Creditとネコの話とCreditと犬の話ほか。

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単語Creditは様々な意味と使われ方がなされます。これまで主に契約書翻訳の観点から見たCreditの使われ方を中心に何回か取り上げました。最近、いままで掲載した内容以外でも興味のある使われ方を目にする機会がありました。そこで改めて、以前の投稿から「creditとネコの話」と「creditと犬の話」をメインに単語creditについてまとめてみました。

1. 生活のさまざまの場面で使われるCredit:Creditの感覚的理解は大事なことだと思います。

単語Creditは、「クレジット」として日本語化していますが、英語としてみた場合、さまざまな意味がりあります。ネイティブは、生活のいろいろな場面で単語creditを使います。辞書を引くと多くの意味がかいてありますが、「Credit」の感覚的理解の一助ということで、以前にとりあげた「Creditとネコの話」と「Creditと犬の話」から入ってみます。*これらの意味については後述。 以下は、いずれも*ツイッター(個人的アカウント)上のやり取りの中で体験した内容です。

a. 「creditとネコの話」:「Credit」という単語についてツイッター上のやり取りの中での体験から

経緯としては、「ネコがワニにパンチをし、ワニが逃げ出す動画」が面白かったので、リツィートしたところ、米国人のフォロワーさんからコメントが送られてきました。内容は、「なんて勇敢なネコだろう!!ネコは素晴らしい!!ネコが大好きです」と綴られ、その後に、「Cats aren’t given enough credit.」という一文がありました。直訳すれば「ネコは、十分に認められていない」、「ネコは、十分な信用を与えられていない」等になりますが、文脈的(書いた方の心情)に「ネコは、正当な評価を受けていない」とでも言うのでしょうか。辞書を見ると、たしかに「信用、名声、評判」もあります。

話は「ネコ」にもどり、コメントを頂いた方の意見に同意する旨の返事を送りました。ただし、コメントを送ってきた方が、このやり取りをツイッターのタイムラインに投稿したため、別の方からもコメントが送られてきました。
内容は、It’s true they aren’t given enough credit, から始まる内容で、「ネコが正当な評価を受けていないことは事実であるが、ネコは、鳥を殺すので、ネコに鈴を付けろ、云々」という内容でした(ネコに鳥を殺された経験がある人のようです)。ここでも、「Credit」という単語を使っています。ネイティブの方は日常会話の中でCreditを普通に使います。

b. 「creditと犬の話」:「Credit」という単語についてツイッター上のやり取りの中での体験から

ツイッターのフォロワーさんからの投稿で、2匹の犬が1本の棒を仲良く口にくわえている写真が掲載されたツィートがありました。このキャプションは「Two friends sharing equal credit for capturing a stick」というものでした。この写真を掲載した経緯の説明はありませんが、ここにおける「Credit」(名詞)は「名声、評判、名誉」の意味で使われています。
写真では見えませんが「しっぽ、フリフリ」で自慢げにご主人様に獲物の枝を見せて、ご主人様の「オー、よしよし」という賞賛の声が聞こえてくるようです。
「二人は友達だから、獲物を取ったお手柄(名誉)も半分ずつに同じように分け合います。」のように訳せるのではないでしょうか。このあたり、「Credit」を感覚的に理解していないと、文の意味をとらえるのは難しいかもれません。

c. Creditによる著作権の帰属についての表現
これもツイッターを例にとったはなしですが、例えば、ツイートした画像の著作権を明示する場合、Creditを使い、All pictures are credited to their respective owners.と書いてあることがあることあります。(辞書を見ると「credit to」は多くの場合、「貸し方に記入する」となっていますが、この場合、「自分のTwitterのサイトに載せているすべての写真の権利は、それぞれの所有者にあります。」とすれば分かりやすいのでは。もちろんこの件については、Creditを使わないさまざまな書き方があります。例えば、All photos belong to individual owner.等

*ここに出てくるツイッターの内容は、「筆者個人のTwitterアカウント」からのものです。ここにとりあげた以外にもさまざまな「Credit」の使い方に出会います。個人的に「Credit」を感覚的に理解するのに助かります。

2. 「Credit」についての英語独特の概念-例えば、A(債権者)とB(債務者)双方の立場を表すのに「Credit」が使われることがあります。

例えば、AがBにお金を貸した場合や商品を売った場合、Aからすると貸したお金や販売代金は、「債権」となり、お金を借りたり、商品を買ったりしたBからすると借りたお金や商品を買った代金は、「債務」となりますが、「Credit」を使って表現する場合、A(債権者)の立場では、「my credit to B」、一方、B(債務者)の立場では、「my credit from A」となります。日本語の感覚からすると債務者B立場からは「my debt」としてもよさそうなものですが、多くは、双方の立場を表すのに「Credit」が使われます。
なお、英文契約書では以下の様表現もあります。
The Buyer shall credit the payment for goods to the Seller’s account by due date.(買主は、支払い期日までに商品代金を売主の銀行口座に入金するものとします。)

3. その他
a. 最近気になったCredit:映画などで使われるCreditほか
この場合のCreditの意味としては、「出版物・演劇・放送番組などに使用された材料の提供者に口頭または紙上で表わす敬意」です。たまに手掛ける映画配給契約、コンテンツ配信契約等で良く目するのですが、上記の債権・債務を表すCreditと混在してこのCreditが出てくることもあります。その他、最近の案件では、学校の履修単位や科目のCreditがありました。

b. その他のCreditの主な意味
名詞としての意味:信用、名声、名誉、功績、信用貸し、掛け売り、支払猶予期間、預金残高、履修単位、(映画などの)クレジット表示等。

