英文契約書の用語・単語-単語編「A」まとめと追記(その2)

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英文契約書の用語・単語-単語編「A」まとめと追記(その1)の続きです。契約書翻訳の視点から、以前、ブログ「英文契約書の用語(単語編)」で特に契約書で良く使用される単語をアルファベット順にとりあげました。ただし、あまり使用しない言葉も多かったため、今回、その中から(1)-改めて特に知っておくと便利な言葉に絞った言葉(あくまで主観的な意見です)、(2)-以前の記事ではとりあげなかった事柄などについてみてみました。例文は当方で作成したもので、訳文は暫定訳です(法律文を除く)。

・advance: 貸金、立替え等
他の語と組み合わされて、例えば、advance payment(前払い、前渡し金)等、熟語を作ります。「advance」は、動詞としても「(…を)進める、(…を)(…へ)前進させる」、「期日を繰り上げる」等の意味で使われます。

advance disbursement: 立替金、「disbursement」は、「支払い、支出、支払金、出費等」金銭にかかわる意味

・adverse: 反対の、利害関係の相反する

他の語と組み合わさり、熟語を形成します。adverse witness(相手方証人)、

* adverse party(相手方)、adverse effect(悪影響)material adverse effect(重大な悪影響)など。

*「相手方」については、経験上、the other partyが多く使われるようです。

adversary system: 当事者主義、対審制度。英米法の手続上の制度です。

adverse claim(異議申立て、反対主張)

adverse possession(不法占有)

・affiant: 宣誓供述書

・advocate: 弁護士、主唱者-いずれも名詞。動詞では「~を擁護する」

・affirmative: 確言的な、断定的な、肯定的な

affirmative action(積極的是正措置)、affirmative defense(抗弁)、affirmative vote(賛成投票)

affirmative voteについては、例えば以下のような例で使用されるのをよく見かけます。

The affirmative vote of a majority of all directors present at any meeting of the board of directors shall be required to pass any resolution.

・agreement:合意、取り決め、協定、契約等

他の語と組み合わさり、熟語を形成します。license agreement(ライセンス契約、実施契約)、agreement about relief of liability(免責約款)、agreement for arbitration(仲裁契約)、agreement of sale(売買契約)、agreement of settlement(協定)等

「契約」を意味する場合の「agreement」と同じ意味を持つ言葉の1つに「contract」があります。「agreement」と「contract」についてはブログの最後に内容を記載しました。

・allegation:申し立て、陳述、主張。動詞は「allege」

・allotment:割当て、分配、分担額

allotment of shares(株式の割当て)「割当て」の意味では、同様な意味を持つ言葉として下記に「appropriation」をとりあげました。

・amendment:変更、修正、改正

amendment of a count(訴因の変更)「modification」、「change」も使用されます。No modification or amendment of this Agreement shall be valid or binding unless made in writing and executed by the parties hereto.本契約の変更または修正は、本契約の両当事者より書面が作成され、署名される場合を除き、無効であり、法的な拘束力を有しない。)

・applicable law:準拠法、適用法

his Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of Japan(本契約は、日本国の法律を準拠法として、これに従い解釈される)

・application:申請

If the application is accepted(申請が受理された場合)、

請求、適用、application of law(法律の適用)

申込み、株式の申込み、弁済の充当、出願:patent application(特許出願)、home country application(本国出願)international application(国際出願)その他、多くの分野でいろいろな場面で使われます。

・apply:適用する‐The following definitions apply to this Agreement(本契約には、以下の定義を適用する)apply mutatis mutandis (準用する)-The provision of the second sentence of the preceding paragraph shall apply mutatis mutandis to such case.(この場合においては、前項後段の規定を準用する。)この用語も、いろいろな場面で使われます。

・appropriation:充当‐appropriation of performance(弁済の充当)、財産取得,割当て、Appropriation of Earnings Plan(利益処分案)目的の特定、流用・私用・盗用、(政府)歳出予算

・approval:承認、許可、認可、賛成、
approval of board of directors (取締役会の承認)、approval of Diet (国会の承認)

英文契約書では、「契約」を意味する英単語として「Agreement」が良く使われます。

「Agreement」のほかに「契約」を意味する英単語の1つとして「Contract」があります(その他、「undertake」、「covenant」、「promise」など類似の意味を持つ言葉もありますが)。「Contract」は、「約定」、「協約」、その他「請負」等ともされます。「Agreement」も契約という意味のほかに「同意」、「賛成」、「合意」、「一致」、「了解」、「承諾」等の意味があります。日本法では「合意」と「契約」は一般的に同じ意味を有すると考えられますが、英文契約書におけるContractとAgreement違いについて、また英文契約書の作成においていずれを使うのかついて少し触れてみました。

「契約」という意味において「Contract」と「Agreement」の違いについて厳密にはアメリカ統一商法典第2編201条12 項(UCC§1―201(12))および契約法第二次リステートメント(Restatement (Second)of Contracts)には、以下のように規定されています。

§ 28:1–201. General definitions.

(3) “Agreement”, as distinguished from “contract”, means the bargain of the parties in fact, as found in their language or inferred from other circumstances, including course of performance, course of dealing, or usage of trade as provided in § 28:1-303.

(12) “Contract”, as distinguished from “agreement”, means the total legal obligation that results from the parties’ agreement as determined by this subtitle and as supplemented by any other applicable laws.

基本的には「Agreement」は双方の合意、「Contract」は法的に有効な契約-法的強制力があるもの-とされます。なを、「Agreement」が「Contract」になるには、対価関係である「consideration(約因)」があること、契約における書面性があること、合意の明確性があること、契約の無効原因がないこととされます。

Restatement (Second) of Contracts

§ 1 CONTRACT DEFINED

A contract is a promise or a set of promises for the breach of which the law gives a remedy, or the performance of which the law in some way recognizes as a duty.

