さまざまな契約:Evergreen Contract(自動更新契約)について

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今まで、実務においてかなりの種類と量の英文契約書の翻訳を行ってきましたが、契約書には様々な名称の契約があります。それらを少しずつ見てみたいと思います。

今回取り上げるのは、英契約書のEvergreen Contract(自動更新契約)です。契約書翻訳の視点から概説します。

  1. Evergreen Contractとは

Evergreen Contractとは、日本語で言うと「自動更新契約」の意。evergreenの本来の意味は、常緑樹、常緑植物の意味です。常に青々とした木々・植物から転じて「いつまでも衰えない、何時までも新鮮な」という意味に使われています。

さて、「Evergreen Contract」は、「いつまでも衰えない、何時までも新鮮な」である契約なのでしょうか?evergreen contractの意味を調べると「自動更新契約」となっています。

「Evergreen Contract」だから木々・植物を扱う「植栽管理契約」のように思われますが、これは、契約期間に関する条項中の「自動的に更新」に相当する部分です。大概の場合、契約を締結させてあげる立場の当事者(当事者間の力関係が上)は、自動更新に関するオプション‐「更新の時期」、「契約を解除しない場合の自動更新の可能性」、「オプションを行使しない場合の契約の終了」、「当事者の更新権限の有無」、「自動更新のデッドライン(何か月前までに自動更新の延長の申し入れを行う)」、「更新できる契約期間の長さ」等に関して、契約の締結を希望する側の当事者(当事者間の力関係が下)に対して優位な立場にあります。

もちろん、両当事者間で新しく契約書を起草する場合、自動更新のオプションを両当事者の間で決める場合もあります。しかし多くの場合は、契約を締結させてあげる立場の当事者がすでに決めている自動更新条項に従うことが多いようです。この部分の例を以下に作成した例文で見てみます。

2.自動更新条項の例

Term of this Agreement shall be one (1) year from the effective date of this Agreement and it shall be automatically extended for successive period of one (1) year, unless either party shall have otherwise notified to other party.

(本契約の期間は、本契約の発効日より満一ケ年とし、いずれかの当事者が相手方に別段に通知する場合を除き、本契約は、1年の連続期間に自動的に延長されるものとする。)

If neither party one (1) month before the end of the period gives a written notice of termination to the other party, the term of the agreement shall be extended for a new one-year period.

(期間の終了する1ヶ月前に、いずれの当事者も、相手方に対し書面による解除通知を提供しない場合、本契約の期間は、新たに1年間の期間延長されるものとする。)

上記の条文を入れることにより、契約は、いずれかの当事者が解除したい旨の通知を行わない限り、契約の期間が延長され、evergreen contractとなります。緑(良好な契約関係)のままでいつまでも変わらない「常緑樹」のように、契約書が、Evergreenである契約の関係を築きたいものです。それには、当事者双方が契約内容を順守して、契約を大切に履行して行こうという日々の取組も必要になります。

ちなみに、常緑樹は、英語では、「evergreen tree」と言いますが、エバーグリーンという言葉は、結構普段使われているなじみがある言葉です。では、落葉樹はと言うと、「deciduous tree」ということになります。皆様は、すでにご存じだと思いますが…

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

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