動詞としての意味:~を信用する、貸方に記入する、銀行口座に入金する、(功績などを)認める、(学生に)単位を与える、の名誉となる等。
そのほか、他の語と組み合わされて成句を作ります。例:credit inquires (信用調査)、consumer credit(消費者金融)、credit beneficiary (受益債権者)等、その他様々成句があります。

契約書翻訳という観点から、単語・用語について文法的・法律的側面を除き、知っておいて損はないすぐに使えそうな知識としての英単語・用語について書いてきましたが、「Credit」にひとつを例にとっても、ある単語を理解するには、契約書翻訳の観点からの理解だけでは不十分です。おおげさに言えば、何百年のかけて培われてきた英語圏の文化の一端にふれるわけですから。

参考図書:

トレンド(小学館)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

 

 

 

英文契約書の時制と権利・義務を規定するスタイルについて

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英文契約書の特徴の1つとして時制があります。冒頭の規定、定義条項は、基本的に現在形を使用し、契約の履行にかかわる権利・義務の規定に関して、権利を定める条項は基本的に「may」、「shall have the right」等をの助動詞を使用し、義務を定める条項は基本的に「shall」、「must」、「will」等の助動詞が使われます。なを、冒頭の規定、定義条項を除く英文契約書の全体にわたって「shall」、「must」、「will」が使われているわけでもありません。また、その書き方の特徴の1つとして、その契約に関して発生するであろう様態を列挙して(仮定して)、これらに対する当事者間の権利・義務を規定しますが、その際に、ある様態を挙げる場合、使われるのが「if」、「in the event that」、「in case where」、「in case that」、「in case of」等です。

今回は英文契約書の時制と権利・義務を規定するスタイルについて、作成した例文を通して簡単に見てみます。

1. 定義条項の例

“Business Day” shall be between the hours of 09.00 to 17.00 during any day other than a Saturday, Sunday, Japanese national holidays prescribed in the Act on National Holiday and year-end and new year holidays. (「営業日」とは、土曜日、日曜日、国民の祝日に関する法律に定める日本の祝日、年末年始除く日の午前9時から17時までとする。)

2. 権利を定める文章の例

Either party may terminate this Agreement if: (いずれの当事者も、以下の場合、本契約を解除することができる。)

The Company may assign this Agreement.(会社は、本契約を譲渡することができる)

The parties hereto shall have the right to use subcontractors in the performance of their obligations. (両当事者は、その義務の遂行において、下請業者を使う権利を有する。)

3. 義務を定める文章の例

Obligations specified in the above paragraph must be appropriately executed by the parties.

(両当事者は、前項に規定する義務を適切に履行しなければならない。)

Employee shall immediately report an occurrence of loss or damage due to power failure to his/her supervisor.(従業員は、停電による損失または損傷の発生を直ちに上司に報告するものとする。)

Licensor shall have no liability to Distributor under this Agreement for any loss or damages due to force majeure.(ライセンサーは、不可抗力による損失または損害賠償について、本契約に基づいてディストリビューターに対して責任を負わないす。)

「will」も、「将来~する」ということですが、やはり「shall」、「must」に比べると義務の履行に対する強制力が弱くなる感があるのか、一方当事者が、相手方に対して「will」で記載された部分を「shall」に変えろとの交渉を行うことを見聞していますが、やはりこの辺りは、当事者間の力関係により左右されるようです。

 

4. その他

許可、禁止等を規定する場合に「may」、「may not」、「shall not」を使う場合が多く見受けられます。

You may only use this Software for your private and non-commercial use.(本ソフトウェアは、私的および非営利目的でのみ使用できます。)

Rights or benefits arising from, or in connection with, this Agreement may not be assigned.(本契約に起因する、または関連する権利もしくは利益は、譲渡できない。)

This procedure shall not be executed by an attorney-in-fact.

(本手続きは委任状による代理人が行うことはできない)

ここにあるのは、権利・義務を規定する代表的なスタイルの一部です。ただし、ブログとしてとりあげるのは、とりあえずこの程度とします。なを、機会を設けていろいろな視点から権利・義務の規定のスタイルについて見てみたいと思います。

参考図書:

新英和大辞典(研究社)他

(イメージは、与論島)

英文契約書の単語・用語 「not only ~ but also ~」について

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1. not only ~ but also ~とは

not only A but also B(AだけではなくBも)は、多分、中学で習った構文です。口語ではこの表現はあまり使われません。基本的には、「どちらも~である」という表現ですので、話し言葉では、「AもBも~である」という様な表現になると思います。

Ted can speak English and Japanese.(テッドは英語と日本語を話すことができる)でなく、Ted can speak not only English but also Japanese.の「英語ばかりでなく日本語も話すことができる」というような、あえて回りくどい言い方をして、but also以下を強調し、「テッドは日本語も話せるんだよ。」という、最も相手に伝えたいことを文章の後ろの方に置く、いわゆる倒置の表現を使って強調しています。

 

not only A but alsoには、いろいろなバリエーションがあります。まずは、簡単な文章で確認してみましょう。

(前半部のnot onlyが省略されたり、後半部のbut (also)が省略されたりする場合があります。)

