契約書翻訳の観点から見た英文契約書でよく見受けられる同義語の併記について、前回、*「Norman Conquest(ノルマン征服)」の視点から見てみました。起源の異なる同義語が併記については、前回の「英文契約書の単語・用語 同義語の併記について(その1)Norman Conquest(ノルマン征服)による影響」に簡単な記載があります。今回も同じ視点から引き続き見てみます。
*「1066年にノルマン人が初めてイングランドを征服し、ウィリアムI世(征服王 )となったこと。 この後上流階級 の言葉はフランス語になり、多くのフランス語が英語に流入することになった。」
- recognize and acknowledgeについて
to recognize and acknowledge(「認める」)も「同義語の併記として英文契約書で使用された表現」で契約書に多々見られる言い回しです。
RecognizeとAcknowledgeの使い分けとニュアンスの違いを考えてみます。
「acknowledge」は、事実を「認める」ことを意味し、物事または何かの真実や存在を受け入れ、認め、または認識することであり、acknowledgeに続く文書を事実として自ら認めることを意味します。
同様に、「recognize」は、見聞した、または以経験したことを知覚し、何かが合法的、真実、または重要であることを受け入れることであり、recognizeに続く文章を事実として自ら認めることを意味します。
以下に例文を作成してみました。
You recognize and acknowledge that you only will be entitled to receive payments from xxx under this Agreement.「本契約において、貴社のみが、xxxからの支払いを受領する権利を付与されていることを、貴社は、承認し、また認める。」
You recognize and acknowledge that all payments made by Company A to you, any failure by Company A to make such payments and/or any disputes over such payments will be governed exclusively by this Agreement.「すべての支払いが、貴社に対しCompany Aにより行われる場合、Company Aによる支払いの不履行、また/あるいは、その支払いに対する紛争は、本契約により排他的に管理される。」
「acknowledge」の場合は、事実を自ら認めたという意味の文章になるのに対し、「recognize」は、起こったことが自分にとって良いか悪いかに関わらず事実を「事実として認め」、事実だと「理解・納得する」というニュアンスをもっています。
2.「認める」の英単語は、この他にもadmit, accept, confess, concedeなどがあります。
「admit」は、物事や真実を積極的に認めるというよりも、「不本意ながら認める」、「否定しない」ことを意味する動詞です。
admitは、concedeと同様に、自分にとって不利益なことや好ましくないことをしぶしぶ「認める」ことを表現する場合によく使われます。
She admitted that he she made a mistake. 彼女は間違ったことを認めた。
「accept」は、基本的には「受け入れる」ことを意味する動詞です。
They accepted his explanation. (彼らは彼の説明を信じた)、She accepted that she had no money.(彼女はお金がないことを認めた)のように、現在の現状が真実であると「認める」という表現で使うこともできます。
「confess」は、元々、自分が犯した犯罪や過ちを正式に「告白する」という意味の動詞ですが、罪や過ちを「認める」という意味で使うこともできます。
ちなみに、あまり見かけることはありませんが、契約書でも「acknowledge and confess that」という言い回しを使うことがあります。
「concede」は、多くの場合、しぶしぶ「認める」ことを意味する硬い表現で、不本意ながら何かが真実であることを認める意味になります。
その例として、
concede a race
勝負に負けて、[自分の敗北・相手の勝利]を認める
concede an election
選挙で自分の負け[自分の敗北・相手の勝利]を認める
上記の例の様に、しぶしぶ認める意味になります。まず、契約書では使いません。
例文は契約書翻訳の観点から当方にて作成したものですが、内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。
参考図書:
The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)
Merriam-Webster (Webster)他