英文契約書において経験上、よく目にしたり、よく使われたり、または知っておいて損はないと思われる単語と用語について、契約書翻訳の観点から簡単な例文を作成してその用例(一部ですが)を見てみます。今回は、「delay」(遅延、遅滞)について簡単に見てみます。
delay | 遅延、遅滞 |
「delay」について
1. 「delay」とは 日常語でも、しばしば受け身で使われ、「遅れる」の意味を表します。例えば、The Shinkansen was delayed by the snow. (雪で新幹線が遅れた。)名詞で使われる場合は、例えば、The delay in the arrival of the train caused a lot of confusion(列車の遅延は多くの混乱を生んだ。) 契約書の場合、「delay=遅れる」は、多くの場合、金銭の支払いが遅れた、サービスの提供が遅れた、商品が納期に納品されない等の状況で使われています。いわゆる債務不履行(default)に関する条文等でもよく見かけます。 2. 「delay」の使用の例 民法などでも債務不履行の一つの様態である「履行遅滞」などに使われています。「履行期と履行遅滞」(Time for Performance and Delay in Performance) (民法420条)、その他の法律でも、例えば「下請代金支払遅延等防止法」(Act against Delay in Payment of Subcontract Proceeds, Etc. to Subcontractors)等として使われています。 3. 英文契約書における例 英文契約書の場合の例文を参考までに1例、作ってみました。 If Party A fails to pay a penalty by operation of law, Party A shall pay the amount of the additional penalty in addition to such penalty due to such delay in the payment. (当事者Aが法の適用によるペナルティの支払を履行しない場合、当事者Aは、当該支払遅延に起因する追加的ペナルティを当該ペナルティに加えて支払う) これは、支払の遅延についての架空の状況ですが、例えば、自然災害等の起因する「不可効力:Force Majeure」についての条項などで使われることもある単語です。 以前、「英文契約書の用語、構文(その9)「Force Majeure」で触れたことがあります。ただし、この例文では、「delay」を使っていなかったので、不可効力について「delay」を使った簡単な例文を作成してみました。 Any force majeure delay or non-performance as defined herein shall be considered an excusable delay or non-performance, and neither Party shall be entitled to any additional compensation as a result thereof. (本契約に記載の不可効力による遅延もしくは不履行は、正当な(許される)遅延もしくは不履行とみなされ、いずれの当事者も、その結果としての追加的な補償の権利を与えられることはない) |
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「delay」は、債務の履行が遅れる=債務不履行=お金の支払にかかわるという意味で、契約において大きなインパクトを持つ用語です。 |
参考図書
法律用語辞典 有斐閣
英和中辞典 研究社
コンパクト六法 岩波書店
Oxford Dictionary of English 他