英文契約書の用語、構文(その21) 「文頭の否定」

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英文契約書における文頭の否定

前回、「In no event shall」で始まる文章について見てみました(「In no event shall」に導かれるその後の文章部分は、[~でない]の意味になる)。

例:In no event shall someone be liable for ……………(いかなる場合も(人は)…………に関して責めを負わない。)

「In no event shall」のほかにも、文章の文頭に否定を意味する語句が置かれると、その語句に導かれる文章の内容は、否定文になります。英文契約書に限らず、英文において一般的に見られることですが、今回は、英文契約書でよく見かける例に関して、思いついたもののいくつかについて、契約書翻訳の視点から作成した例文を通して見てみます。

「Nothing~

Nothing in this Agreement shall be construed as creating ……….

(本契約のいかなる内容も、……….を生じると解釈されることはない。)

Nothing in this Agreement shall require ……….

(本契約のいかなる内容も、……….を求めないものとする。)

None of ~

None of the parties may assign or transfer any of its or their rights or obligations under this Agreement.

(いずれの当事者も、本契約に基づく当事者、もしくは各当事者の権利と義務を、譲渡または移転することはできない。)

Neither~nor

Neither we nor you will be prevented from disclosing confidential information;

「当社と貴社のいずれも、以下の機密情報の開示を妨げられない。」

No someone shall~

No party shall be responsible for ~

(いかなる当事者も~に責任を負わない)」

In no case ~

In no case may this agreement be transferred by the Company

(会社は、(決して)本契約を譲渡してはならない。)

辞書を見ると、例えば「In no case ~ 」「In no way~」いずれも「決して~しない」との意味が書いてあります。繰り返しになりますが、これらの用語が文頭に置かれると、通常、その後に続く文章は、肯定文を記載します。ただし、文章全体としては、否定文になります。このような形式で文章を作成すると、文体として、いわば締まりのある文章に仕上がりますが(あくまで個人的感想です。)、自分でこれらの表現を使って文章を起草する場合、なれないうちは注意が必要かもしれません。実際、ごくまれですが、多くの英文契約書に接する機会が多いためか、これらの表現を使いイティブが起草した文章で、これらの用語が文頭に置かれているにもかかわらず、その後に続く文章を否定文で書いているというような例も、経験しています。

余談ですが、掲示などの表現で、「No changes can be made to the tickets.」の様に表現することがありますが、「We can make no changes~」の様に、言い切ってしまうような感じでなく、No changes can be made~」の様に、「チケットの変更はできないことになっています」表現を使い、「決まりですので、ご了承の程、お願いします。」というニュアンスにします。

口語でも、「No xxx, No life」と言うように、XXXがないと生きていけないなどの表現もあります。絶対、何か欲しいとき、何かしてほしいときなどに使用します。

例えば、音楽好きなら、「No music, No life.」 お菓子が好きなら、「No cookies, No life.」、「No chocolates, No life.」

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

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