§ 3 AGREEMENT DEFINED

An agreement is a manifestation of mutual assent on the part of two or more persons. A bargain is an agreement to exchange promises or to exchange a promise for a performance or to exchange performances.

アメリカ統一商法典、契約法第二次リステートメントでも「Contract」と「Agreement」は区別されています。

ただし、実務的な場合、「契約」の意味において、は 英文契約書はその作成においてそのほとんどが「Agreement」として表記されており、その「Agreement」自体が法的拘束力のあるものとして作成されており、実務的には「Contract」との違いはありません。経験的にも「契約」=「Contract」と表記された契約書は、ごくまれに遭遇する程度です。

ちなみに日本の民法522条は、契約の成立と方式として「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。(A contract is formed when a party manifests the intention to offer to conclude a contract (hereinafter referred to as an “offer”) showing the terms of the contract and the other party accepts the offer.)」「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。(Unless otherwise provided for in laws and regulations, it is not required to satisfy any formalities such as preparation of a written document in order to form a contract.)」とされています。

上記のように「契約」そのものの定義についても、日本法では、「相対する2つ以上の意思表示の合致(合意)により成立する法律行為」、米国法では、「その違反について法が救済を与える、またはその履行について法が何らかの方法で義務を認める、約束または約束の一式をいう」とされています。

LOIとMOU
「Contract」と「Agreement」について触れたついでですが、契約の最終的な締結の前にその過程において当事者間で合意した事項を記載した文書として(LOI(Letter of Intent)とMOU(Memorandum of Understanding)があります。LOIは契約書の作成途中にやり取りされる合意事項(当事者間の意思確認)をまとめたもので「取引意向書」と称される場合もあり、MOUは、契約や条約、協定などが正式に締結される前段階の合意文書で「了解覚書」称される場合もあます。基本的にはいずれも法的拘束力はないとされますが、実際にはそのあたりのところは各事例について専門家の判断にゆだねられる部分です。

なを、参考までですが、米国政府のFederal Acquisition Regulationを見ると「Contract」は以下のように規定されています。
Government Contracting – FAR Part 2 – Definition Of Words And Terms – Win Federal Contracts  Subpart 2.1 – Definitions 
2.101 Definitions

Contract means a mutually binding legal relationship obligating the seller to furnish the supplies or services (including construction) and the buyer to pay for them. 以下略(長文なので)。

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アメリカ統一商法典
Federal Acquisition Regulation

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英文契約書の用語・単語-単語編「A」まとめと追記(その1)

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契約書翻訳の視点から、以前、ブログ「英文契約書の用語(単語編)」で特に英文契約書で良く使用される単語をアルファベット順にとりあげました。今回、その中から(1)-改めて特に知っておくと便利な言葉に絞った言葉(あくまで主観的な意見です)、(2)-以前の記事ではとりあげなかった事柄などについてみてみました。例文は当方で作成したもので、訳文は暫定訳です(法律文を除く)。

・acceleration:期限の利益の喪失、弁済期日の繰り上げ(繰上げ弁済)。

Forfeiture of the Benefit of Time for Failure to Pay Interest on Bonds(社債の利息の支払等を怠ったことによる期限の利益の喪失)(会社法

・accept:受諾する、受け入れる、収受する、受理する、譲り受ける

The Company shall entrust the services provided for in this Agreement to the Contractor and the Contractor shall accept it.

・acceptance:受諾、受理、承諾、引き受け

acceptance of debt(債務の引き受け)、acceptance of performance: 弁済受領

・accord:合意、協定、代物弁済

・accord and satisfaction: 合意、協定、代物弁済

・account:口座、会計、計算書、勘定、bank account(銀行口座)、account receivable(売掛債権)

・accounting:会計、accounting book: 会計帳簿

・actual:現実の、実際の

他の語との組み合わせで成句を形成します。actual possession(直接占有)、actual proof(実証)、actual harm(実害)

・addendum:別紙、添付書類、附属文書

同様な意味を持つ単語として「Addendum」、「Annex」、「Appendix」、「Attachment」、「Exhibit」、「Rider」、「Schedule」などがあります。いずれも、いわゆる「別紙」、「添付書類」、「付属書類」、「付属文書」などの意味を表す言葉です。

多くの場合、ある事柄を契約書本文に書くと煩雑になる場合、商品やサービス等の価格表など、将来的に変更される可能性のあるものその他様々な理由で使用されます。

これらは、名称がたとえ別紙/付属文書となっていても「契約書の一部を構成し、契約書と不可分一体」のものです。そのため、英文契約書中の「最終性条項または完全なる合意(Entire Agreement)」と称される条項において、例えば、以下に作成した例文のように「別紙」、「付属文書」が、契約の一部を構成することを確認することもあります。

All Attachments shall be deemed a part of this Agreement.(すべての別紙は、本契約書の一部とみなす。)

The Exhibits attached to this Agreement shall be made an integral part of this Agreement.(本契約書に添付の付属文書は、本契約の不可分の一部とする。)

当然、これらの内容を変更するには、例えば、以下のような内容を記載することがあります。
The terms and conditions in the addendums, exhibits and schedules attached hereto are the entire agreement between ABC Company and XYZ Corporation with respect to the subject matter hereof.

