英文契約書における文頭の否定 (その2)

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1.  英文契約書における文頭の否定

以前「英文契約書における文頭の否定」という題のブログを掲載しました。英文契約書の中には普通の文書には見られないNonという接頭語が始まる言葉が多々見られます。前回の内容からの引用ですが、例えば、「In no event shall~」に導かれるその後の文章部分は、[~でない]の意味になります。例:In no event shall someone be liable for ……………(いかなる場合も(人は)…………に関して責めを負わない。)

「In no event shall」のほかにも、文章の文頭に否定を意味する語句が置かれると、その語句に導かれる文章の内容は、否定文になります(これらの用語が文頭に置かれると、通常、その後に続く文章は、通常肯定文となります)。以前にも指摘したことですが、これは英文契約書に限らず、英文において一般的に見られることです。今回も契約書翻訳の観点から見てゆきます。

2. 文頭の否定とは

例えば、口語英語でも、「No xxx, No life」と言うように、XXXがないと生きていけないなどの表現もあります。絶対、何か欲しいとき、何かしてほしいときなどに使用します。

例えば、音楽好きなら、「No music, No life.」 お菓子が好きなら、「No cookies, No life.」、「No chocolates, No life.」

ところが、この表現(文章(または言葉)の先頭に否定を意味する語句を使う)を、苦手とする方が多いようです。ただし英文契約書の場合、契約上、例えば「あれをしてはいけない」、「これをしてはいけない」との意味で、契約の当事者、相手方、関係者に対してなんらかの規制をかける場合、良く使われます。

3. 文頭の否定と普通の否定文

そこで今回は、「文頭に否定を意味する語句が置かれ、その文章の内容を否定文にする」形式をいわゆる「普通の否定文の形にしてみたら」という観点から、以前ブログ「英文契約書における文頭の否定」で作成した用例のいつくかをいわゆる「普通の否定文の形」してました。

なを、以下に記載してある文章は、あくまで一例であり、この他にも多様で優れた表現があります。

NonやNoで始まるもの 通常の否定文にした場合
In no event shall ABC Corporation be liable for any damages caused by or in relation to this Service. In any events, ABC Corporation shall not be liable for any damages caused by or in relation to this Service.

 

(いかなる場合も、ABC Corporationは、「サービス」に起因する、または関連する損害賠償に対して責任を負わない。)
Neither we nor you will be prevented from disclosing the confidential information; Both we and you will not be prevented from disclosing the confidential information;
(当社と貴社のいずれも、以下の機密情報の開示を妨げられない。)
No party shall be responsible for ~ Any party shall not be responsible for

 

(いかなる当事者も~に責任を負わない)
None of the parties may assign or transfer any of its or their rights or obligations under this Agreement. Any of both parties may not assign or transfer any of its or their rights or obligations under this Agreement.
(いずれの当事者も、本契約に基づく当事者、もしくは各当事者の権利と義務を、譲渡または移転することはできない。)

以前にも、書いたことがありますが、例えば、チケットの変更ができない場合「チケットの変更はできない「We can make no changes~」の様に、言い切ってしまうといささか相手に対して強い調子になり、これを「No changes can be made to the tickets.」とすると一見事務的ですが、「チケットの変更はできないことになっています」事実関係を述べているだけで、「決まりですので、ご了承の程、お願いします。」というニュアンスがあります(納得しないこともあるかもしれませんが)。

なを、以下は、英文契約書で最近見かけた単語の前に「Non」が付いた用語です。訳語を載せてありますが、参考までで、同じ単語でも別の訳語もあり、翻訳者により他の訳語を使う場合も多々あります。

4. 「Non」が付いた用語の例(一部です)

例文 訳語 使用例 訳語
Non-affiliated 系列外の、非加入の nonaffiliated company

cf. affiliated company

Associated company

Subsidiary company

系列外の会社

関係会社/系列会社

関連会社

子会社

non-approved 非承認の、非認定の、未承認の Non-approved use of the Mark マークの認可適用外の使用
non-audit 監査外の non-audit services 監査外業務
Non-disclosure 非開示の Non-disclosure of Confidential Information 機密情報の非開示
Non-commercial 非商業的な only use the Software for your private, non-commercial use. 貴方個人の、非商業的な使用のみのために、本ソフトウェアを使用する
Non-confidential 非機密の It was in its possession on a non-confidential basis before receipt from the other 相手方から受領する前に、非機密として所有していたもの
Non-Conforming 不適格な、