以下に作成した例文のように、基本的には、Aが名詞ならBも名詞、形容詞なら形容詞、句/節の場合なら句/節が入ります。AとBの部分には文法的に「同等・対等」なものが入ります。

例文

He is not only shy but also bashful.(彼は内気であるばかりでなく恥ずかしがりやだ。)

He keeps not only a cat, but also a dog.(彼は猫だけでなく犬も飼っている。)

That’s not only big, but also heavy.(それは大きいだけでなく重い。)

Not only you but also me can benefit from the service.(きみだけでなく私もそのサービスから利益を得られる。)

He not only arrived late but also forgot to bring his books.(彼は遅れてきただけでなく、本を持ってくるのを忘れた。)

Traveling in Tohoku is interesting not only in summer but also in winter.(東北を旅することは夏だけでなく冬も面白い。)

Workers shall, not only observe matters necessary for preventing industrial accidents, but also endeavor to cooperate in the measures pertaining to prevention of industrial accidents conducted by employers or other said parties.(労働者は、労働災害を防止するため必要な事項を守るほか、事業者その他の関係者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならない。)労働安全衛生法

2. 英文契約書での用例

not only ~ but also ~ の構文は、英文契約書でも使用されることがあります。英文契約書で用例については、以下に例文を作成しました。

Party A shall endeavor not only to avoid falling short of the standards specified by the specifications but also to further improve the level of its standards.(大学は、基準より低下した状態にならないようにすることはもとより、その水準の向上を図ることに努めなければならない。)

In the sending of the document prescribed in this Agreement, not only the original, but also a copy of the document is acceptable considering any other circumstances.(本契約に規定する文書の送付は、原本のほか、その他の事情を考慮して、文書のコピーも認めることができる。)

Employees shall, not only observe matters necessary for preventing industrial accidents, but also endeavor to cooperate in the measures pertaining to prevention of industrial accidents conducted by this company.(従業員は、労働災害を防止するため必要な事項を守るほか、本会社が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならない。)

上記の例文は、以下の様に書き換えられます。

Employees shall observe matters necessary for preventing industrial accidents and endeavor to cooperate in the measures pertaining to prevention of industrial accidents conducted by this company.

参考図書

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

研究社新英和辞典(研究社)他

(写真:ドイツ バイエルン ケーニヒス湖)

英文契約書の単語・用語 「~がない」の表現について

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日常生活でも「~がない」という表現が使われます。国語辞典を見ると「~がない」といってもさまざまな「~がない」があります。例えば、「お金がない:~を持っていない:所有してない」、「それを見たことがない:経験がない」、「彼は家にいない:不在です」、「そのような事実はない:存在しない」等、これら以外にもさまざまな意味あります。(日本語は奥が深い!)

当然ですが、「~がない」という表現を英語に置き換える場合、上記の例では、I have no money (お金がない)、I have never seen it (それを見たことがない)、He is not here.(彼はいない)等で表現されます。もちろん「~がない」=「No」を文頭や文中につけて表現することもありますが、この用例も含めて、英文契約書の中で使われる「~がない」という表現について良く目にするもの、知っておいて損がないいくつかの単語・用語・表現を*作成した例文を通して見てみます。特に「 物事が存在しない」という意味を中心に、契約書翻訳の観点から見ています。(*一部除く)

1.「No」または「None」を使用した例

None of the parties may assign or transfer any of its or their rights under this Agreement. (いずれの当事者も、本契約に基づく当事者、もしくは各当事者の権利を譲渡または移転することはできない。)

No previous agreements, arrangements or contracts shall apply to this Agreement. (いかなる以前の合意、取り決めまたは契約も本契約には適用されない)

2.「there is no」を使用した例

The Contractor shall assure that there is no impact to business operations if such interruption occurs. (請負業者は、そのような中断が発生した場合でも、事業運営に影響がないことを保証する。)

3.「be free from」を使用した例

「be free from」は、以前にも売買契約書を例にとって「英文契約書の用語、構文(その17)」で取り上げたことがあります。

The Products to be delivered hereunder shall  be free from defects and faulty materials and correspond with any sample and conform to any description, instructions, specifications, and other conditions agreed between the parties. (本契約に基づき引き渡される製品は、瑕疵がなく、材料にも欠陥がなく、サンプルと一致し、説明書、指示書、仕様書および両当事者間で合意したその他の条件に準拠する(抄訳))契約書に限らず、技術文書でも良くみられます。

The finished surface shall be free from any burr, scratch, and damage. (仕上げ面には、バリ、引っかき傷、損傷がないものとする)

4.「in the absence of」を使用した例

In the absence of a choice of law under the preceding Article, the formation and effect of a juridical act shall be governed by the law of the place with which the act is most closely connected at the time of the act. (前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。)(法令第8条

5.「not exist」を使用した例

Any obligation of the Seller of this Agreement to inspect the quality of the transferred products to third party from the Buyer does not exist. (本契約の売主には買主から第三者に譲渡された製品の品質を検査する義務はない。)

Nothing in」を使用した例

Nothing in this Agreement shall be construed to create any other relationship between the parties hereto. (本契約のいかなる内容も、「両当事者」間にいかなるその他の関係を構築することはない。)この文章は、定型文として良く目にします。

