount rate               適切な割引率

appropriate decision                       適切な判断

proper methods                               適切な方法

これらが実際にどのように使われているか、例文を作成してみました。

He’s adequate to this job.

彼は、この仕事に適任です。

This is appropriate in the circumstances

これは、この状況において適切なものです。

When the Indemnifying Person fails to provide reasonable assurance to the Indemnified Person of its financial capacity to defend such Proceeding and provide indemnification with respect to such Proceeding.

「補償人」が、当該「訴訟手続き」の弁護を行うためのその財務的能力に関して、「被補償人」に合理的な保証を提供できず、当該「訴訟手続き」に関連する補償を提供できない場合、

Proper disposal of all waste, including shipping containers of raw material, is specifically included as part of YYY’s duty under this Agreement and YYY agrees to indemnify XXX, for any property loss or damage, any bodily injury or death, or any claim or action to the extent arising from proper or improper disposal by YYY.

原材料の搬送容器を含む、すべての廃棄物の適切な処分は、本契約にもとづくYYYの義務の一部として明確に含まれるものとし、およびYYYは、YYYによる適切なまたは不適切な処分に起因する範囲の財産の滅失もしくは損害、身体損傷もしくは死亡、または請求もしくは訴訟に対して、XXXに補償することに同意する。

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

日本法令外国語訳データベースシステム

 

 

機密保持義務に関する条項(Confidentiality)、機密保持契約(Confidentiality Agreement)/非開示契約(Nondisclosure Agreement)に見られる用語「Receiving Party」と「Disclosing Party」

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今回は、英文契約書翻訳に携わる中で、経験上、よく目にしたり、よく使われる条項について契約書翻訳の観点から簡単な例文を作成してその用例(一部ですが)を見てみます。

1. 英文契約書に共通してみられる条項

前回、「契約の目的・種類のごく簡単な説明」にあるように、英文契約書には、様々な種類があります。これらの契約は、契約の種類・内容は違うものの、共通してみられる条項(契約の種類にかかわらず、同じ内容を規定している)があります。例えばよく知られているものに、「契約に適用される法律を規定する準拠法条項または適用法条項「(Governing Law)または(Applicable Law)」、「契約に関する解釈の相違、紛争の解決についての方法を定めた、管轄裁判所の合意に関する条項(Jurisdiction)、仲裁に関する条項(Arbitration)」等があります。

2. 「機密保持義務」に関する条項とは

英文契約書には、上記以外にも様々な共通してみられる条項がありますが、それらの中でも重要なものの1つとして、「機密保持義務」または「秘密保持義務」に関する条項(Confidentiality)があります。これら機密保持義務に関する条項は、「契約の当事者が契約を履行する過程で知り得た相手方の情報に関する機密保持義務を負担すること」を定めています。

例えば、「Neither party shall disclose the information obtained from the other party during the performance of the Services to any third party without prior written consent of the other party.」(例文A)簡単な例文ですが、最低限このようなことが記載されます。なお、当然のことながら書き方は、契約により多様です。

機密保持義務については、契約の種類・内容により、相手方に対する機密保持義務の負担の程度が、双方とも公平に負担するもの、または負担の程度がいずれの当事者に偏っているもの等、様々です。

機密保持義務の対象となる具体的内容は、機密保持がなされることで、財産的価値が維持できるもの、例えば、技術情報、ノウハウ、企業秘密等の他、契約により様々なものを対象とします(例えば、まれに契約の存在自体を秘匿する旨が記載されているような場合もあります)。

ただし、例えば以下に作成した例のように、技術情報、ノウハウ、企業秘密等に関しては、契約を締結する時点ですでに一般的に知られているもの、または契約の途中で当事者の過失によらず一般的に知られるようになったもの、機密保持義務に違反することなく取得したもの等は除外されるのが普通です。

例文B:  The Confidential Information does not include the information that:

(i) is already generally known to the public at the time of disclosure;

(ii) becomes, at a later date, generally known to the public without a fault of the Party XXX; or

(iii) is acquired by Party XXX without violation of the confidentiality.