準拠していない

Non-Conforming Products 不適格な製品/不良品
Non-disclosure 非開示の Mutual Non-Disclosure Agreement

Divulgation of the Non-Disclosure Agreement

相互非開示契約

 

非開示契約の漏洩

Non-life insurance 非生命保険/傷害保険/損害保険 Overview of the Non-Life Insurance Business in xxx Xxxにおける傷害保険業界の概説
Non-returnable 返却できない

 

Products are non-returnable except as provided in this Section 9 本製品は、本第9条に規定される場合を除き、返却することができない。
Non-refundable 返金できない

この場合は金銭のみに関する言及

Except as otherwise provided in this Article, all fees are non-refundable. 本条においてその他特段の定めのある場合を除き、すべての料金は、返金できないものとする。
Non-refundable 返金できない

この場合は金銭のみに関する言及

Except as otherwise provided in this Article, all fees are non-refundable. 本条においてその他特段の定めのある場合を除き、すべての料金は、返金できないものとする。

この他にも、Nonbinding(拘束力のない)Noncommittal(言質を与えない)

Noncompliance ((法律、規則などに)準拠しない)、不履行)

Nonconfidence(不信任)Nonconformance(従わないこと、順応(適合)しないこと)Nonconforming(従わない、順奉しない)、Non-Use-Obligations(不使用の義務)

このほかにも、多々あります。

自分で否定内容の文章を起草する場合、なれないうちは、文頭に否定の形式ではなく、いわゆる「普通の否定文」を使うのが良いかと思われます。これも以前書いたことがありますが、ネイティブが書いたドラフティングで、文頭に否定の形式があるのに、後に続く文章を否定文で書いてあるのを見かけたことがあります。おそらくドラフティングの途中で直し忘れたのではないかと思われます。

参考図書:

英和大辞典(研究社)

法律英単語 (自由国民社)

Oxford Dictionary of English他

 

 

 

英文契約書の用語:再びForce Majeure(不可抗力)について

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1. Force Majeure(不可抗力)とは

以前、英文契約書において「不可抗力」と訳される「Force Majeure(フォースマジュール)」について掲載したことがあります(英文契約書の用語、構文(その9)「Force Majeure)。この「不可抗力」とは、一般的に戦争、暴動、ストライキ等に代表される「人的災害」と政府機関の命令等、および地震、台風、洪水、水害、竜巻、疫病等の「自然災害」など、当事者に責任のない(当事者の管理に帰せられない、当事者の支配の範囲を超えた)事象により、契約の履行ができなくなった場合です。広範囲で不可抗力の内容を列挙するのが慣例ですが、「不可抗力」とは認められない範囲を別途規定する場合もあります。

2. Force Majeure(不可抗力)における免責

「不可抗力」に関する条項では、一般的には上記の不可抗力の発生原因(不可抗力事由)を列記し(定義し)、そのうえで、相手方への通知義務、、不可抗力により生じた「不履行」、「履行遅延」に対する責任についての事柄(不可抗力の影響を受けた当事者に対する免責の範囲、免責方法等)、不可抗力の影響を受けた当事者がその影響を軽減する努力を行うことおよび「不可抗力が長期にわたり継続した場合」、「長期にわたり継続した場合の契約解除(解除に要する期間を規定)」等についての対応等が記載されています。その内容は、個別の契約により異なります。一般には、「不可抗力」が発生しても支払い債務は免除されないため、その点についても規定されます。

3. Force Majeure(不可抗力)の例文

以前作成した例文を元に、簡単なものですが不可抗力の条項について例文を作成してみました。

「Force Majeure means any event caused by occurrences beyond a party’s reasonable control, including, but not limited to, acts of God, fire or flood, earthquake, war, terrorism, labor dispute, pandemic, system malfunction, governmental regulations, policies or actions enacted or taken subsequent to execution of this Agreement, or any labor, telecommunications or other utility shortage, outage or curtailment.」