いずれも英文契約書に限らず、経験上、「~がない」の表現が必要な英文のドラフティングを行うときに覚えておくと以外に便利です。なを、「~がない」については、上記以外にさまざまな単語、用語、表現があります。それらはまた別の機会に見てみたいとおもいます。

参考図書:

大辞泉 (小学館)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)他

(写真はベトナムハロン湾)

英文契約書の単語・用語 デファクト(de facto)「事実上の」について

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英文契約書では、ラテン語やフランス語などからの用語が使用されていることがあります。

これまでにも、英文契約書の用語、構文からbona fide」、「Force Majeure」、「inter alia」、「per annum」、「pari passu 等を契約書翻訳の観点からとりあげています。今回は、このデファクト(de facto)について見てみます。

De Facto(デファクト)とは

De Facto(デファクト)とは、ラテン語由来の言葉であり、「事実上の」という意味を表しています。De Facto(デファクト)という言葉に関連して、*デファクト・スタンダード(De Facto Standard)という言葉があります。*デファクト・スタンダード(De Facto Standard)とは、ISO、DIN、JISなどの標準化機関等が定めた規格ではなく、市場における競争や広く採用された「結果として事実上標準化した基準」を指します。

デファクト・スタンダードは、一般に「事実上の標準」と翻訳されています。

De Facto(デファクト)の対義語

デファクト(de facto)の対義語(意味が反対となる語や、意味が対照的になっている語はDe jure(デジュール)です。これには「法律上の」「規則上の」という意味があります。

なを、デジュール・スタンダード(De Jure Standard)と呼ばれる規格があり、これは公的な標準化機関で合議制により認証された規格です。

De FactoとDe Jure両方の言葉を使って、その違いを見てみます。

A distinction must be made between what is found de jure and de facto.

(法律上の内容と事実を区別する必要があります。)

例:

de facto standard(デファクト・スタンダード) – 事実上の標準、

対義語は、de jure standard(デ・ジュリ・スタンダード) – 法律上の標準、規則上の標準

de facto monopoly(デ・ファクト・モノポリ) – 事実上の市場独占

de facto husband / wife(事実上の夫 / 妻) – 内縁関係の配偶者

de facto state of marriage  – 事実上の婚姻関係

The person who should be given compensation for bereaved family shall be the spouse of a worker (including the person who has de facto marital relations with him or her even without a marriage notification; hereinafter the same rule shall apply).

(遺族補償を受けるべき者は、労働者の配偶者(婚姻の届出をしなくとも事実上婚姻と同様の関係にある者を含む。以下同じ。)とする。)(労働基準法施行規則

The country was de facto divided between two states.

(その国は事実上2つの州に分かれていた。)

XXX is de facto official language in YYY.

(YYYでは、XXXが事実上の公用語です。)

XXX is de facto bankrupt.

(XXXは、事実上の破綻状態です。)

with the death of his father, he became the de facto head of the family

(父の死に伴い、彼が一家の事実上の長となった。)

デファクトという表現ではなじみがないですが、「事実上の」という表現は、日常でも多く使用されています。

平易な書き方

de factoを使わなくても、例えば、effective、practical、factualやその他の言葉を使い「事実上の」という表現を表すことができます。

例1)if either party becomes de facto company liquidation;

(いずれかの当事者が事実上の会社整理となったとき…)

上の文章は以下の様に書き換えられます。

if either party effectively becomes company liquidation;

例2)He is the de facto manager.

(彼が事実上の管理者です。)

上の文章は以下の様に書き換えられます。

He is the manager in all.  He is the virtual manager. He is the manager as a matter of practice.

参考図書:

デファクト・スタンダード」2021年5月4日 (火) 12:26『ウィキペディア日本語版』

対義語」2021年4月17日 (土) 15:32『ウィキペディア日本語版』

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

Japanese Law Translation

The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)

Merriam-Webster (Webster)

英文契約書の単語・用語  日本語の「被~」という表現について

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契約書・法律文書に限らず、一般的な文章でも「被~」という表現が使われています。何気なく使っていますが、なじみがない言葉だと、「被~」という表現を目にしたとき、「はてこの意味は・・・・」と一瞬考えてしまう経験があります。「被」という言葉の意味を国語辞典で調べてみると、色々な意味があります。今回とりあげるのは、「被」の意味のなかでも、「他人から、行為や恩恵などを受ける」、「行為を表す漢語に付いて、他から…される、他からその行為をこうむる」の意味の部分です。例えば、「被害」をいう言葉があります。意味としては、「損害や危害をこうむること」、「受けた損害や危害」とあります。当然ですが、被害を受けた人は、「被害者」です。

日本語だと「他から…される、他からその行為をこうむる」人や対象を表す場合、単純に「被」に後に行為の対象となる事柄をくわえるだけですが(「被~」を使わない場合、使う必要がない場合も多くあります。なを、契約書・法律文書では「被~」の表現が多くみられます)。英語の場合はどうでしょうか。契約書翻訳の観点から見てみます。

1. 単純に「被~」と英訳できない

契約書翻訳も含めて「被~」を日本語から英語にする場合に「被+~」とするわけにはいきません。

英語は、日本語の様に、ひとつひとつの文字が意味を表す表意文字でないため、文字自体にidea(意図、考え方)がありません。そのため、日本語の「被」にあたる英単語を付けて、「~を受ける、~される、~こうむる」の意味を持たせることはできません。

