英文契約書の用語・単語-単語編「A」まとめと追記(その1)

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契約書翻訳の視点から、以前、ブログ「英文契約書の用語(単語編)」で特に英文契約書で良く使用される単語をアルファベット順にとりあげました。今回、その中から(1)-改めて特に知っておくと便利な言葉に絞った言葉(あくまで主観的な意見です)、(2)-以前の記事ではとりあげなかった事柄などについてみてみました。例文は当方で作成したもので、訳文は暫定訳です(法律文を除く)。

・acceleration:期限の利益の喪失、弁済期日の繰り上げ(繰上げ弁済)。

Forfeiture of the Benefit of Time for Failure to Pay Interest on Bonds(社債の利息の支払等を怠ったことによる期限の利益の喪失)(会社法

・accept:受諾する、受け入れる、収受する、受理する、譲り受ける

The Company shall entrust the services provided for in this Agreement to the Contractor and the Contractor shall accept it.

・acceptance:受諾、受理、承諾、引き受け

acceptance of debt(債務の引き受け)、acceptance of performance: 弁済受領

・accord:合意、協定、代物弁済

・accord and satisfaction: 合意、協定、代物弁済

・account:口座、会計、計算書、勘定、bank account(銀行口座)、account receivable(売掛債権)

・accounting:会計、accounting book: 会計帳簿

・actual:現実の、実際の

他の語との組み合わせで成句を形成します。actual possession(直接占有)、actual proof(実証)、actual harm(実害)

・addendum:別紙、添付書類、附属文書

同様な意味を持つ単語として「Addendum」、「Annex」、「Appendix」、「Attachment」、「Exhibit」、「Rider」、「Schedule」などがあります。いずれも、いわゆる「別紙」、「添付書類」、「付属書類」、「付属文書」などの意味を表す言葉です。

多くの場合、ある事柄を契約書本文に書くと煩雑になる場合、商品やサービス等の価格表など、将来的に変更される可能性のあるものその他様々な理由で使用されます。

これらは、名称がたとえ別紙/付属文書となっていても「契約書の一部を構成し、契約書と不可分一体」のものです。そのため、英文契約書中の「最終性条項または完全なる合意(Entire Agreement)」と称される条項において、例えば、以下に作成した例文のように「別紙」、「付属文書」が、契約の一部を構成することを確認することもあります。

All Attachments shall be deemed a part of this Agreement.(すべての別紙は、本契約書の一部とみなす。)

The Exhibits attached to this Agreement shall be made an integral part of this Agreement.(本契約書に添付の付属文書は、本契約の不可分の一部とする。)

当然、これらの内容を変更するには、例えば、以下のような内容を記載することがあります。
The terms and conditions in the addendums, exhibits and schedules attached hereto are the entire agreement between ABC Company and XYZ Corporation with respect to the subject matter hereof.

組織または政府機関等によっては、内規、法律によってどの言葉をどのように使うかが定められている場合もあります。

その他、「別紙」、「付属文書」ではありませんが、契約の最終的な締結の前にその過程において当事者間で合意した事項を記載した文書として(LOI(Letter of Intent)とMOU(Memorandum of Understanding)があります。なを、これらが契約の一部を構成することなるか否か(法的拘束力の有無)については専門家に判断ゆだねられる部分です。

・addressee:受信人

・adequate:十分な、適切な

他の語との組み合わせで成句を形成します。adequate cause(正当な理由)、adequate remedy(適切な救済(策))

・adjudication:裁定、裁判、adjudication of an appellate court(上訴の裁判)、
adjudication of bankruptcy(破産宣告)

・accusation:告発

・acknowledgment:承認、認知。 動詞は、acknowledge。The User acknowledges that ABC Corporation is the sole owner of all intellectual property rights

・acquisition:取得、獲得。
acquisition of share option(新株予約権の取得)、acquisition or loss of property rights (物権の得喪)、acquisition or loss of rights(権利の得喪)、acquisition value (取得価額)

このほかにも、他の語との組み合わせでさまざまな成句を形成します。

・acquit:無罪を言い渡す、(責任等)を免除する、acquit oneselfで、責任を履行する

「(責任等)を免除する」に使われる言葉は、ほかに「release」とか「exempt」などがあり、和文英訳では、個人的にはこの2つを使うのが便利です。

This provision shall not release the Contractor’s obligations under this Agreement.

The Lessor shall be exempted from the responsibility for small repairs required during the tenancy, the Lessee such perform such repairs at his/her own cost.

・acquittance:債務消滅、債務消滅証書

・act:(個々の)行為、行為、法律、判決書

・accrue:発生する、(権利、利息等が)生じる

Interest on this loan accrues at a rate of 5.0% per annum. (本件貸付の利息は年率5.0%です。)accrued expenses(未払費用)、accrued income(未収収益)など、accrued xxxの形式で使われることも多くあります。accrueの名詞形accrualも多く使われます。例:accrual basis‐発生ベース。

・action:行動、訴訟、動作、行為の過程全体、action for an objection: 異議の訴え、action for damages: 損害賠償請求訴訟、action in person: 対人訴訟、action on title: 本権の訴え、civil action(民事訴訟)(訴訟を意味する単語としてほかに「suit」があります。米国を例にとると、かつて「action」はコモンロー上の訴訟、「suit」はエクィティ上の訴訟とされていたようです。1938年以降、手続き上は、一応、統合されているようです。実際の手続き、運用、両者の相違等については、詳細は専門書等をご覧ください。なを、コモンロー上の救済が適切でない場合に限り、エクィティ上の権利を適用するとされています。その他訴訟を意味する単語には、これらのほかlitigation, lawsuitなどがあります。)

If a necessary of lawsuit arises regarding this Agreement, it shall be submitted to the Tokyo District Court or the Tokyo Summary Court as the exclusive agreed jurisdictional court for the first instance. (本契約に関し、訴訟の必要が生じた場合には、東京地方裁判所又は東京簡易裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。)

 訴訟判決remedy
Common Lawaction at law ⇒ actionjudgement対物的
財産差し押さえ
損害賠償
Equitysuit at equity ⇒ suitdecree対人的 (Equity act in personam)
罰金/禁固刑
特定履行(specific performance)
差止命令(injunction)

上記は、同じ文言(訴訟、判決、その他)がCommon LawとEquityで異なる場合について文言についてのみおおざっぱに記載してあります。詳細は、専門書等を参照して下さい。

・adjust:清算する、調整する、調停する

・administration:行政、管理、遺産管理

このほかにも、さまざまの意味があります。また、他の語を合わさって以下のような熟語を作ります。

administrative action(行政処分、行政行為)、administrative agency; administrative organ(行政機関)、administrative authority(職務権限、行政権)、administrative disposition(行政処分)、administrative guidance(行政指導)、administrative law(行政法)、administrative litigation(行政訴訟)、administrative measures(行政処分)、administrative power(行政権)

・administrator:遺産管理人、管財人、管理者、行政官等など。

・admission:告白、自認、加入承認、admission of claim(請求の認諾)

*ここは「admission」の項目ですが「claim」は、いろいろな意味があり、いろいろな用い方をされる注意すべき単語です。例えば、特許関連では、「クレーム」、「特許請求の範囲」、「請求項」等とされます。「claim」の類語は、「demand」。いずれも契約書では良く目にする単語です。

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参考図書:
カレッジライトハウス英和辞典(研究社)
英和大辞典(研究社)
ビジネス法律英語辞典 日経文庫
アメリカの法律と歴史 増補版 自由国民社
日本法令外国語訳データベースシステム

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