(不可抗力とは、天災、火災もしくは洪水、地震、戦争、テロ、労働争議、世界的流行病(パンデミック)、システムの機能不良、本契約の締結後に制定された、もしくは講じられた政府の規制、方針もしくは法的措置、または労働、通信もしくは他のガス電気水道等の公共事業の供給不足、供給停止もしくは供給の削減を含み、これらに限定されない、当事者の合理的な管理能力を超えて発生した事象を意味する。)

「Neither Party hereto shall be liable to the other party for failure to perform its obligations hereunder due to Force Majeure.」

(本契約のいずれの当事者も、不可抗力により、本契約に基づくその義務の不履行に対して、相手方に責任を負わせることはないものとする。)

「If the Force Majeure condition continues for 90 days or more, either party may terminate this agreement upon written notice to the other party」(不可抗力の状態が90日以上継続する場合、いずれの当事者も相手方に対する書面の通知により、本契約を解除することができる。)

「Raw material or labor shortages shall not be considered as force majeure events.」(原材料または労働力不足は、不可抗力事由としない。)

The provisions of this Article shall not waive the payment obligations that will become due hereunder(本条の規定は、本契約に基づき支払期日が到来する支払債務を免除しない。)

英文契約書に不可抗力条項がない場合は、当事者間の話し合いによる解決のほか、ウィーン売買条約(日本では2009年8月発効)の適用が可能性としてあります(同条約の「損害賠償」、「免責」および「解除の効果」等-同条約の規定では、契約の不履行が不可抗力によることが証明できれば免責を受けられます。)。ただし、相手方の国が同条約に未加入または契約に同条約を適用していない場合、別途準拠法を定めている場合は、同条約は適用されません。

なを、以前、「delay」(遅延、遅滞)について書いたことがあります(英文契約書の用語(単語編)No.21)。不可抗力事象が生じた場合の履行遅延にも関係します。

これまでのブログは、契約書翻訳という観点から覚えておくべき単語・用語等についての意味合いで書いてきました。以前、「不可抗力の条項」について書いたのは、東日本大震災からしばらく後でした(その時は、いずれ発生が確実視されている地震災害(東南海、南海トラフ、首都直下型など)や台風等の気象災害を懸念しましたが)。「不可抗力に関する条項」についても、本来は覚えておくべき単語・用語という観点から書いたものでした。今回の「コロナウィルス」による世界的混乱は、改めて英文契約書における不可抗力の条項の存在意義を認識している次第です。このブログを書き終わろとしたとき、WHOから当該ウイルスにいての「パンデミック」宣言がなされました。現在のような状況(不可抗力を実際に適用するような事態)は、一日でも早く終息してほしいものです。

参考図書

  • 法律用語辞典 有斐閣
  • 英和中辞典 研究社
  • コンパクト六法 岩波書店
  • Oxford Dictionary of English
  • 法律英単語 自由国民社他

英文契約書の用語(単語編)再びCreditについて

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再び「Credit」について

英文契約書の翻訳において経験上、よく目にしたり、よく使われたり、または知っておいて損はないと思われる単語と用語について、契約書翻訳の観点から見てきました。

その中で、単語「Credit」については、英文契約書でも意外と重要な記述のある部分で使用されることもある他、日常生活でもそれなりに使用されています。

当ブログでも

など、折に触れてとりあげてきました。

1 様々な意味を持つ「Credit」

以前も書いたことがありますが、「Credit」については、英文契約書の翻訳の観点からは、例えば、credit(債権、信用、信用貸し、貸方)、credit to the capital(資本への組入れ)、credit $ to(ドルを~の口座に入金する)等、主に「債権」、「債務」の問題としてとらえることが一般的です。この前提に立った場合でも、英文契約書で単語「Credit」遭遇すると、文脈上の理解があるにしても、その「Credit」が実際に何を表したいのか、正確なところを把握するためにその箇所で一旦立ち止まって考えることがあります。その理由の1つとして、契約書に書かれている「Credit」が、「債権」、「債務」を直接に表していない、またはこれにかかわっていないこともあるからです。