組織または政府機関等によっては、内規、法律によってどの言葉をどのように使うかが定められている場合もあります。

その他、「別紙」、「付属文書」ではありませんが、契約の最終的な締結の前にその過程において当事者間で合意した事項を記載した文書として(LOI(Letter of Intent)とMOU(Memorandum of Understanding)があります。なを、これらが契約の一部を構成することなるか否か(法的拘束力の有無)については専門家に判断ゆだねられる部分です。

・addressee:受信人

・adequate:十分な、適切な

他の語との組み合わせで成句を形成します。adequate cause(正当な理由)、adequate remedy(適切な救済(策))

・adjudication:裁定、裁判、adjudication of an appellate court(上訴の裁判)、
adjudication of bankruptcy(破産宣告)

・accusation:告発

・acknowledgment:承認、認知。 動詞は、acknowledge。The User acknowledges that ABC Corporation is the sole owner of all intellectual property rights

・acquisition:取得、獲得。
acquisition of share option(新株予約権の取得)、acquisition or loss of property rights (物権の得喪)、acquisition or loss of rights(権利の得喪)、acquisition value (取得価額)

このほかにも、他の語との組み合わせでさまざまな成句を形成します。

・acquit:無罪を言い渡す、(責任等)を免除する、acquit oneselfで、責任を履行する

「(責任等)を免除する」に使われる言葉は、ほかに「release」とか「exempt」などがあり、和文英訳では、個人的にはこの2つを使うのが便利です。

This provision shall not release the Contractor’s obligations under this Agreement.

The Lessor shall be exempted from the responsibility for small repairs required during the tenancy, the Lessee such perform such repairs at his/her own cost.

・acquittance:債務消滅、債務消滅証書

・act:(個々の)行為、行為、法律、判決書

・accrue:発生する、(権利、利息等が)生じる

Interest on this loan accrues at a rate of 5.0% per annum. (本件貸付の利息は年率5.0%です。)accrued expenses(未払費用)、accrued income(未収収益)など、accrued xxxの形式で使われることも多くあります。accrueの名詞形accrualも多く使われます。例:accrual basis‐発生ベース。

・action:行動、訴訟、動作、行為の過程全体、action for an objection: 異議の訴え、action for damages: 損害賠償請求訴訟、action in person: 対人訴訟、action on title: 本権の訴え、civil action(民事訴訟)(訴訟を意味する単語としてほかに「suit」があります。米国を例にとると、かつて「action」はコモンロー上の訴訟、「suit」はエクィティ上の訴訟とされていたようです。1938年以降、手続き上は、一応、統合されているようです。実際の手続き、運用、両者の相違等については、詳細は専門書等をご覧ください。なを、コモンロー上の救済が適切でない場合に限り、エクィティ上の権利を適用するとされています。その他訴訟を意味する単語には、これらのほかlitigation, lawsuitなどがあります。)

If a necessary of lawsuit arises regarding this Agreement, it shall be submitted to the Tokyo District Court or the Tokyo Summary Court as the exclusive agreed jurisdictional court for the first instance. (本契約に関し、訴訟の必要が生じた場合には、東京地方裁判所又は東京簡易裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。)

 訴訟判決remedy
Common Lawaction at law ⇒ actionjudgement対物的
財産差し押さえ
損害賠償
Equitysuit at equity ⇒ suitdecree対人的 (Equity act in personam)
罰金/禁固刑
特定履行(specific performance)
差止命令(injunction)

上記は、同じ文言(訴訟、判決、その他)がCommon LawとEquityで異なる場合について文言についてのみおおざっぱに記載してあります。詳細は、専門書等を参照して下さい。

・adjust:清算する、調整する、調停する

・administration:行政、管理、遺産管理

このほかにも、さまざまの意味があります。また、他の語を合わさって以下のような熟語を作ります。

administrative action(行政処分、行政行為)、administrative agency; administrative organ(行政機関)、administrative authority(職務権限、行政権)、administrative disposition(行政処分)、administrative guidance(行政指導)、administrative law(行政法)、administrative litigation(行政訴訟)、administrative measures(行政処分)、administrative power(行政権)

・administrator:遺産管理人、管財人、管理者、行政官等など。

・admission:告白、自認、加入承認、admission of claim(請求の認諾)

*ここは「admission」の項目ですが「claim」は、いろいろな意味があり、いろいろな用い方をされる注意すべき単語です。例えば、特許関連では、「クレーム」、「特許請求の範囲」、「請求項」等とされます。「claim」の類語は、「demand」。いずれも契約書では良く目にする単語です。

本ブログは、個人的理解により書かれてます。本ブログの内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。弊社では、豊富な経験と知識に基づき原文に忠実かつ適格な翻訳を適正価格でお届けします。英日翻訳、日英翻訳のいずれにも対応しております。お客様の作成したAI翻訳による翻訳文を原文と対比して校正するポストエディットも承っております。

参考図書:
カレッジライトハウス英和辞典(研究社)
英和大辞典(研究社)
ビジネス法律英語辞典 日経文庫
アメリカの法律と歴史 増補版 自由国民社
日本法令外国語訳データベースシステム

英文契約書の用語と単語 「に~させる」の表現(まとめ)

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契約書翻訳では、英語から日本語、日本語から英語の翻訳を問わず「・・・に~させる」という表現を目にします。「・・・に~させる」という表現は日常的にも使われる表現です。
今回は、この表現について英文契約書で目にすること多い単語cause、impose、compel、enforce、make、その他を使った表現について契約書翻訳の観点から作成した例文を通して見てみます(法律文を除く)。

「cause」は、名詞では、原因、理由、根拠、正当な理由、主張、主義、訴訟などに意味があります。また、動詞としては、「に~させる」、「~の原因となる」、「~を引き起こす」、「~をもたらす」の意味があります。

以下の2つの例は、契約当事者も契約内容を順守・履行するが、その関係者にも、当事者の義務として契約内容を順守・履行させるパターンです。使役動詞を使い、契約当事者も契約内容を守るが、契約当事者の関係者にもその契約内容を守らせる」ということを約しています。

(1) Party A will hold and will cause their respective representatives to hold in confidence all documents and information concerning the Party B furnished to Party A.(甲は、乙が甲に提供したすべての文書及び情報の機密を保持し、また、自社の各々の代表者にもその機密を保持させるものとする。)

