英文契約書(法律文書)特有の用語・言い回し、いわゆる、リーガルジャーゴン(Legal Jargon)について簡単に述べてきましたが、今回は、慣用句的なものについて簡単に触れてみます。なを、近年、この分野については、優れた専門書も見受けられます。体系的な知識を得たい場合は、専門書を一読されるのが良いと思います。ここでは契約書翻訳の観点から概説します。
今回、例として挙げる「including, but not limited to / include, but is not limited to」または「including without limitation」、「subject to」、「due and payable」、「indemnity hold harmless」 は、英文契約書中でも慣用句的に多く使用されるもののいくつかです。以下に、いくつかの例文を作成してみました。
a.「including, but not limited to / include, but is not limited to」または「including without limitation /including, without limitation 」他
これらは、「~を含み、これらに限定されない」または単に「~等」などと訳されます(訳者により、相違しますが)。
いずれも、ある事柄が適用される状況を例示的に列挙する文章において、例示的に列挙した事例以外の状況が発生した場合に、ある事柄の適用を、列挙した事例のみに限定されることを防ぐ目的です。 例:Confidential information may include, but is not limited to; (i) ABC, (ii) EFG, (iii)HIJ and (iv) KLM. (機密情報とは、以下を含み、これらに限定されないものとする。= 機密情報とは、ABC、EFG、HIJおよびKLMを含み、これらに限定されないものとする。)
例: The Company shall comply with all applicable laws, rules, statutes, ordinances, and regulations, including without limitation those dealing with consumer transactions.
b. 「subject to」
通常、「~を条件とする」ですが、文章の冒頭、途中、最後で使用します。
いろいろな使い方ができる反面、(日本語にする場合)訳しにくいことがあります。辞書を見るとわかるように「~を条件とする」の他に「~より」、「~に従い」その他、いろいろな言い回しがあります。
例:Subject to the provisions of Section XX of this Agreement, the term of this Agreement shall commence on the Effective Date hereof. (本契約の第21条の条項に従い、本契約の期間は、「発効日」から開始する。) 例:Subject to the termination provisions of Article XX of this Agreement, the term of this Agreement shall commence on the Effective Date and shall remain in effect for three (3) years. (本契約の第XX条の解除規定により、本契約の期間は、「発効日」から開始し、3年間引き続き有効とする。)
例:Renewal of this Agreement shall be subjected to the written agreement of parties hereto. (本契約の更新は、両当事者間の書面による合意を条件とする。)
例:if the obligor has become subject to the ruling of the commencement of bankruptcy procedures, (債務者が破産手続開始の決定を受けた場合、) この場合の「subject to」は、~にさらされている、~に処されている、~を科されている等の用法で、「subject to criminal proceedings」(刑事訴訟を受けている)等、いろいろな場面でつかわれます。
以上、「リーガルジャーゴンの慣用的表現」について簡単に見てみました。なを、 冒頭に記した「due and payable」、「indemnity hold harmless」 につていは、あらためて見て行きたいとおもいます。
参考図書:
法律用語辞典(有斐閣)、英和大辞典(研究社) コンパクト六法(岩波書店)、Trend (小
学館)、Oxford Dictionary of English、Collins Consise Dictionary、英文契約書の書き
方 (日経文庫)、 ビジネス法律英語辞典 (日経文庫)、英文契約書の書き方(日経文庫)他