「Credit」について改めて辞書を見ると、上記の契約上の「債権」、「債務」の意味のほかに、名詞では「信用、名声、評判、名誉、賞賛、預金額」、動詞では、「~を信じる、功績を認める、~の名義・所有で」等の意味があります。(ここに記載した以外にも多様な意味を持ちます。)

例えば、a man of credit = 評判の良い人、I have credit of $100,000 at his bank = 銀行に10万ドルの預金がある。they could not credit his story = 皆、彼の話は信用できなかった。He is credited as a genius painter = 彼は絵の天才であると信じられている。He is credited with contribution to society = 彼は社会への貢献が認められた。もちろん「Credit」を使わなくても「彼は絵の天才であると信じられている。」= He is recognized for his contribution to society.などとすることができます。

2 債権・債務に関する意味

ついでにお金に関することがらでは、例えば、「お金を入金する」という意味で、The bank credits him with \1,000,000. = 銀行は彼に1,000,000円を入金した(銀行は彼に1,000,000円を貸した)となります。この例だと、辞書には、「信用する、〈ある金額を〉〔人の〕貸し方に記入する(to)」等と記載されていますが、慣れないとピンとこないことが多い様です。「債権」、「債務」といっても、例えば、分かりやすく「お金」でいえば、お金を貸した側からみれば、債券、借りた側からみれば債務となります。

3 感覚的な理解も必要

いずれにしても「Credit」については、慣れないととらえどころがないようにも思えます。以前書いた「ネコとCreditについての話」で「Cats are not given enough credit.」という一文について、「ネコは、十分に認められていない」=「ネコは、正当な評価を受けていない」と解釈しました。(詳しくは「ネコとCreditについての話」)。

今回、またまた、ツイッターのフォロワーさんからの投稿で、2匹の犬が1本の棒を仲良く口にくわえている写真が掲載されたツィートがありました。このキャプションは「Two friends sharing equal credit for capturing a stick」というものでした。この写真を掲載した経緯の説明はありませんが、ここにおける「Credit」(名詞)は「名声、評判、名誉」の意味で使われています。

写真では見えませんが「しっぽ、フリフリ」で自慢げにご主人様に獲物の枝を見せて、ご主人様の「オー、良し良し」という賞賛の声が聞こえてくるようです。

「二人は友達だから、獲物を取ったお手柄(名誉)も半分ずつに同じように分け合います。」のように訳せるのではないでしょうか。このあたり、「Credit」を感覚的に理解していないと、この場合の「Credit」の意味をとらえるのは難しいかもれません。そのようなことから、1つの単語について多くの文例に接して理解を深めること(「Credit」を例にとれば文脈や状況・その背景にあるもの(時として画像・音声等から、)からそこで使われているその意味を感覚的に把握すること)が必要かもしれません。

(この画像は本文とは関係ありません。)

参考図書

  • 英和大辞典(研究社)BUSINESS ENGLISH  (BARRON’S)The New Oxford Dictionary of English(Oxford Unfiversity Press)
英文契約書の用語と構文 (その23) 「正当」「適切」等について

英文契約書の用語 単語編 (No. 34)

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契約書翻訳の観点から、経験上、よく目にしたり、よく使われたり、または知っておいて損はないと思われる英文契約書でよく使われる単語と用語を取り上げています。今回は、当事者間の権利義務の関係を規定する契約書で使用される権利と義務に関する用語の1つ「entitle」です。「~の権利[資格]を与える」、「権利[資格]を与える」等の意味があります。

entitle」は、通常、以下のように使われます。

  1. 「~に…の権利[資格]を与える」

The new policy entitles the employees to 20 days of annual leave per year regardless of his or her service years.
(新しいポリシーは、従業員が勤続年数に関係なく年に20日の年次休暇を取得する権利を与える。)

This Agreement shall entitle Seller to an equitable adjustment in the price and any time of performance.
(本契約は、売主に価格および履行期間に関する適正な調整の権利を与える)

  1. 「~に…する権利[資格]を与える」

The person who passes this test is entitled to participate in the advanced program.
(このテストに合格した人は、上級プログラムに参加する資格があります(参加する権利が与えられる)。)