*これらの他にも様々なケースが規定されます。

そのほか、契約が終了した後、契約が契約期間内に中途で解除された場合でも、一定の期間、内容を指定して、機密保持義務が存続する旨の記載もあります。

例文C:  Each party shall hold the other party’s Confidential Information in confidence for a period of three (3) years from the date of expiration or termination of this Agreement. (この例では3年間)

これら以外にも、様々な内容が記載されます。これらについては、機会があれば、特色のある条項をまとめてみたいと思います。

契約条項としての「機密保持義務」(Confidentiality)とは別に、「機密保持義務」そのものを「機密保持契約」または「秘密保持契約」(Confidentiality Agreement)として、1つの独立した契約とする場合もあります。名称が異なりますが、非開示契約(Nondisclosure Agreement: NDA)もこの類です。Nondisclosure Agreementを「機密保持契約」または「秘密保持契約」を称する場合もあります。一般的には「NDA」の名称で知られています。)便宜上、ここでは、「機密保持契約」とします。

3..  「Receiving Party」と「Disclosing Party」

「機密保持義務」を1つの独立した契約にした「機密保持契約」が作成される経緯は、様々ですが、契約の当事者の呼称について、情報を開示する側を「Disclosing Party」、「Disclosing Person」または「Discloser」等と呼称し、情報を受け取る側を「Receiving Party」、「Receiving Person」または「Recipient」等と呼称する場合があります。Disclosing Party(開示当事者)、Disclosing Person、Discloser (いずれも、開示人もしくは開示者)、Receiving Party(受領当事者)、Receiving Person、Recipient(いずれも、受領人もしくは受領者)というよう呼称します。

なお、これらの表記は、「機密保持契約」ではない契約の「機密保持契約条項」または「機密保持」に関連する記述内容に使用される場合もあります。

「それぞれの当事者の名称/呼称」を用いても、何の問題もありませんが、「Disclosing Party」と「Receiving Party」としたほうが、その立場が明瞭で分かりやすく、間違いを生じることが少ないということかもしれません。特に、いずれの当事者においても、相手方に対する機密保持義務の負担の程度が公平な場合は、「情報を出した者」と「情報を受け取った者」とするほうが、分かりやすいはずです。

上記の例文Bを基にして、例文を作ってみます。

The Confidential Information does not include the information that:

(i) is already known to the Receiving Party at the time of disclosure;

(ii) becomes, at a later date, known to the Receiving Party without a fault of the Receiving Party; or

(iii) is acquired by Receiving Party without violation of the confidentiality.

双方で情報をやり取りする場合、例えばAからBへ、BからAへというような情報の流れを気にせずに、「情報を開示した者」と「情報を受領した者」を区別することができます。特に、「情報を開示した者」と「情報を受領した者」に関して、当事者に加え、各当事者の関係者、役員、従業員、下請業者、子会社等を含める場合、これらを集合的に「開示当事者」、「受領当事者」として規定すると分かりやすくなります。

参考図書:

英和大辞典(研究社)、コンパクト六法(岩波書店)、Trend(小学館)、Oxford Dictionary of English

契約の目的・種類

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 契約の目的・種類のごく簡単な説明

契約の目的の1つは

契約」とか「契約書」という言葉を日常、何気なく使っています。法律用語辞典で「契約」を見ると、最初に「相対する意思表示の合致(合意)によって成立する法律行為……………..」と書いてあります。この後にその他の説明が付加されていますが、とりあえずこの部分を押さえておけば良しとします。次にこの説明にある「法律行為」を法律用語辞典で見ると、最初に「法によって行為者が希望したとおりの法律効果が認められる行為……………………………」とあり、この後にその他の説明が付加されています。

ただし、このように「契約」の定義などと難しく考えなくても、当事者間における口頭または書面による合意が、契約であり、この当事者間の合意を書面化したのが契約書です。なを、「契約」を作成する主たる目的の1つは、「将来の紛争を防止し、相手方による契約違反が生じた場合、相手方に契約の履行を強制する」ことです。