(2) Party A shall keep and shall cause each related party to keep confidential, and cause its affiliates and subseries to keep confidential, all information relating to Party A’s businesses((甲は、甲の事業に関連するすべての情報を秘密に保持し、また各関係者にも秘密として保持させ、またその関連会社および子会社にも秘密として保持させるものとする。)

以下(3)の例は、契約当事者ではないが当事者の義務としてその関係者の義務を定める場合の表現の一例です。「cause somebody to do」のパターンとして良く使われます。
そのほか類似のパターンとして「に~させる」「compel somebody to do」、「force somebody to do」などがあります。

(3) The Contractor shall cause its subcontractor to carry their identification cards when conducing the site survey. (請負業者は、現地調査を実施する際に、下請業者に身分証明書を携帯させるものとする)

In the event that the Minister of Agriculture, Forestry and Fisheries deems necessary, he/she shall cause its employees to cooperate with Prevalence Reconnaissance Business by prefectures. (農林水産大臣は、必要があると認めるときは、その職員をして都道府県の発生予察事業に協力させる。)(種苗法

語源的には、「上に置く」の意味合いがあるため、(政府等の強制力があるentityが)(制裁・税・罰金などを)(人・物に)課する、強制する。(責任・負担などを)(人などに)負わせる,押しつける等の意味があります。

経験的に英文契約書で良く見かける「impose」の用法は、主に「~に~を課する」、「~に~を強いる」が多いようです。

The distributor shall provide repair services without imposing a financial burden on customers(販売代理店は、顧客に金銭的負担を強いることなく、修理サービスを提供する)なを、この文章は通常、こんな感じになります。「The distributor shall provide customers with repair services without cost.」

The Government imposed the high taxation. (政府は高い税を課した。)

作成した下記の例文は、「impose」の用法としてよく目にするものです。
The parties hereto shall impose the same obligation of the Confidentiality equivalent to that of this Agreement on third party and shall assume the responsibility to cause the third party to observe it.(本契約の両当事者は、第三者との間において本契約におけるものと同様の義務を負わせ、これを順守させる義務を負う。)

The Company may impose additional security requirements from time to time by written notice.(会社は、書面による通知により適切な時期に追加の安全要件を課すことができる。)

Party A reserves the right to impose a late penalty interest according to delay damages under Civil Code.(会社は、 民法の損害遅延金に関する条項に基づき遅延利息を課す権利を留保する。)

「(人)に~させる」の意味では、compelはどちらかというと、「無理に~させる」、「強いる」、「強いて~させる」の意味になります。

具体的には、「compel someone to do」の形で、例えば、The Government may compel a person who enters this country to conform to the rules applicable to such person.(政府は、この国への入国者に、入国者に適用される規則に従うように強制することができます。)

また、「compel someone to 名詞」の形で、「強いて〔ある行動を〕とらせる」の意味で使われます。例えば、Buyer shall have the right to compel Supplier to specific performance of the Order.(バイヤーは、サプライヤーによる注文の特定の履行を強制する権利を有するものとします。)なを、本題から外れますが、以下のように書くこともあります。Buyer shall have the right to compel specific performance of the Order by Supplier.

主たる意味としては、実施する、施行する、強いる、強要する、強める、強調する、強く主張する等の意味があります。

Each party has the right to enforce this Agreement against the other party by temporary restraining order, injunction, or other equitable relief, without proving actual damages.

(各当事者は、実際の損害賠償を証明することなく、保全命令、差し止め、またはその他の衡平法上の救済により、相手方に対して本契約を執行する(契約を行わせる)権利を有する。)

「衡平法:equity」を使ってみました。余談ですが、平衡法の主な救済措置の1つは「差し止め命令」です。一方、「衡平法」に対するものとして良く知られている「コモンロー:common law」があります。いずれも英米法の体系を成すものです。これらの意味を理解することは英文契約書に触れるに際して必要なことです。このブログの目的は、「とりあえず知っておくと便利な事柄」なので、詳細については専門書を参照してください。なを、あくまで個人的な理解としてですが、衡平法上の救済は、金銭的賠償、コモンローの救済は、金銭的賠償以外の救済とざっくりとみています。ただし実際にはこれほど単純なものではありません。そのほか、救済(remedy)については、To the fullest extent permitted by law, the Contractor shall be responsible for the remedy of any liability (common law, equitable, statutory or criminal), claims, losses, damages or expenses.などと衡平法やコモンローに加え、statutory(制定法)ほかを列記することあります(例文なのでやや無理がありますが)。繰り返しになりますが、「equity」、「common law」については、必要に応じて専門書を参照するか、専門家の意見を求めてください。

なを、enforceは、「(人に)に~させる」の意味よりも、以下のように「施行する」、「実施する」の意味で使用される場合が多く見受けられます。

The prefecture concerned shall pay the necessary expenses for the Prefectural Governor to enforce this Act.(都道府県知事がこの法律を施行するために必要とする経費は、当該都道府県の負担とする。)(建設業法

No person other than a party to this Agreement shall have any rights to enforce any term of this Agreement.(本契約の当事者以外の者は、本契約の条件を実施するためのいかなる権利も有さない。)

「・・・に~させる」の意味では、日常的に使われる最も一般的な言葉です。「・・・に~させる」という使い方では、「make + 目的語 + 原形」の形で、上記「1. cause(3)」の例文、「The Contractor shall cause its subcontractor to carry their identification cards when conducing the site survey.」の文章に「make」を使用してみると、The Contractor shall make its subcontractor carry their identification cards when conducing the site survey. (請負業者は、現地調査を実施する際に、下請業者に身分証明書を携帯させるものとする)

「cause someone to do」が「make someone do」の形になるだけで意味は同じです。経験的には、英文契約書の場合、「make」よりも「cause」が使われています。

本ブログの内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。
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英文契約書の単語・用語 日本語の漢字2語からなる英語表現(その2)諾否について