All employees are entitled to receive all company benefits.
(全授業員は会社のすべての福利厚生を受ける資格がある(権利を与えられている)。)

The buyer shall be entitled to transfer any rights deriving from this Agreement.
(買主は、本契約から得られた権利を譲渡する権利が与えられている。)

その他に、「entitle」には、「表題を付ける」等の意味もあります。

「~の権利[資格]を与える」、「権利[資格]を与える」等の意味では、「entitle」のほかにも「grant right to」、「give a right to」等、さまざまの用語があります。なを、「権限を与える」の意味では、いくつかの例として「empower」、「authorize」、「give an authority」、「grant a power」等があります。

これらについても、機会を改めて説明します。

参考図書

  • ビジネス法律英語辞典 (日経文庫)
  • 英和大辞典(研究社)他

英文契約書の用語(単語編)(No.33)

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英文契約書翻訳に携わる中で、経験上、よく目にしたり、よく使われたり、または知っておいて損はないと思われる単語と用語について、契約書翻訳の観点から簡単な例文を作成してその用例(一部ですが)を見てみます。

今回は、「dividend」と「due」について見てみます。

1. dividendについて

契約書の用語というより、ビジネス、証券、金融、会計、その他株主総会議事録、取締役会議事録、会社定款等の多くの分野で一般的に使用されています。この場合、多くは「(株式・保険金)の配当・利益配当」の意味として使われます。他の単語との組み合わせで各種の配当の種類・様態を表します。

:reserved dividend(積立配当)、unpaid dividend(未払配当)、interim dividend(中間配当)、dividend increase(増配)、dividend decrease(減配)、ex dividend(配当落ち)dividend payer(有配株)、non-dividend payer(無配株)等。いずれにしても、知っておくべき用語の1つです。なを、「利益の配当」の意味では、dividendのほか、distribution of profits、profit sharing、profit participation等もあります。

We may pay interim dividend for shareholders recorded in register of shareholders as of September 30 in every year based on the resolution of the board of directors.

(取締役会の決議に基づき毎年9月30日現在の株主名簿等に記載された株主に中間配当を行うことができる。)

The company determines to pass dividend for this term. (会社は、今期の配当見送りを決定)

上記のように2例ほど例文を作成しましたが、いずれにしても「株式の配当」の意味では、多くの場合、「dividend」が使用されます。

2. dueについて

満期の、支払期限の来た、(~に)当然支払されるべき、(~に)期すべき、正当な等の意味で使用されます。他の語と組み合わされ、due act(相当の行為)、due care(相当な注意)、due date(支払期日、満期日)、due care(相当な注意)、due diligence(相当な注意)、

due process(適正なプロセス)、due reason(適正な理由)等の意味で使用されます。例えば、

If the Lessee does not pay the rent in the due date, the unpaid outstanding amount will be subject to an overdue interest of one (1) percent per month.

(賃借人が新借料を期日に支払わない場合、未払い残高に対して1カ月につき1%の延滞利息が課せられる。)

The Contractor shall at all times exercise due care in the performance of its obligations under this Agreement:

(請負人は、本契約にもとづくその義務の履行において、常に、以下に関して相当な注意を払う。)

英文契約書に出てくる単語として、知っておくべき単語の1つです。

参考図書:

  • 英和大辞典(研究社)
  • コンパクト六法(岩波書店)
  • Trend(小学館)
  • Oxford Dictionary of English

英文契約書の用語(単語編)di-di(No.32)

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英文契約書翻訳に携わる中で、経験上、よく目にしたり、よく使われたり、または知っておいて損はないと思われる単語と用語について、契約書翻訳の観点から簡単な例文を作成してその用例(一部ですが)を見てみます。。今回は、「dissolution」、「dissolve」、「distraint」「distribution」について見てみます。

1. dissolutionについて

契約書の用語として用いられる場合、(組織などの)解散の意味で使用される例が多く見受けられます。

以下の例は契約書でありませんが、こんな感じです。

  1. The dissolution and liquidation of a juridical person shall be subject to the supervision of the court.

(1 法人の解散及び清算は、裁判所の監督に属する。)民法

なを「dissolution」の隣にある「liquidation」も、契約書における必須単語の1つです。契約書で用いられる場合、そのほとんどが(組織などの)清算、整理の意味で使用されます。単語の意味から推測されるように、契約書でこられの単語が使用される箇所は、例えば、契約解除の条件を規定する条項です。

