英文契約書の単語・用語、including, but not limited to、including without limitation等の短い説明

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契約書翻訳に携わっていると、英文契約書でお目にかかる定番のフレーズとして「including, but not limited to」、「including without limitation」があります。いずれも「~を含み、~に限定されない」という意味です。

例えば、ある事柄に対して、相手方に対して責任を負わない、もしくは責任を負わせる、または当事者双方が責任を負わない場合等の規定について、適用する事例を列挙する場合に使われます。相手方に対して責任を負わない、負わせる事柄を列挙するわけですが、列挙した以外の事象が発生した場合、例えばそれが列挙した事例に類似する事柄でも、時としてその規定が適用されないおそれもあります。なぜかというところに関する英米法の説明は、ここでは行いませんが、例えば、相手方に対して責任を負わない-自己に対する免責を例にとれば、その条項に免責適用事例が「include」されるだけでは、不十分で「but not limited to」を追加することで、適用事例を「include」しただけで、ある意味、制限的列挙を回避するといわれますが、「but not limited to」が入っていたとしても、実際には当該条項について紛争が生じることもあります。

いずれにしても、ここではとりあえず覚えておくと便利でという視点で、作成した例文を通して契約書翻訳の視点から簡単に見てゆきます。

1.  不可抗力条項で使用される例

「including, but not limited to」、「including without limitation」が使用される代表的な例と1つとして不可抗力条項があります。ここでは、以前、「不可抗力条項」を取り上げた際に作成した例文を振り返ってみてみます。

Force Majeure means any event caused by occurrences beyond a party’s reasonable control, including, but not limited to, acts of God, fire or flood, earthquake, war, terrorism, labor dispute, pandemic, system malfunction, governmental regulations, policies or actions enacted or taken subsequent to execution of this Agreement, or any labor, telecommunications or other utility shortage, outage or curtailment.

(不可抗力とは、天災、火災もしくは洪水、地震、戦争、テロ、労働争議、流行病、システムの機能不良、本契約の締結後に制定された、もしくは講じられた政府の規制、方針もしくは法的措置、または労働、通信もしくは他のガス電気水道等の公共事業の供給不足、供給停止もしくは供給の削減を含み、これらに限定されない、当事者の合理的な管理能力を超えて発生した事象を意味する。)

この例では、不可抗力事由を列挙しながら、「including, but not limited to,」の構文を列挙した事由の前に置いて、列挙した事由に限定されないことを明示的に示しています。

2. その他の例

The Confidential Information shall mean any information relating to the marketing plans and business plans or methods or any other confidential information furnished by the Disclosing Party to the Receiving Party including written materials and oral discussions relating to the foregoing, but not limited to marketing plans and technical information, know-how, documentation, systems specifications, application information, quantity control specifications, equipment specifications, database information, user data, test data, financial forecasts, business methods, customers or current or prospective activities of Disclosing Party.(「機密情報」とは、開示当事者が受領当事者に提供したマーケッティング計画および事業計画もしくはそれらの方法、またはその他の機密情報であり、上記に記載の文献資料もしくは口頭による協議を含むが、開示当事者のマーケティング計画および技術情報、ノウハウ、文書、システム仕様、アプリケーション情報、数量管理仕様、機器仕様、データベース情報、ユーザーデータ、テストデータ、財務予測、ビジネス方法、顧客または現在または将来の活動に限定されないものとする。

Residuals means information in non-tangible form; which may be retained by persons who have had access to the Confidential Information, including ideas, concepts, know-how or techniques contained therein, but not limited thereto. (残存記憶情報(残滓情報)とは、無形の形態による情報で、これらは、機密情報に含まれるアイデア、概念、ノウハウ、または技術を含み、これらに限定されない機密情報にアクセスした人物が保持する可能性があるものを意味する。)

この他にも様々な場面で使用されます。

「including, but not limited to」、「including without limitation」の表現が用いられるは、英米法に特有な概念、「consideration:「約因」または時として「対価」」が記載される英米法による契約書にみられるもので、当然ですが、依頼される日本語から英語の契約書では、ほとんど目にすること経験上はありません(個人の感想)。

英米法の概念については、専門書等を参照してください。最近は、様々な優れた文献が提供されています。内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

英文契約書の書き方(日経文庫)

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