英文契約書の単語・用語 文頭の否定(まとめ他)

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契約書翻訳で良く目にすることがある、文章の冒頭におかれている否定形についてです、これは大分以前に(10年ほど前)何回かに分けて投稿した「英文契約書における文頭の否定」をまとめたものです。以前にも書いたことがありますが、英文契約書を見ると、定義条項が設定されており、重要な語句に一貫した意味を与えています。また定義条項に加え、さらに各条項に、文言が定義されている場合もあります。ただし中には慣れていないと「混乱」するような書き方の文章があります。その代表例の1つが文章の冒頭部分が否定文から始まるパターンです。目にすることが多い幾つかのパターンについて、契約書翻訳の視点から簡単な例文を作成してみました。

1. 「In no event shallIn no event will

In no event shall ABC Corporation be liable for any damages caused by or in relation to this Service. (いかなる場合も、ABC Corporationは、「サービス」に起因する、または関連する損害賠償に対して責任を負わない。)

「In no event shall」に導かれる長文では、熟読しないと、意味を取り違えるような書き方がされている文章もあります。

「In no event shall」に導かれる以下の例文を作成してみました。実務で目にする内容と比べると相当簡単なものです。

In no event shall」:

(A) ABC Corporation be liable for any damages caused by or in relation to this Agreement, (B) ABC Corporation’s liability in respect of any and all claims arising from or related to this Agreement exceed 1,000,000 Yen; and

(C) ABC Corporation’s liability for any claim extend beyond the period hereof.

文頭の文言「In no event shall」は、文章全体を否定するため、以下のように「肯定文」で書かれている文章 (A)、(B)、(C)の部分は、内容的に「否定文」になります。

(A)は、文面上では、責任を負う(be liable for):否定されているから→賠償責任を負わない。

(B)は、文面では、責任は百万円を超える(exceed 1,000,000 Yen):否定されているから→百万円を超えない。

(C)は、文面では、責任は、契約期間後も延長(extend beyond the period hereof):否定されているから→延長されない。

上記のような書き方をしなくても、自分で起草する場合、例えば、Aの文章の場合、

「ABC Corporation shall not be liable for any damages caused by or in relation to this Agreement.」 とすれば、わかりやすく、簡単です。(複数の項目を列挙するには、「In no event shall」:を使うのが便利かもしれません。)

2. 「Nothing~」

このタイプはかなり目にすることが多いフレーズです。

使い勝手が良いので和文英訳の際に良くお世話になっています。

・Nothing in this Agreement shall require ……….

(本契約のいかなる内容も、………を求めないものとする。)

・Nothing in this Agreement shall be construed as creating ……….

(本契約のいかなる内容も、………を生じると解釈されることはない。)

Nothing in this Agreement shall be construed to create any other relationship between the parties hereof.

3.「None of ~」

None of the parties hereto may assign or transfer any of its or their rights or obligations under this Agreement.(いずれの当事者も、本契約に基づく当事者、もしくは各当事者の権利と義務を、譲渡または移転することはできない。)

この例文もNone ofに導かれるその後の文章部分は、「~でない」の意味となります。この例文の中で「assign or transfer」は、これも良く使われるフレーズです。「譲渡または移転」としましたが、「assign or transfer」2語で「譲渡」とする場合もあります。また、「transfer」を「譲渡」とすることもあります。「assign or transfer」は契約譲渡制限に関する条項などに良く使われます。

上記の例文では、両当事者に対して契約譲渡制限が設けられていますが、一方のみが契約譲渡制限の対象となる場合もあります。

The Contractor shall not assign or transfer the whole or ay part of this Agreement without a prior written consent of the Customer. これも定番の文章です。

4. 「Neither」、「Neither~nor

Neither party has the authority to bind the other to any third party.(いずれの当事者も、第三者に対して相手方を拘束する権限を有しない。)

Neither the Licensor nor Licensee will be prevented from disclosing confidential information listed below; (ライセンスサーおよびライセンシーのいずれも、以下の機密情報を開示することを妨げられない)

5. 「No someone shall~」(いかなる(いずれの)当事者も~しない)」

No party shall be responsible for ~;No party shall be obliged to(いかなる(いずれの)当事者も~に責任を負わない)」

No party shall be obliged to provide further financial support to an excessive cost of the unexpected additional works by the contractor.

6. 「In no case ~; In no way ~ 」(いかなる場合も)…….決して~しない)

In no case may this agreement be transferred to any third party by the Contractor(いかなる場合も請負業者は、(決して)本契約を第三者に譲渡してはならない。)

いずれのケースもこれらの用語が文頭に置かれると、通常、その後に続く文章は、肯定文を記載します。ただし、文章全体としては、否定文になります。

日常的な例でもこのような表現は多く見られ、例えば掲示などの表現で、「No changes can be made to the tickets.」の様に表現することがありますが、「We can make no changes~」の様に、言い切ってしまうような感じでなく、No changes can be made~」の様に、「チケットの変更はできないことになっています」表現を使い、「決まりですので、ご了承の程、お願いします。」というニュアンスになります。

例文はその時の思いついた内容をそのまま記載しています。説明も含め内容を参考にされる場合はご自身の責任でお願いします。

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参考図書:
研究社新英和辞典(研究社)
ランダムハウス英和辞典(小学館)
カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

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