 さまざまな契約-契約の種類を分類する基準

当然のことながら、契約には、さまざまな種類があります。その分類の方法も、さまざまです。何を基準にするかによっても違ってきます。例えば、「売買契約」、「サービス契約」等、経済活動の種類により分ける場合、法律上の取引契約に基づく場合、国ごとの基準による分け方等、さまざまです。

 よく見かける契約書

何を基準にするかという、難しいことを考えなくても、日常的に、すぐに頭に浮かぶものだけでも、例えば、英文契約書を例にとると、「売買契約=」(物品、不動産等)、「販売店契約(Distributorship Agreement)」、「代理店契約(Agency Agreement)」「知的財産権契約」(特許、意匠、商標、ソフトウェアのライセンス契約等から研究開発委託契約など多方面にわたります。)、「サービス契約(Service Agreement)」(さまざまなサービスがあります)。「賃貸借契約(Lease Agreement)」(リース契約とも呼ばれ、事務機器から産業機器、航空機まで分野は広範囲に及びます。)、「融資契約=Loan Agreement」、「保証契約(Guaranty Agreement)」、「雇用契約(Employment Agreement)」、その他、M&A、合弁事業契約、知的財産開示・販売、プラント輸出、建設工事請負に関する契約等、数え上げれば、このほかにも、いろいろな種類があります。

共通して言えることは、肝心な部分で、当事者間の権利・義務を明確に規定することにより、相手方が契約に違反した場合、相手方に契約の履行を強制することができるようにすることです(実際には紆余曲折があり、困難を伴いますが)。

ちなみに、知られているように日本の民法では、売買契約,消費貸借契約,賃貸借契約,雇用契約,請負契約,委任契約,和解契約,組合契約,交換契約,使用貸借契約,贈与契約,寄託契約,終身定期金契約を「典型契約」として定め、これに該当しない契約を「非典型契約」または「無名契約」としています。いずれ機会があれば、このような契約についても見てみたいと思います。とりあえず、興味がある場合は、多くの数の専門書が出ておりますので、ご覧ください。

 努力目標的な条項や紳士協定的な条項

なお、「相手方に契約の履行を強制することができるようにすること」とは、「契約」を作成する主たる目的の1つですが、例えば、英文契約書では、次の例文(例文用に作成した文章です。)「Distributor shall use all commercially reasonable efforts to obtain all necessary approvals from the regulatory authorities required to sell the Product in the Territory.」のように「commercially reasonable efforts」等の文言を使い、「shall use」と、一見必須事項ではあるが、見方により努力目標的な意味にも解される条項も、よく見受けられます。中には、「支払については、xxxxは最善の努力を行い……………………………」などいういらぬ心配をするような内容も、時として見受けられ、いろいろな状況下で契約が作れられる場合があることを実感させられます。また、当事者間の力関係が、契約書の記載の仕方に如実に現れる場合も時として見受けられます。

以上、英文契約書翻訳の視点から簡単に見てみてみました。

 

 

英文契約書の長文読解-すっきり翻訳の心得  その2

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英文契約書の長文読解

英文契約書には長文の部分が多く登場します。英文を読む上で長文読解は難しい分野です。

そのため、例えば、英文に関する多くの試験では、長文読解が大きな配点を占めている場合が多々見られます。契約書翻訳の視点から解説します。

英文契約書の誤字、脱字、文章の脱落、消し忘れ

ところで、まず試験では見かけませんが、実際の英文契約書では、「いわゆる“typographical error (通称、typo)”と称される誤字、脱字、誤植」または「不注意によるによる文字、文章の脱落、消し忘れ」等が発生することがあります。

下記に作成したサンプルの文章は長文ではありませんが、微妙に読みにくく感じます。それもそのはず、「抜け」があります。

It is not bound by any contractual obligation, juridical decision or restriction order from any issuing authority, any statutory or regulatory duty.