英語では、日本語のさまざまな「被+~」の言葉のそれぞれ対応する英単語・句があります。例えば、動詞の場合、過去分詞のみ、過去分詞+人またはもの、あるいは、ある言葉の後ろに「ee」を付けて、「被…」とする場合もあります。

上記の例には、下記に表にあるように被保険者(insured、assured)、被害者(injured parson)、被許諾者(grantee、licensee)等があります。

以下にいくつかの例を挙げてみます。なを、「被+~」に対応する英単語には以下に記載した単語以外のものもあります。

被裏書人 indorsee、endorsee
被害 harm、injury
被開示者 disclosee
被害者 Injured、injured parson、 victim
被拐取者 abducted person
被害届 incident report
比較法 comparative jurisprudence、comparative law
被疑者 suspect
被許諾者 Grantee、 licensee
被拘禁者 detained person
被後見 wardship
被後見人 ward
被告 defendant
被告事件 criminal case
被告自身の証言 defendant’s own testimony
被告人 criminal defendant
被収容者 inmate
被上訴人 respondent、appellee
被選択権者 optionor
被相続人 *decedent
被担保債権 claim secured
被保険者 insured、assured
被保証人 guarantee
被用者 employee

*「被」が付いても、被相続人は、「相続人が相続によって承継する財産や権利義務のもとの所有者」で、相続人(heir)は、「被相続人の財産上の地位を承継する人」

The child of a decedent shall be an heir.「被相続人の子は、相続人となる。」(民法

2. 「被~」の言葉の意味を把握した上で、適切な英単語やフレーズを作成する

上記のように、多くは、辞書等に記載がありますが、そうでない場合も多く、また定訳がない場合もあります。その場合、その「被~」の言葉の意味を把握した上で、適切な英単語やフレーズを作成する必要があります。

 

以下に上記の例を使った例文を作成してみました。

The act or omission of one insured will not invalidate the policy as to the other insured.

(いずれかの被保険者の作為または不作為によって他の被保険者に対する証券の効力が失われない。)

A copy of the insured amounts and the receipt of payment shall be provided each year.

(保険総額と領収書のコピーは、毎年、提供されるものとする。)

Premiums are determined in accordance with an insured person’s salary.(保険料は、被保険者の給与に応じて決定されます。)

In the Agreement, it shall clarify where responsibility lies before deciding the final repair cost to be paid to the insured.(契約では、被保険者に支払う最終的な修理費用を決定する前に、責任がどこにあるかを明確にするものとします。)

用例、例文は契約書翻訳の観点から当方にて作成したものですが、内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。

参考図書

大辞泉(小学館)

法律英単語(自由国民社)

ランダムハウス英和大辞典

ビジネス法律英語辞典(日経文庫)

日本法令英訳プロジェクト

 

 

 

英文契約書の単語・用語 entitle、entitlementおよびこれらの類語・類似表現

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単語「entitle」は、英文契約書や法律文書の欠かせない定番の単語の1つです。さまざまな場面で使用されます。契約書翻訳の観点から概説します。

1. entitle

「権利を与える、資格を与える、〜に題名をつける」

Licensor is entitled to ~(ライセンサーは~の資格を与えられている・ライセンサーは~する権利がある)

This Agreement shall entitle Reseller to purchase Products at the discounted prices.(本契約は、再販業者が割引価格により製品を購入する権利を与えるものとします。)

entitleの名詞形は「entitlement」(権利・資格(付与))です。

2. 類語・類似表現

類語・類似表現には以下のようなものがあります。これらは本来、それぞれ文脈に応じた使い分けが必要ですが、以下に作成した例文では、結果的に「何かの権利・資格が与えられている=何かの権利・資格を有している」というニュアンスになります。英文契約書で使われる代表的な意味とそれに合わせて作成した例文(*を除く)を通して、これらについての用法をざっと見てみます。また、ここで書いた各単語の意味は契約書という観点からかなりしぼってあります。これ以外にも多くの意味と用法があります。

a)  give

「権限を付与する・権限を与える」

例えばgive somebody authority to doの形で、The managing committee gives the person in charge the authority to supervise the subcontractors.(運営委員会は、担当者に下請け業者を監督する権限を与える)

b)  vest

「(権利・財産)与える、授ける」

vest someone with authority((人に)権限を付与する)の形で、例えば、

The board of directors may vest the employees with the award of superior performance. (取締役会は、優れた業績に対する賞を従業員に与えることがきる。)

またはvest in(帰属する)の形で、例えばThe ownership of the properties shall be vested in the successor.(物件の所有権は後継者に帰属する。)

*The receipts from work shall vest in the national treasury. (作業の実施による収入は、国庫に帰属する。)http://www.japaneselawtranslation.go.jp/kwic/?re=01

b.  confer

「~を授与する」

confer something on someoneの形で、Nothing in this Agreement, express or implied, shall not be intended to confer on any third party any right under this Agreement.(本契約のいかなる条項も、明示・黙示を問わず、本契約に基づく権利を第三者に与えることを意図しない。)なお、本例文は、強調のため文章を倒置してあります。

c. bestow

「~を授ける、与える、贈る」

例えばbestow something on someoneの形で

The committee shall bestow the full authority on him.(委員会は彼に完全な権限を与える。)

私見ですが、「bestow」は実際の翻訳作業では、正直あまりお目にかかることはありません。

c)  allow

「許す、認める」

This Agreement shall not allow the Buyer to establish the right of lien to the products prior to the payment thereto. (本契約は、購入者が製品の支払い前に製品に対する抵当権を設定することを許可しない。)

