1. 英文契約書の訳語
英・日翻訳全体に言えることですが、英文契約書の翻訳において使用される語句、単語に関して、同じ語句、単語でも複数の訳語が存在する場合が多くあります。例えば、「License」の訳語は、いわゆる「知的財産権」的意味では、名詞としての範囲でも「認可」、「免許」、「許可証」、「ライセンス」、「実施権」、「使用許諾」、「「使用権の許諾」等があり、動詞として範囲では、「許可する」、「認可する」、「免許を与える」、「ライセンスする」、「ライセンスを供与する」等、多々あります。
2. License Agreementを通して見る訳語
知的財産権契約の代表格の1つ「License Agreement」も、「実施権許諾契約」、「ライセンス契約」、「使用契約」、「使用許諾契約」、「許諾契約」等の訳語があります。また、これに関連して、「Licensee」は「実施権者」または「ライセンシー」、「Licenser」には、「実施権許諾者」または「ライセンサー」いずれかの訳語がそれぞれ使用されます。
*「License Agreement」を「License Agreement」ならしめているいくつかの条項があります。中でも重要な条項の1つである「Grant of License」は、「実施権許諾」条項または「ライセンスの許諾」条項として訳されます。この条項では、(1)「ライセンスを供与する実施対象の権利の明示と共に、当該許諾が、(2)「Exclusive(独占的(排他的))」または「Non-exclusive(非独占的(非排他的))」-「Exclusive license(専用実施権)」または「Non-exclusive license(通常実施権)」-、また、(3)当該許諾の対象に関する「Sublicense」―「再実施権」または「サブライセンス」と訳される-の有無等がありますが (これらについては、多くの出版物、解説書等に記載されています)、翻訳の観点からは、いずれの訳語を使用するかを決める必要あります。
3. Grant of Licenseから見た例
この条項「Grant of License」では、
(1)「ライセンスを供与する実施対象の権利の明示と共に、
当該「Grant of License」が、
(2)「Exclusive(独占的(排他的))」である「Exclusive license(専用実施権)」
または「Non-exclusive(非独占的(非排他的))」である「Non-exclusive license(通常実施権)」、また、
(3)当該許諾の対象に関する「Sublicense」―「再実施権」または「サブライセンス」と訳される-の有無等がありますが
(これらについては、多くの出版物、解説書等に記載されています)、翻訳の観点からは、いずれの訳語を使用するかを決める必要あります。
4. 多様な訳語の存在
最近では、内閣府の法令対訳辞書が整備され、この中でNon-exclusive license(通常実施権)とExclusive license(専用実施権)と訳されるように、「License」=実施権として、「License Agreement」は、「実施権契約」とし、「Licensing Agreement」を「実施権許諾契約」とするのが適当かもしれません。
ただし、「License Agreement」=「ライセンス契約」の名称も広く使われ、ことに、長年「License Agreement」=「ライセンス契約」の名称を使用してきたお客様も多く、この場合、契約書本文中でも、「ライセンス」、「ライセンスを供与する」、「ライセンスを許諾する」、「Licensee」=「ライセンシー」、「Licenser」=「ライセンサー」等の表記となることがあります。
また、End User 向けの「Software License AgreementまたはSoftware Licensing Agreement」は、「ソフトウェアライセンス契約」、「ソフトウェア利用許諾契約」または「ソフトウェア使用許諾契約」等の表記が多く使用されていますが、企業ごとに異なります。
そのため、翻訳開始前に、お客様には「License」を「ライセンス」、「実施権」または「使用許諾」等から、どの表記を使用するかを確認させていただいております。なを、「Licensee」、「Licenser」は、日本語化しているようで、多くの場合、「ライセンシー」、「ライセンサー」として使用しています。
参考図書:法律用語辞典(有斐閣)、英和大辞典(研究社) コンパクト六法(岩波書店)、Trend (小学館)、Oxford Dictionary of English、Collins Consise Dictionary ビジネス法律英語辞典、 特許庁特許情報プラットホーム、日本法令外国語訳データベースシステム、他