例えば、「契約を解除する場合」として、「If either party commences its dissolution or liquidation…(いずれかの当事者が解散または清算を開始した場合)などのように記載されます。これは作成した例文なので、実際には、様々な形式で記載されます。「liquidation」については、別途とりあげてみたいと思います。

2. dissolveについて

良く見受けられるのは動詞として(組織などを)「解散する」の意味で使用されます。

A dissolved juridical person is deemed to still continue to exist to the extent of the purpose of the liquidation until the conclusion of such liquidation. (解散した法人は、清算の目的の範囲内において、その清算が終了するまでは、なお存続するものとみなす。)

3. distraintについて

「動産差し押さえ」の意味で使用されます。覚えておくべき用語です。

4. distributionについて

配布、頒布、物の流通、分配、配信等の意味があります。また、他の語と組み合わされて、例えば、distribution of profits (利益の配当)、distribution of property (財産分与)、distributorship agreement (販売店契約)のようにも用いられます。

以下に簡単な例文を作成してみました。

Our core business is the distribution of mobile contents. (当社の主たる事業は、モバイルコンテンツの配信です)

Licensee shall provide manufacturing, marketing and distribution facilities for the Products. (ライセンシーは、製品の製作、販売および流通のための施設を提供する)

「distribution」は、契約書にかぎらず日常的に使用される用語です。それだけに契約書で使用される場合の意味については、文脈、前後関係から適格に把握する必要があります。

参考図書:

  • 英和大辞典(研究社)
  • コンパクト六法(岩波書店)
  • Oxford Dictionary of English

英文契約書の用語(単語編)di-di(No.31)

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英文契約書翻訳に携わる中で、経験上、よく目にしたり、よく使われたり、または知っておいて損はないと思われる単語と用語について、契約書翻訳の観点から簡単な例文を作成してその用例(一部ですが)を見てみます。。今回は、「dismissal」、「disposition」、「dispute」について簡単に見てみます。

1.  dismissalについて

前回とりあげた「dismiss」の名詞形です。「dismiss」と同じように解散、退去、免職、解雇、解任、(訴訟の)却下、(上訴の)棄却等の意味がありますが、前後の文脈から意味を確定します。

The Company is liable for the compensation for dismissal of its employee if his or her employment agreements are terminated due to the circumstances of the Company.

(会社は、会社の都合により、その従業員の雇用契約が解除された場合、その解雇に対する補償の責任を負う。)

(4) The provisions of the preceding paragraph shall apply mutatis mutandis to the dismissal of Accounting Advisors at Incorporation, Auditors at Incorporation and Accounting Auditors at Incorporation.

(前項の規定は、設立時会計参与、設立時監査役及び設立時会計監査人の解任について準用する。)会社法

The term “prevailing party” includes a defendant who has by motion, judgment, verdict or dismissal by the court, successfully defended against any claim that has been asserted against it.

(文言「勝訴当事者」は、裁判所の命令、判決、評決または却下により、「勝訴当事者」に対する申し立て対する抗弁に成功した被告人を含む。)

その他、契約書で「dismissal 」と使用する用語には、dismissal of an appeal(上訴の棄却)、dismissal of claim(請求の棄却)、dismissal of prosecution(公訴棄却)等があります。

2. dispositionについて

Upon termination or cancellation of this Agreement, the Seller shall make disposition the Confidential Information obtained from the Buyer. (本契約の終了または解除時に、売主は買主から得た機密情報を処分する)

3. disputeについて

「dispute」は、紛争、係争を表す単語として、大体、契約書の後半(準拠法(applicable law, governing law)、仲裁(arbitration)、紛争解決(dispute resolution/settlement of dispute)等の条文として)に登場します。多くの場合、以下に作成した例文のように使用されます。

The Parties shall use their best efforts, in good faith, to amicably settle any dispute arising out of or in connection with the interpretation, execution and performance of this Agreement.