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契約書翻訳、例えば和文英訳の場合、日本語の「有無」、「可否」、「諾否」、「良否」、「成否」、「真偽」等の漢字2語からなる言葉が使われることがあります。これらは日常の文章や法律文でも使われています。漢字2語で表すとわずか2語からなる言葉ですが、英文に置き換える場合、同じ言葉でも、その内容・文脈等により意味合いの異なる場合もあり、その意味を体現した訳語を使う必要があります。もちろん英文和訳の場合でも翻訳に際してこれらの言葉を使用することがあります。
今回は、「諾否」についてです。いずれもすべての類型を網羅することはできないので作成した例文(法律文を除く)でいくつかのパターンを見てみます。例文にある訳語はすべて暫定訳です(法律文をのぞく)。

「諾否」について
「諾否」の主な意味は、「引き受けることと断ること」、「承諾するかしないか」になります。
和英辞典を見ると、「諾否」に対応する主な訳語としては「yes or no」または「~ whether someone accept ~ or not」があります。日英、英日の翻訳に際してこれらの言葉をそのまま使用することもありますが、和文英訳の場合、文脈により「諾否」に対応するとして言葉として例示した上記の英語に単純に置き換えることできない場合があります。
1つの例ですが「諾否」が「承諾するかしないか」とい意味で使われた場合、「承諾」は、類語も含めると「承諾≒受け入れる、聞き入れる、認める、承認する、受諾する」等の意味があります。そのためか上記の訳語に加え和英辞典でも「Consent or refusal」、「Acceptance or disapproval」、「Accepting or refusing」、「Accepting or not accepting」、「Acceptance or non-acceptance」等の訳語が記載されています。
特に「諾否」については翻訳に際して和文英訳・英文和訳を問わず文脈により対応する訳語が変わってきます。文脈に応じて的確な訳語を選択することが求められます。

1. 「諾否」に対応する英文をそのまま使用する場合の例:

例(1)The board of directors has not decided yet whether they accept the proposal or not.
提案を受けいれるか否か⇒提案の受け入れについての諾否

例(2)It decides (on) whether an issuance of the certificate is consented or refused
証明書の発行を承認するか拒否するか⇒証明書の発行の諾否

例(3)~ whether someone accept or not「諾否をお知らせください」Please let us know whether you accept (it) or not.
If a merchant receives an offer to contract that is in its line of business from a person with which it has regular dealings, the merchant must issue notice of its acceptance or refusal of the offer to contract without delay.(商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない。)(商法

2.  「諾否」に対応する英文を使用しない場合の例

例(1)…, it is required to furnish a response either consenting to or declining the request after checking whether it complies with technical standards, etc.(~の場合、技術基準に適合するか等を確認の上、要請に対する諾否に関する回答を行うことが求められる。)

例 (2)「この件に関する彼の家族の諾否が判明するのが遅れる場合」
if an answer from his family regarding this matter is delayed…

この場合、原文では「彼の家族の諾否」ということでしたが、何らかの提案・お願いに対する彼の家族の返答(了解・承諾または解答)のことを言っていると解釈し、状況に応じて「諾否」の訳を使うのではなく、家族からの承諾・了解の意味で「answer from …」としました。

契約書の簡単な例:
Party A has complete freedom to accept or reject sales of the Products under this Agreement even after the formation hereof. (当事者Aは、本契約の成立後であっても、本契約に基づく製品の販売の諾否についての(製品の販売を承諾または拒否する)完全な自由を有する。)

The Licensor shall examine the Licensees’ business plan, status of capital and financial situation every year after conclusion of this Agreement, seeking for shareholders’ approval or disapproval of this Agreement renewal. (ライセンサーは、本契約締結後毎年、ライセンシーの事業計画、資本の状況、財務状況を審査し、本契約の更新について株主の諾否(承認または不承認)を求めるものとする。)

前回、「可否」についてとりあげましたが、「可否」対応する英文のフレーズとして、「諾否」同様、「~ whether someone accept ~ or not」が使われることがあります。

I have not decided whether or not I can accept his offer yet. (彼の申し出を受け入れられるかどうかはまだ決めていません。⇒彼の申し出の受け入れの可否ついてはまだ決めていない。;彼の申し出を承諾するか否かはまだ決めていない。)

日本語の「可否」、「諾否」とも似たような意味やニュアンス、時として同じ意味で使われることがあります。日・英、英・日本翻訳とも文脈に応じた言葉の使用が必要です。

「可否」の日本語の意味については、前回のブログ「日本語の漢字2語からなる英語表現(その1)「有無」、「可否」」に簡単な記載があります。

「可否につき協議を行う」⇒When either party proposes to change the specifications based on the preceding paragraph, the parties shall consult with each another for the change and right and wrong of such change without delay.

実際のところ契約書に限らずこの「諾否」という言葉はあまり使われることはないようですが、それでもごくたまに目にすることもあり、取り上げた次第です。
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参考図書:
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英文契約書の単語・用語 日本語の漢字2語からなる英語表現(その1)「有無」、「可否」

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契約書翻訳、とくに和文英訳の場合、日本語の「有無」、「可否」、「諾否」、「良否」、「成否」、「真偽」等の漢字2語からなる言葉を使うことがあります。これらは日常の文章や法律文でも使われています。漢字2語で表すとわずか2語からなる言葉ですが、英文に置き換える場合、同じ言葉でも、その内容・文脈等により意味合いの異なる場合もあり、その意味を体現した訳語を使う必要があります。

例えば、日本語の「有無」は、「物事や事物のあること、ないこと」のほかに「承諾すること、断ること」、「存在するものと存在しないもの、または、存在することと存在しないこと」等の意味があります。