もちろん、訳すことはでき、訳文は、「これは、契約上の義務、命令発行機関による決定もしくは差し止め命令、または制定法上の義務もしくは規制法上の義務により拘束されない。」となります。

ただし、よく読むと、「any issuing authority」と「any statutory or regulatory duty」が微妙につながりません。理由は、「or」を抜いてあるからです。

改めて文章を見て行くと、

A.  contractual obligation (契約上の義務)

B.  juridical decision or restriction order from any issuing authority

(命令発行機関による決定または差し止め命令)

C.  any statutory or regulatory duty(制定法上の義務もしくは規制法上の義務)

上記の3本立ての制約により、主語である「It」が「not bound」されている。

このように考えると、「or」がany issuing authorityとany statutory or regulatory dutyとの間に必要になることがわかります。

インデックスとなる言葉が重要になる

上記の例文は、短いものですが、長い文章になってくると、文章を構成する上で「and」、「or」の様なインデックスになる言葉がとても重要になります。

実際の英文契約書では、さらに文章が長くなります。元々長い文章の中に、あらゆる想定で、あらゆる言葉を足して、契約文書として抜かりなく、漏れがないように作成されているため、さらに、翻訳しにくくなっています。「and」、「or」ばかりではない、文章の区切りとなるインデックスワードを見つけることが翻訳の際に必要となってきます。

また、例えば、長年の間、何回も異なる相手方に対して発行されたような契約書は、「typographical error 」に加え、文章の未修整、消し忘れ、脱落、本来追加すべき部分の欠落等が存在することがあり、その場合でも、これらを見極めるための1つの手段としてインデックスとなる言葉が重要になることがあります。

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

Winer

販売店契約と代理店契約 その2

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販売店契約と代理店契約の違い

販売店契約と代理店契約 - リスク負担による違い

以前、英文契約書におけ販売店契約代理店契約の違いについて、簡単に書いたことがあります。その中で、その違いを、主としてリスク負担の問題でという観点から見てみました。「代理店契約」では、代理店(Agent)は、販売実績に応じて、販売手数料(Commission)を受け取り、販売代金の回収責任や販売した商品に問題がある場合の責任も代理店が負担し、代理店(Agent)は、取次を行うだけです。「代理店契約」は、「Agency Agreement」「販売店契約」は、「(Distributorship Agreement」と称されます。

 販売店契約と代理店契約 - 法律的な見方による違い

その違いが、主としてリスク負担の問題であるとしても、外から見ただけでは、一見似たような経済活動を行っているように見えます。しかし、見方を変えてみると「代理店」=「Agent」と「販売店」=「Distributor」は、法律的に別物です。すなわち「代理店」=「Agent」がある商品の「売主」(本人)=「Principal」の代理人であるのに対して、「販売店」=「Distributor」は、自己の名義と計算により売主から商品を買い取り、これを第三者=顧客に再販売するという違いがあります。

ちなみに、(日本の)法律用語辞典で、「代理」を見てみると、「AがBのためにCとの間で意思表示をし、又は、意思表示を受けることによって、その法律効果がBに直接帰属する制度のことで、Aを代理人、Bを本人、Cを第三者という(民法99条)」

そのため、例えば、販売店契約には、以下に作成した例文のような内容が盛り込まれます。

Distributor shall purchase the Products from the Principal and the Principal shall sell the Products to Distributor for resale in the Market, solely at Distributor’s risk and for Distributor’s own account based on the terms of this Agreement.

(「販売業者」は、「本人」から「製品」を購入し、また、本人は、「販売業者」の単独の危険負担により、および本契約の条件に基づく「販売業者」の自己勘定(取引)のために、「市場」での再販売のために「販売業者」に「製品」を販売する)

一般には、販売店契約と代理店契約を「販売代理店契約」と総称する場合がありますが、以上のように法的には、販売店契約と代理店契約に区別されています。

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

英文契約書の書き方(日経文庫)