「entitle」を使って上の文章と同じような感じの意味を持つ例文を作ってみました。

This Agreement shall not entitle the Buyer to establish the right of lien to the products prior to the payment thereto. (本契約は、購入者が製品の支払い前に製品に対する抵当権を設定する権利を与えない。)

上記の例文を購入者側の立場から見た場合は、以下の様な例文になります。

The Buyer shall not be entitled to establish the right of lien to the products prior to the payment thereto. (購入者は、製品への支払い前に製品に対する抵当権を設定する権利を与えられていない。)

Only one (1) entry is allowed per person during the contest period.(コンテスト期間中、出品作品は1人につき1点のみとします。)

d)  permit

「許す、許可する、許す、可能にする」名詞形は「permission」

以下の例文は、同意を与えて「許す、許可する」の意味。

The Licenser shall not permit the Licensee to use its trademark without the prior written permission of the Licenser.(ライセンサーは、ライセンサーの書面による事前の許可なしに、ライセンシーがその商標を使用することを許可しない。)

e)  authorize

「正式に許可する、認可する」名詞形は「authorization」

Distributor is authorized to sell the products under this Agreement. (ディストリビューターは、本契約に基づき製品を販売することを許可されています。)

f)  grant

「許可する、承諾する」名詞形もgrant「許可,認可」

辞書を見ると「願いにより許可する」という意味もあり、英文契約書でも、そのようなニュアンスの例文を作ってみました。

Upon a request of the Licensee, the Licenser may grant the Licensee to use such license after payment of the license fee. (ライセンシーの求めに応じ、ライセンサーは、ライセンス料の支払い後に当該ライセンスの使用を許可することができる。)

すでに述べたように、実際には、上記いずれの言葉もそれぞれの状況に応じた使い分けが必要ですが、例文的には結果的に「何かの権利または資格が与えられている=何かの権利または資格を有している」という解釈で作成しました(いささかとってつけたような感じはありますが)。上記の言葉の他にも様々な表現やフレーズがあります。これらについては、別の機会を設けたいと思います。

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

ビジネス法律英語辞典(日経文庫)

How to Create Effective Sentences in English (文英堂)

The New Oxford New Dictionary of English (Oxford University Press)

日本法令外国語訳データベースシステム

英文契約書の用語・単語 defect・faultについて

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今回は、defectについてです。英文契約書でもいろいろな場面で使われますが、典型的な一例としては、引き渡された商品または提供されたサービスに瑕疵があった場合、商品を受け取った、またはサービスを提供された当事者がどのような救済や補償を受けることができるか、という文脈で使用されます。「瑕疵」という言葉を改めて辞書で確認すると、「きず、欠点、あやまち」「法律で、通常あるべき品質を欠いていること。また、意思表示に詐欺あるいは強迫などの事由があること。」と示されています。英和辞典でも、主な意味は、「欠点、欠陥、弱点」等となっています。

ここでは、defectに関連して商品の保証、瑕疵の検査、瑕疵の取り扱い、瑕疵に起因する救済や補償の方法、その他法律的な部分に踏み込むことはせず、英文契約書で単語defectがどのように使われているかのみに絞り、作成した例文を通して使い方を簡単に見てみます。

1.  defectの用例

If the Purchaser has found a defect after the acceptance inspection, the Purchaser shall promptly report the Buyer of such defect in writing and the Buyer shall promptly provide the Purchaser with the replacement. (受領検査の後、買主が瑕疵を発見した場合、買主は、かかる瑕疵につき書面により売主に速やかに報告を行い、売主は、速やかに買主に代替品を提供する。

If the Purchaser finds a defect at a later date, the Purchaser shall also report this without delay.(買主が、後日、瑕疵を見つけた場合、買主は、遅滞なく、このことを報告する。)

上記の例文では、「物品の瑕疵」についての内容ですが、「物品の瑕疵以外の瑕疵」については、以下のような感じになります。

Systemic Failure means, in relation to the Equipment, a material defect which:

(システムの不具合とは、装置に関連して、以下の重大な瑕疵を意味する。)

Program Error means a reproducible defect or combination of defects in the Software that results in a failure of the Software.(プログラムエラーとは、ソフトウェアの不具合をもたらしたソフトウェアの再現可能な瑕疵または瑕疵の組み合わせを意味する。)

2. 他の語との組み合わせ

defectを使用した例として、「英文契約書の用語、構文(その17)でとりあげた「free from defects」などがあります。

The Products shall be free from defects in workmanship and material. (製品は、仕上がりと材料に瑕疵がないものとする。)

その他、defectと他の語を組み合わせた用語は、主なもので、形容詞も含めるとdefect in title(権原の瑕疵)、defect liability(欠陥責任)、defective declaration of intention(瑕疵のある意思表示)、defective title(瑕疵のある権限)

3. defectの類語

defectの類語には、「fault」があります。faultの主な意味は、(過失の)責任、誤り、過失、違反、欠点、欠陥、瑕疵、故障等です。defectの類語ですが、経験的に多くは、以下に作成した例文のような使われ方をします。

The information that is at the time of disclosure already in the public domain or becomes available from public sources through no fault of the Recipient.(開示時点においてすでに公知である情報、または「受領当事者」の過失によることなしに、一般の情報源から利用可能になった情報。)