漢字は、表意文字であり、文字の1つ1つに意味があり、特定の事物と対応してそれを象徴する文字です。さらに日本語の漢字は、表意文字としての機能に加え、音も表し、語彙としての機能も併せ持っていいます。和英辞典には、これらの言葉に対応するそれなりの単語が掲載されていてますが、すでに述べたように内容・文脈等により、適切にその意味を体現した訳語を用いる必要があります。経験的にも、これられの言葉を辞書にある一見対応する英単語をそのまま使って表すケースは以外と少ないようです。また、内容によっては辞書に記載されていない単語を組み合わせて文章を作成する必要がある場合もあります。

今回は、これらの中から、特に内容・文脈等を踏まえて、作成した例文(法律文を除く)を通して、ごく一部ですが幾つかの例を見てゆきます。

1. 「有無」

この言葉の事本的な日本語の意味については、冒頭で述べた通りです。「有無」という意味の英単語で思い浮かべるのは、基本的には「existence or non-existence」;「presence or absence」です。いくつかの和英辞典で「有無」を調べてみると、基本的には「existence or non-existence」;「presence or absence」、「承諾すること、断ること」=「諾否」は、「yes or no」とあります。(もちろんこれら以外の様々なの記載例・用例があります。)

日常の文章での例:以下は、「有無」が入っている日常の文章の例として作成したものです。

日本語で「有無」となっていても「existence or non-existence」;「presence or absence」がなくても成立するもの、または「有無」の意味が「existence or non-existence」;「presence or absence」が持つ意味とは違うもの、様々です。

(1)技術者の技術の差は、経験と研鑽の有無から生じる: (a) Differences in the technical skill of engineers arise from the presence or absence of his or her experience and self-improvement.⇒ (b) Differences in the technical skill of engineers depend on his or her experience and self-improvement.

(2)申請書の記入漏れがないか確認してください: (a) Check for presence or absence of omission of the application form. ⇒(b) Check for any omission of the application form.
例文の出来具合はともかくとして、多分普通は、いずれも(b)になるかと思われます。

その他、辞書には、「(本人の意思にかかわりなく)~される(させる)=(有無をいわせず~される(させる)」について、例えばHe was forced to impose the responsibility without consideration of his wishes. He is appointed to a responsible person whether he is willing or not.などパターンの例文が掲載されていることがあります。(これらは当方で作成した文章です。もちろん「有無をいわせず~される(させる)」として訳す必要はありません。)いずれにしても様々な訳し方があるようです。

契約書・法律文などでの例
The parties hereto shall not assume any liability for damages, regardless of the presence or absence of the infringement of intellectual property right of any third party, in regard to the Confidential Information disclosed and used by the other party.

This Agreement shall be terminated at any time and for any reason if the other party violate the terms and conditions hereof.

This Agreement shall be, with or without cause, terminated at any time and if the other party violates the terms and conditions hereof.

whether or not the certified public accountant or the auditing corporation has an interest in the client company being audited, etc.(当該公認会計士又は当該監査法人の被監査会社等との利害関係の有無)(公認会計士法施行規則

「有無」についていくつかの例をあげてみました。日本語の「有無」の意味は、内容・文脈により多岐にわたります。そのため内容・文脈に合わせて「existence or non-existence」;「presence or absence」を使うのが適切な場合もあれば、それ以外の単語やフレーズを組み合わせて文章を作成する等、「有無」についての訳し方は様々です。

2. 「可否」

「可否」を国語語辞典で見てみると、「良いか、悪いか」「事の良し悪し」、「賛成と不賛成:賛否」、「可決と否決」、「受け入れることができる、受け入れることがでない」等の意味が記載されています。「事の良し悪し」の意味では、「事の是非」、「事の当否」などの表現があります。「可否」を和英辞典で見ると、まずは「right or wrong」、「advisability」などが出てきます。ただし実際には日・英、英・日にかかわらず、「可否」に対応する言葉は、文脈により様々な言葉が使われます。
子細に見るには取り上げる範囲が相当広範な内容になります。このブログの主旨は、「とりあえず知っておくと便利な事柄」なので、その部分にしぼっていくつかの例を取り上げてみたいと思います。

この言葉は日常でも使われます。まずはそのあたりから見てみます。

I have not decided whether or not I can accept his offer yet. (彼の申し出を受け入れられるかどうかはまだ決めていません。)

He offers a proposal to be argued as pros and cons.(賛否両論として議論される提案を提示する)

He asked him whether or not the matter to be approved or disapproved. (彼は私たちにその件が承認されるか不承認になるか尋ねました。)

契約書等の例

「可否につき協議を行う」⇒When either party proposes to change the specifications based on the preceding paragraph, the parties shall consult with each another for the change and right and wrong of such change without delay.

「その利用の可否を判断し(利用できるか、利用できないかを判断)」⇒If the Party A’s customer desires to use the System, Party B shall determine whether the System is available to the customer or not at its sole discretion, and notify Party A of the result without delay.

In the case where a request under the provisions of paragraph (1) has been made, the council must decide whether or not to dismiss the counselor or the chief accountant.(第一項の規定による請求があつたときは、理事会は、その参事又は会計主任の解任の可否を決しなければならない。)(中小企業等協同組合法

「議長がその可否を議場に諮ったところ」⇒When the chairperson took a vote on such agenda, it was unanimously approved.  Based on this, when the chairperson designated the person mentioned below and then took a vote on such designation, it was unanimously approved.  「take a vote on a matter」で「投票で可否を決する」の慣用句。「When the chairperson asked for a vote on such agenda,」などともできます。

何気なく使っている言葉でも、短かい簡単な言葉ほどその持つ意味が深いようです。例文に訳文が付いている場合、それらの訳文は暫定訳です。
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英文契約書の単語と用語 日時・期限・期間について (その2)

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契約書翻訳に際して、外すことができない構成要素の1つが「日時・期限・期間」についての事柄です。今回も前回に引き続き、作成した例文を通して英文契約書の「日時・期限・期間」について「とりあえず知っておくと便利な事柄」について見てみます。前回の「英文契約書の単語と用語 日時・期限・期間について(その1)」の続きです。 