(両当事者は、最良の努力を行い、誠実に、本契約の解釈、遂行と履行から生じる、または、関連する係争を友好的に解決する)

If the Parties are unable to resolve their dispute through bona fide negotiations, all disputes, controversies or claims arising out of this Agreement shall be finally settled by arbitration in accordance with the commercial arbitration rules of the Japan Commercial Arbitration Association in Tokyo under laws of Japan.

(両当事者が、誠実な交渉による係争の解決をなし得ない場合、本契約から生ずるすべての係争、論争もしくは申し立ては、日本商事仲裁協会の商事仲裁規則に従い、日本法の下で、東京において仲裁により最終的に解決されるものとする。)

This Agreement shall be governed by the laws of Japan and any dispute in relation to this Agreement shall be brought in the Tokyo District Court as the exclusive competent court for the first trial.

(本契約は日本法に準拠し、本契約に関する紛争の第一審の専属管轄裁判所は、東京地方裁判所とする。)特にこの形式は、いわば定型文(すべてがこの形式のそのままではありませんが)に近いものです。覚えておいて損はないと思います。

参考図書:

  • 英和大辞典(研究社)
  • コンパクト六法(岩波書店)
  • Oxford Dictionary of English

英文契約書のブログについてのあれこれ(その3)

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契約書翻訳 のINGSでは、以前からホームページのブログで、英文契約書を理解するうえで即戦力として役立つノウハウをお届けしています。いずれもその内容に即したわかりやすい例文を作成し、これを、英文契約書に対する理解を深める一助になればと考えております。そこでアクセスされる皆様がどのようなトピックに興味をお持ちか本年3月から5月までのアクセス数の多かった順を見てみると以下のような結果になりました。

  1. 英文契約書の用語、構文 (その22)(別紙/付属文書について)
  2. 英文契約書の用語、構文(その14) 「条、項について」
  3. 英文契約書の用語、構文「thereof, thereafter, therein, thereto等
  4. 英文契約書における「and/or」
  5. 英文契約書の用語、構文 (その18)「in witness」、「whereas」、「now, therefore」、「Recitals」

1位から3位までは、以前と変わらぬ順位です。また、5位に関しても、いわゆる#英文契約書 の用語、構文では、日常ではあまり目にすることがない英語の中でも基本的な用語に関するものでした。なを、4位の「英文契約書における「and/or」については、以前、「and/or」の訳出の仕方について気になった点を簡単にまとめた内容ですが、かなり読まれるようで、Google検索では、弊社ホームページより上位に掲載されることがあり、やはり「and/or」に関心をお持ちの方が多いのではとの感触を得ました。

これらの結果を参考に、今後とも、理論に走りすぎず、実践で役立つような内容を掲載してまいります。

英文契約書の用語(単語編)di-di(No.30)

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英文契約書翻訳に携わる中で、経験上、よく目にしたり、よく使われたり、または知っておいて損はないと思われる単語と用語について、契約書翻訳の観点からとりあげています。今回は、「discretion」、「dishonor」、「dismiss」、「dissolve」、「dissolution」について、簡単な例文を作成してその用例(一部ですが)を見てみます。

1 「discretion」について

英文契約書で使用される「discretion」の主な意味は、「裁量」、「決定権」。前回取り上げた「disclose」と「disclosure」と同様に見た通りの意味ですが、定型句のように使用されるため取り上げてみました。

The Customer acknowledges and agrees that the Supplier may, at its sole and absolute discretion, delete any Products from the Product list.

(顧客は、サプライヤーが、その単独かつ絶対的裁量により、製品リストから「製品」を削除することを承認し、これに同意する。)

The Company, in its sole discretion, may decide to terminate this Agreement without any liability whatsoever.

(会社は、その単独の裁量で、いかなる責任もなしに、本契約の解除を決定することができる)

2. 「dishonor」について

英文契約書で使用される場合の「dishonor」の主な意味は、通常は「(手形・小切手の)不渡り」です。もちろん他の意味で使用されることもあります。

The parties hereto may terminate this Agreement if (i) a draft or check is dishonored or fallen insolvent.