その他、defectに相当する語として、failure(不履行、故障、不具合等)、malfunction(故障、不具合等)等があります。

これらの単語は、英文契約書に限らず、当方で扱っている技術書・マニュアル等でもいわば常連の単語です。最初に述べたようにdefect・faultが関連する分野は、多岐にわたります。ブログ程度は収まらない内容を含んでいますが、機会があれば、それらの表面だけでも少しずつ眺めてみたいと思います。

参考図書:

研究社新英和大辞典(第5版)

ビジネス法律英語辞典(日経文庫)

法律英単語(自由国民社)

英文契約書の用語・単語  unlessについて

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unless自体は英文契約書で使われるだけの単語というわけではありませんが、他の語と組み合わされて成句を作り、独特の使われ方をする場合があります。unlessは「使いづらい、わかりにくい」と感じている方も多いと思いますが、ネイティブが非常によく使う接続詞です。

1. unlessの意味

接続詞としての意味:…でない限り、もし…でなければ、〜を除いては、ただし〜の場合を除く

通常 if…notと言い換えられますが、unlessで始まる成句の内容が実際に起こる確率の方が低い場合が多く、「起こるとは思わなかった事が発生した場合には」という表現になっています。

2. unlessの成句

英文契約書で、よく目にする成句をいくつか取り上げてみました。

unless any objection is reserved(ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。)

unless any other intention is manifested (別段の意思表示がないときは)

unless the context requires otherwise(文脈上他の意味に解すべき場合を除き)等があります。

その他、otherwiseと一緒になり、以下のように使用されます。

unless otherwise indicated above (上記において別段の指示がある場合を除き)

unless otherwise noted(特に規定する場合を除く)

unless otherwise stated (特に明記される場合を除き)

unless otherwise terminated(その他解除される場合を除き)

unless otherwise provided for in this Agreement(本契約に別段の定めがある場合を除き)

unless otherwise specifically set out in the Agreement(本契約にその他特段に規定される場合を除き)

unless otherwise agreed in writing (書面により別段の同意がある場合を除き)

unless otherwise agreed by the parties hereto (その他本契約の当事者が合意する場合を除き)

この他にも状況に応じた多くの表現があります。

以下は、unlessを使用した例文です。

Payment shall be made in US Dollars unless otherwise stated in the Purchase Order (注文書にその他記載する場合を除き、支払いは米ドルとする)

Unless otherwise provided for by law, shareholders shall have the stock purchase right.(株主は、法律の定める場合を除いて、新株について引受権を有する。

The residual assets in the case of the dissolution of a Financial Instruments Membership Corporation shall be distributed equally among its members, unless otherwise stipulated by the articles of incorporation or resolution of a general meeting.(金融商品会員制法人が解散した場合における残余財産は、定款又は総会の決議により別に定める場合のほか、会員に平等に分配しなければならない。)(金融商品取引法

 

3. unlessの類似表現

「except〜(〜を除いて)」、「except that〜(〜の場合を除いて)」、「except as」、「if〜not(もし〜でなければ)」等がunlessの代わりに使用されることがあります。

Except as set forth in Schedule1(附則1に規定される場合を除き)

Except as otherwise provided herein, neither party may unilaterally terminate this Agreement.(本契約によりその他特段の定めがある場合を除き、いずれの当事者も、一方的に、本契約を解除することはできない。)

Except as expressly permitted under this Agreement(本契約において明示的に許可される場合を除き)

Except as otherwise provided for in the Article of Incorporation,(定款に別段の定めのある場合を除き)

A request for issuance of a warrant or examination of a witness shall be accompanied with the document set forth in item (iii) of Article 2; except that this shall not apply when a treaty provides otherwise.

(令状又は証人尋問の請求は、第二条第三号の書面を提出して、しなければならない。ただし、条約に別段の定めがある場合には、この限りでない。)(国際捜査共助等に関する法律

The following claims shall be extinguished if not exercised for one year: (次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。)

This function can be disabled if not required.(この機能を使用しない場合は無効にできます。)

契約書翻訳の観点から「unless」とその類語について簡単に見てみましたが、最後に最近、たまたまツイッターで送られて来た、インドのラジニーシ(Rajneesh)(1931-1990)の言葉で「unless」について終わります。
The heart is like a flower. Unless it is open, it cannot release its fragrance into the world! 直訳的に読むと(心は花の様です。開いていない場合、その香りを世界に放つことはできません!)ですが、実際にはこんな感じになると思います。(心は花の様!開いてこそ、その香りは世界に解き放されます!

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

法律英単語(自由国民社)

ビジネス法律英語辞典(日経文庫)

日本法令英訳プロジェクト

 

英文契約書の単語・用語 due、 due to

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単語「due」は、英文契約書に限らず、様々な分野で使用され、様々な意味を持ちます。そのため、契約書では様々に訳されるため、ある意味つかみどころのない言葉です。「due」の用法についてもその語源も含めて様々な解説がされていますが、今回は英文契約書における「due」の使われ方のうち、とりあえず知っておけば便利な使い方に絞って、主なものを契約書翻訳の観点から作成した例文を通して見てみます。

1. dueの語源

「due」の語源については、様々な説明があります。

とりあえず、Oxford Dictionary of Englishにある「due」の語源(Origin)を見ると、「Middle English (in the sense of “payable”): from Old French deu “owed”, based on Latin debitus “owed”, from debere “owe”とあります。