5. 契約の解除日

契約の解除(Termination)については、上記の例文でも一部ふれていますが、例えば、解除の主な理由は、支払い遅延を含む契約の違反・不履行、倒産、その他様々の理由があります。また、契約の種類ごとに、事前にさまざまなケースを想定して解除理由を取り決める方法、その他、一方当事者が解除権を持つ場合、当事者間の合意によるものなど、解除権について様々に規定するものなど、多々あります。「とりあえず知っておくと便利」ということから、いくつか例文を作成してみました。

(1)「事前通告あり」

(a) Either party may terminate this Agreement without cause upon a prior written notice to the other party at any time.(いずれの当事者も、他方当事者への書面による事前の通知により、いつでも理由を問わず本契約を解除することができる)

(b)  This Agreement may be terminated immediately upon a written consent of the parties hereto if the following events occur:

by a prior written notice to a party who commits the following event:

(2)「一方当事者が解除権を持つ」

The Company, in its sole discretion, may terminate this Agreement without any liability at any time.(当社は、独自の裁量により、いかなる責任も負うことなくいつでも本契約を解除することができる)

(3)「事前通告なし」

(c) XXX has the right to immediately terminate this Agreement without any notice to YYY if YYY commits any of the following events:

(4)「解除までの期間がある場合」

(d) If the delay or non-performance of either party continues for a period of three (3) months due to reasons of force majeure, then either party shall have the right to terminate this Agreement with immediate effect.

(a) (b)は事前通告あり、(c)は、事前通告ありで一方当事者が解除権を持つ、(d)は、不可抗力に理由により、解除までの期間がある例。

契約の解除についても、下記の例にように他の項目に組み入れて記載することも多くあります。

6. サービスの開始日またはサービスの期間

一口にサービスといっても、ざっと思い浮かべただけでも、例えば、各種知的財産のライセンス契約、それらのサブスクリプション契約、賃貸借・リース契約、雇用・人材派遣契約、融資契約、委託契約、保証契約等、様々なサービスがあり、それらの範囲・記載内容も多岐にわたります。ここでは、ライセンス契約を例にとりますが、この例ではサービスの開始日・期間等は、ライセンス契約の許諾条項一部として構成されています。ライセンス契約には物品の販売についての実施権の許諾等もあります。以下の例文は、かなり簡略化した内容です。

The License shall commence on the date when the Application is downloaded into the Customers’ device set forth in this Agreement and will terminate on the earlier of the date the Application is removed from the said device or the date of termination of this Agreement.(本ライセンスは、本契約に規定されている顧客のデバイスにアプリケーションがダウンロードされた日に開始され、アプリケーションが当該デバイスから削除された日または本契約の終了日のいずれか早い日に終了します。)

ABC Company (hereinafter referred to as “Licenser”) shall, during the term of this Agreement, grant the right to XYZ Company (hereinafter referred to as “Licensee”) to use the ABC Trade Marks on the terms and conditions of this Agreement in the Territory set forth herein.

8.  物品・製品の発注、受注、納品など

物品についても、ライセンスがらみの販売店契約・代理店契約、個別の売買契約等とこれもまたその範囲・記載内容が多岐にわたります。ここでは単に物品・製品の発注・納品などの期日にしぼってみました。

The Purchaser shall place purchase orders for the Product set forth in this Agreement at least xxx weeks in advance of the expected shipping date from xxx.(買主は、xxx からの出荷予定日の少なくとも xxx 週間前に、本契約記載されている製品の発注書を発行するものとする)

The Purchaser shall place an order for the Product under this Agreement by specifying product name, quantity, price, place of delivery, the required deliver date and other necessary particulars and an individual trade agreement in respect of the said Product shall be deemed to have been established when the Buyer has accepted the said order.

The Buyer shall place purchase orders set forth in the Exhibit and the Purchaser shall accept the purchase orders through the electronic transmission.(買主は、別紙に記載の注文書を発行し、売主は電子送信を通じて本注文書を受諾する)

The Supplier shall deliver the goods to the place and at the delivery date designated in the purchase order.

The delivery date of the Products shall be the date of delivery of the Products to the place of delivery designated in the respective purchase order.

9. 支払い日についてのいくつかの類型の記述

いくつかの類型について例文を作成しましたが、これ以外にもあります。

(1)所定の支払期日に支払う場合:

The payment shall be made on the due date specified in the Purchase Order.(支払いは注文書に指定の期日に行われる)

All sums due by the Licensee to the Licenser on the date of expiration or termination of this Agreement shall be immediately due and payable and the Licensee shall immediately pay them.

The payment shall be due within 15 days of the date stated on the invoice.

The payment is due net immediately after receipt of the invoice.

(2)支払期日が到来し、支払期日に支払う義務を述べている場合:

The payment for the rent shall be made as and when due and payable.

due and payableは、「支払期日が到来し、支払い義務が生じている」の意味の定型句です。

All payments shall be made in the manner and at the location directed in writing when due and payable.

(3)契約違反等により期限の利益を喪失し、支払期限が到来している場合:

If the Licensee fails to pay its royalty payable by its due date and the Licensor will deem such failure as a breach of this Agreement, its obligations to the Licensor including the payment of such royalty shall be immediately due and payable.