(本契約の当事者者は、(i) 為替手形もしくは小切手が不渡りになる、または支払い不能となった場合、本契約を解除することができる)

dishonored bill (不渡り手形)の意味になります。いずれにしても、契約解除の要件の記述に多く見受けられます。

3.「dismiss」について

英文契約書(または他の法律文書)で使用される場合の「dismiss」の主な意味は、「解散させる」、「解雇する」、「免責する」、「却下する」、「棄却する」等です。

XXX shall have the right to bring an action against YYY if the action is not so dismissed or if the parties hereto do not arrive at a mutually agreeable resolution

(当該訴訟がしかるべく取り下げられない場合、または両当事者が相互に満足する解決に至らない場合、XXXは、YYYに対して訴訟を提起する権利を有する。)

If there is any important reason for doing so, the court may dismiss a liquidator at the request of any interested person or a public prosecutor, or by exercising its authority.

(重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を解任することができる。)民法

Participation in a bankruptcy procedures, participation in a rehabilitation procedures, or participation in a reorganization procedures shall not have the effect of interruption of the prescription when the obligee withdraws its filing, or its filing has been dismissed.)

(破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加は、債権者がその届出を取り下げ、又はその届出が却下されたときは、時効の中断の効力を生じない。)民法

上記のほかにもいろいろな形態で使用される場合があります。なを、「dismiss」には、「解散させる」の意味がありますが、例えば、単に会社を解散する場合は、「dissolve」を使用して、The company resolves abolishment, change or dissolution of business(会社は、営業の廃止もしくは変更または解散の決議をする)とする場合が多いようです。また、同じく解散するという意味では、「dissolution」を使い、例えば、Residual assets in case of dissolution of this Company shall be distributed according to the amount of contribution already paid.(本会社が解散した場合の残余財産は、払込済出資額に応じて分配するものとする。)等と記述する場合も多く見受けられます。

いずれにしても「dismiss」の前後の文脈からその意味を確定する必要があります。

参考図書

  • 法律用語辞典(有斐閣)
  • 英和大辞典(研究社)

契約書翻訳

英文契約書の用語(単語編)di-di(No.29)

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英文契約書において経験上、よく目にしたり、よく使われたり、または知っておいて損はないと思われる単語と用語について、契約書翻訳の観点から簡単な例文を作成してその用例(一部ですが)を見てみます。今回は、disclose(開示する)、disclosure (開示・公開)です。「disclose」と「disclosure」ともに見た通りの意味です。とりあえず幾つかの例文を作成してみます。

Each party shall undertake not to use or disclose to the other party’s Confidential Information without a written approval of the other party and shall only use such Confidential Information for the purposes of this Agreement.(各当事者は、相手方の書面による承認なしに相手方の機密情報を使用または開示しないことを約束し、本契約の目的のためにのみに当該機密情報を使用する)

Recipient shall maintain in confidence all information obtained in the course of business and shall not publish or otherwise disclose such information to third party provided, however, that……………..(受領者は、事業の過程で得られたすべての情報を秘密として保持し、当該情報を第三者に公表または開示してはならない。ただし、…………..)

disclose(開示する)、disclosure (開示・公開)に関連した用語として、disclosee(被開示者)、discloser(開示者)などの用語も登場しますが、経験的には、一例ですが、情報を開示する側-開示者、情報を受け取る側-受領者として、それぞれ「Disclosing Party」、「Receiving Party」の用語を使用しているものもあります。このあたりについては、以前、「Receiving Party」と「Disclosing Party」あるいは「Receiving Person」、「Disclosing Person」で述べたことがあります。

その時に作成した例文を以下に記載します。

The Confidential Information does not include the information that:

(i) is already known to the Receiving Party at the time of disclosure;

(ii) becomes, at a later date, known to the Receiving Party without a fault of the Receiving Party; or

(iii) is acquired by Receiving Party without violation of the confidentiality.

すでに述べたようにdisclose(開示する)、disclosure (開示・公開)は、それ自体特段の用法があるものではありませんが、情報の機密保持に関係する記述等に頻繁に登場するとい観点から取り上げてみました。

参考図書

英和大辞典(研究社)、ビジネス法律英語辞典 (日経文庫)