「中世英語(「支払うべき」の意味):ラテン語のdebitus「owed(:支払い義務を負う/(義務を)負った)」に基づき、debere「owe(支払い義務を負う/義務を)負っている)」に由来する古期フランス語のdeu「owed(支払い義務がある/(義務を)負った)」です。

さらに意味を確認してみると、以下のように記載されています。

形容詞としての用法

(1) Expected at or planned for at a certain time. Of a payment required at a certain time. (特定の時期に予定され、または計画されていること。特定の時期に必要される支払い。)

(2) of a proper quality or extent. Adequate(適切な品質または範囲。適切。) driving without due care and attention. (細心の注意(相当な配慮と注意)を払わずに運転する。)

名詞としての用法

(1) one’s dueの場合。a person’s right(人が持つ権利)

(2) duesの場合。an obligatory payment(義務的としてなすべき支払い)、a fee(料金)

2. dueの主な意味

様々な意味を持ちますが、ここではあくまでも英文契約書で使われることが多い「due」の意味を中心に見てみます。(上記のように「due」は、形容詞、名詞、副詞として使われますが、ここでは文法に関する説明は行いません。実務的にはこのようなものであると理解すれば十分です。なを、以下の用例以外にも様々な意味があります。)

a.「当然支払われるべき」、「支払期日が到来した」、「満期の」等

b.「正当な、」、「当然の」、「相応の」等

c.「~のために、~に帰すべき:「due to」として」

d.「当然与えられるべき「due toまたはdue」として」

e.「~する予定で」

3. 英文契約書で見られるdueを使った用語のいくつかの例

すでに述べたように様々な意味と用法があります。due単体でも使用されますが、多くの場合、他の単語と組み合わされて、「句= phrase」として使用されます。*例えば、以下のような語句があります。

due act 正当な行為:legitimate act
due care 相当な注意:a good deal of care, (all) reasonable care, due attention
due date 支払期日、満期日:the date on which something falls due, especially the payment of a bill.(何かが期日を迎える日付、特に請求書の支払い。)
due diligence 相当な注意:reasonable steps taken by a person in order to avoid committing an offence, especially in buying or selling something.(特に何かを売買する際に、犯罪を犯さないようにするために人がとる合理的な措置)
due process (of laws) 法の適正手続き、適正な手続き:fair treatment through the normal judicial system通常の司法制度による公正な扱い)
due reason 正当な理由

*上記以外にも、適宜、他の語と組み合わされ、または単体で使用される場合が多くあります。これらも含めいずれも文脈・内容により適用される意味が異なります。契約書等で長い条文の中で使われている場合など、文脈・内容を把握して意味を確定します。

4. dueを使った例文

以下に、主に上記の「due」の用例を使った例文を作成してみました。

The train is due in Tokyo at 6:25 p.m. (列車は午後6時25分に東京に到着の予定)

He is due to graduate in June. (6月に卒業することになっている)

This accident was due to a system error. (事故はシステムエラーに起因した。)

the money due to him. (彼に支払うべき金)

Any amounts which are not paid within the due date will be subject to interest of one percent (1%) per month, which will be immediately due and payable.(支払期日までに支払われない額は、1ヵ月当たり1%の利子が科せられ、即時に支払期日が到来する。)

Prior to the due date for filing by the Company of any Tax return, report or other filing that relates to a tax period beginning before the Closing Date and ending after the Closing Date…. (会社が、クロージング日前から開始し、クロージング日後に終了する課税期間に関連する納税申告、報告書、またはその他の提出物の提出期日に先立ち….)

There are no Tax liens on any of the assets of the Company, except for liens for Taxes not yet due.まだ期限が到来していない税に対する先取特権を除き、会社の資産のいずれに関しても、税の先取特権は存在しない。

The Company shall be timely paid over such taxes or other amounts to the appropriate governmental authorities to the extent due and payable.(会社は、適時、かかる税または他の額を納付すべき範囲まで当該政府機関へ支払うものとする)

 

Each party agrees to exercise due care in protecting the Confidential Information from unauthorized use and disclosure. (各当事者は、不正使用および不正開示から機密情報を保護するための相当な注意を払うことに同意する。)

 

Some of the key issues already identified to be investigated further during the due diligence process exist. (デューデリジェンスプロセス(適性評価)中にさらに調査する必要があるとすでに特定されている重要な問題がある。

5. その他のいくつかの用例

become due (fall due) (満期になる)

the honor due (to) him(彼に与えられるべき名誉)尊敬・称賛などが〉(人に)当然与えられるべき((to …))toが省かれる場合がある。

以下は、「当然の」、「正当な」、「それ相当の」、「十分な」の意味です。

with (all) due respect(十分に敬意を表して)

in due form(正式に)

in due time(そのうちに)

会費、組合費、料金、手数料、税金を表して(通例~s)

club dues(クラブ会費)

harbor dues(入港税)

ざっと見ただけですが、英文契約書に記載されているか、否かにかかわわらず、単語「due」の使い方は、難しいものがあります。理由のひとつは、冒頭に述べたように他の単語と組み合わされ場合、それが使われた文脈により、日本語の訳が変わるためです。ネイティブからすれば「due」はあくまでも「due」です。単語「due」慣れるためには、やはり多くの文例に接する必要があるようです。

 

参考図書

The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)

Business English (BARRONS)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

法律英単語(自由国民社)