契約書翻訳

英文契約書の用語・単語  Anti-Bribery-贈収賄の禁止(わいろの防止)とResiduals-残存記憶情報(残滓情報)に関する条項

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国際ビジネスを行う上で英文契約書の理解は必須の要素の一つです。それを身に着けるにはそれなりの時間と努力が必要です。以前に比べ、最近はこの分野についてかなり充実した内容が記載されている解説書や参考書も多く見受けられます。英文契約書についての知識を体系的に身に着けるには、それらの解説書や参考書に取り組まれることが英文契約書の理解への近道だと思います。

本ブログは、英文契約書についての体系的な内容ではなく、経験的にとりあえず覚えておいて損はない英文契約書で使用される用語、単語を思いつくままにとりあげています。

今回は、英文契約書の条項、その中でここ10年ほどに良く見かけるようになったものや、以前から気になっていたものを、英文契約書翻訳の視点からいくつか思いつくままにとりあげてみます。

1. Anti-Bribery-贈収賄の禁止(わいろの防止

「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」が1999年2月に発効し、不正競争防止法の改正により実施されていますが、この条約は、日本の他、43ヵ国が加盟し、その関係からか「Anti-Bribery」という条項が記載される契約書翻訳が回ってきます。

例として、以下に簡単な例文を作成してみました。

Either party hereto agrees that it will conduct its business in compliance with all applicable local and foreign anti-bribery laws. (本契約のいずれの当事者も、適用されるすべての現地および外国の贈収賄防止法に準拠して事業を行うことに同意する。)

Distributor shall comply fully with all laws applicable to the sale and distribution of the Products, including but not limited to the United States Foreign Corrupt Practices Act, local anti-corruption laws and laws prohibiting the payment of commercial or private bribes.(「販売店」は合衆国海外腐敗行為防止法および地域の腐敗防止法ならびに商業もしくは個人的わいろを禁止する法律を含み、これらに限定されることなく、「製品」の販売と流通に適用されるすべての法律を完全に順守する。)

実際には当事者・関係者間の賄賂の支払に相当する、関係する行為について詳細に規定しているケースが多く見られます。これらの内容については、専門の解説書や参考書を参照することをお勧めします。

  1. Residuals-残存記憶情報(残滓情報)

一般に、機密保持契約において開示者の機密情報にアクセスした受領者の記憶に残る開示者の機密情報を意味します。これは以前からある事柄で、「機密保持条項」の一部として取り上げられるほか、Residualsとして独立した項目として記載される場合もあります。大事な事柄ですが、この内容が記載されているケースは以外と少ないようです。契約書によっては、この内容が事細かに記載されている場合あります。なを、以下に作成した例文は、「Residuals-残存記憶情報(残滓情報)」について簡単にまとめたものです。

Residuals” means the information in intangible form, that is retained in memory by persons who have had access to the Confidential Information, including without limitation ideas, concepts, know-how, or techniques contained in Confidential Information.(「残存記憶情報」とは、無形の様態における情報で、機密情報にアクセスした人物の記憶に保持されるものを意味し、機密情報に含まれる発案、概念、ノウハウまたは技術を含み、これらに限定されないものとする)

この条項は、基本的には、受領者の記憶に保持された機密情報を,受領者が使用することを認めるものですが、当然、開示者にとっては、これはリスクとなるわけで、経験的にはその使用について開示者の許可を必要とすると規定する場合が一般的なようです。

色々なパターンがありますが、「自由に使用できる場合」、「自由に使用できると言いつつも許可が必要な場合」の例文を作成してみました。

The Recipient may use and disclose the Residuals for any purpose without paying royalties and without any other obligations or restrictions.(受領者は、実施料を支払うことなく、またその他のいかなる義務および制限なしに、いかなる目的に関しても「残存記憶情報」を使用し、開示することができる)

The Recipient may use the Residuals for any purpose without any restrictions; provided, however, that the Recipient may not disclose it except as expressly permitted pursuant to the terms of this Agreement. (受領者は、いかなる制限もなしにいかなる目的に関しても「残存記憶情報」を使用できる。ただし、受領者は、本契約の条件に従って明示的に許可されている場合を除き、それを開示することはできない)

Residualsについての考え方は、業界により異なるようです。ブログで扱うには微妙な問題ですが、以前から興味があったので簡単に取り上げてみました。

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)
ランダムハウス英和大辞典(小学館)
カレッジライトハウス和英辞典(研究社)
英文契約書の読み方(日経文庫)他

 

 

 

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