If the Buyer fails to pay its obligations to the Seller when due date, the Seller may request, upon written notice to the Buyer, all sums immediately due and payable.(買主が売主に対する債務の支払いを期日までに行わない場合、売主は書面による買主への通知により、直ちに支払われるべき全額を要求することができる)

In the event that any of the following non-fulfilment of this Agreement occurs, all obligations hereunder shall become immediately due and payable:

(4)何らかの理由で契約が解除され、支払期限が到来した場合:

Upon termination of this Agreement for any reason, all amounts owing hereunder between the parties hereto shall become immediately due and payable.

due、due date、payment due、due and payable等は常套句です。これらの言葉は辞書等にも詳しい説明があります。

このブログは、とりあえず覚えておくと便利というところで、メモ的な感覚で書いています。
当初、1つのブログでしたが、社内から読みにくいとの指摘があり、2回に分けました。
例文に訳文が付いている場合、それらの訳文は暫定訳です。
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参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)
ランダムハウス英和大辞典(小学館)
法律英単語ハンドブック(自由国民社)
英文ビジネス契約書大辞典増補版(日本経済新聞社)
日本法令外国語訳データベースシステム
The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)

英文契約書の単語と用語 日時・期限・期間について(その1)

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契約書翻訳に際して、外すことができない構成要素の1つが「日時・期限・期間」についての事柄です。当然のことですが契約書に限らず「日時・期限・期間」は、人間が生活を営む上でも必須の要素です。今回は、様々な「日時・期限・期間」についての記載例について、作成した例文を通して見てゆきます。いつものとおり「とりあえず知っておくと便利な事柄」ということで簡単な内容ですがまとめてみました。

1. 英文契約書の「日時・期限・期間」の単語・用語

英文契約書にも「日時・期限・期間」について、以下のような様々な項目や記述があります。
「契約の締結日」、「契約の発効日」、「契約の満了日」、「契約の満了後に契約の延長のオプションが適用される場合の記述」、「契約を解除する場合の事前通告期間(事前通告あり、または事前通告なしの場合)」、「サービス契約についてそのサービスの提供に際してのサービスの提供日またはサービスの期間(開始日から終了日)」、「物品の売買契約でその物品の発注期限」、「製品の納品日」など。

2. 契約の締結日

基本的に英文契約書の前文(主にフォーマルな形式)では、例えば以下のような形式が見られます。

This Sales Agreement (hereinafter referred to as “this Agreement”), made and entered into this first day of June, 20xx, by and between:

(1) ABC Corporation, a company organized and existing under the laws of the state of California, and having its principal office at xxx, Los Angeles, California xxxxx, U.S.A. (hereinafter called “ABC”), and

(2) XYZ Company, a company organized and existing under the laws of Japan, and having its principal office at xxx, 1-chome, Kunitachi City, Tokyo 186-0001, Japan (hereinafter called “XYZ”),  これ以外にも様々な様式の記述方法があります。

3.  契約の発効日、契約期間、契約の満了日等

以下に作成した例文以外にも様々な様式の記述方法があります。また、発効日、契約期間・満了日または下記4に記載の契約の延長についての事項が1文に収められていることも多々あります。

This agreement shall take effect on MMDDYY and shall expire on MMDD, 20xx.(本契約は MMDD20XX に発効し、MMDD 20XX に満了する)

This Agreement shall become effective on MMDD, 20xx, and shall remain in full force for the period of xxxx years from MMDD, 20xx, unless sooner terminated in accordance with terms hereof.(本契約は、20xx 年 MMDD に発効し、本契約の条件に従って中途解約される場合を除き、20xx 年 MMDD から xxxx 年の期間有効である。)

This Agreement shall take effect on MMDD, 20xx, and shall remain in full force until MMDDYY、unless xxxxxxxxxxx

This Agreement shall commence on MMDD, 20xx, and shall continue to and through MMDDYY.

This Agreement shall come to in effect on MMDD, 20xx and shall remain in effect for three (3) years unless sooner terminated pursuant to the terms hereof.

This Agreement shall be effective from the 1st of January, 20xx and remain in full force for the period of xx years from that date.

契約の発効日、契約期間等の記載にかかわらず「remain in full force」は、定型句として、例えば、「This legal obligation shall remain in full force and effect at all times.」などと良く目にします。「有効である」という意味ですが、文脈や訳者により訳し方は、様々です。

「発効する」の表現は、例文のtake effect、become effectiveのほか、例えばxxx shall commence on MMDDYY、comes into force on MMDDYY等、様々です。

4. 契約の更新または延長

これについては、自動更新、その都度の協議による更新、契約のある条件に該当した場合、ある条件を達成した場合を条件とする更新、自動更新と協議の組み合わせによる更新、一方の当事者の権利による更新によるなどがあり、以下に作成した例文以外にも様々な種類があります。

Term of this Agreement shall be two (2) year from the effective date hereof and thereafter shall be automatically extended for successive period of one (1) year each, unless either party shall have otherwise notified to other party.(本契約の期間は、本契約の発効日から 2 年とし、その後、いずれかの当事者が相手方に別段の通知をする場合を除き、その後、1年ずつ自動的に延長されます)

If neither party notify the other party of any declaration of intention at least one (1) month prior to the expiration of the term of this Agreement, it shall be automatically extended for one (1) year and thereafter the same shall be applied.(いずれの当事者も、本契約の期間が終了する少なくとも1か月前までに相手方になんらの意思表示も行わない場合、本契約は自動的に1年間延長され、その後も同様とする)

Subject to the provisions of Article XX (Termination) of this Agreement, the term of this Agreement shall commence on the effective date and shall remain in effect for XX years (the “Term”) unless sooner terminated pursuant to the terms of this Agreement or renewed pursuant to mutual agreement of the parties hereof.

This Agreement shall valid for the period of xxx year after the effective date and shall be automatically extended on for successive periods of one (1) year each, unless either party shall have otherwise notified to other party. 

このブログは、とりあえず覚えておくと便利というところで、メモ的な感覚で書いています。

当初、1つのブログでしたが、社内から読みにくいとの指摘があり、2回に分けました。

例文に訳文が付いている場合、それらの訳文は暫定訳です。本ブログの内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。

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参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)
ランダムハウス英和大辞典(小学館)
法律英単語ハンドブック(自由国民社)
英文ビジネス契約書大辞典増補版(日本経済新聞社)
The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)