英文契約書における慣用句的な用語
英文契約書で使われる慣用句的な用語、いわゆる、リーガルジャーゴン(Legal Jargon)の続きです。本来なら、体系的に理路整然とまとめるのが良いのでしょうが、そのあたりブログなのでご容赦ください。その時々に、思いつくままに書いています。英文契約書で使われる慣用句的な用語、いわゆる、リーガルジャーゴン(Legal Jargon)の続きです。本来なら、体系的に理路整然とまとめるのが良いのでしょうが、そのあたりブログなのでご容赦ください。
いずれにしても契約書翻訳の観点から見てみます。
今回は、「null and void」と「assign and transfer」を見てみます。
1. 「null and void」(無効)
「null」も「void」もいずれも「無効」という意味の他に、例えば、名詞としての意味を見ると「null」は、“ゼロ、価値がない”、「void」は、“欠けた、空虚、喪失”等の意味を持ちますが、「null and void」として英文契約書の慣用句として、「(法的に)無効」というニュアンスで使われます。以下例文を作成してみました。
先日、英文契約書の条項「一般条項」について、「Entire Agreement」(最終性条項)=その契約書作成に至るまでの文書、口頭における当事者間の了解事項は、すべて契約書に集約され、当事者間の最終的な合意を記載した唯一ものという考え方から、「This Agreement constitutes the entire agreement, and supersedes, whether orally or in writing, all prior agreements and understandings of the parties hereto with respect to the subject matter hereof, and cannot be amended or otherwise modified except in writing executed by the parties hereto.(本契約は、最終的合意を構成し、口頭・書面によるものを問わず、本契約の主題に係わる本契約の両当事者間のすべての以前の合意と了解に優先し、また、本契約の両当事者が署名・捺印した書面による場合を除き、修正、または他の方法により変更することはできない。)という例文を作成しました。趣旨がやや異なりますが、
「With regard to this Agreement, all agreements, negotiations, understandings and correspondences between the parties hereto that took place prior to the date of this Agreement shall be null and void from the date of the execution of this Agreement.」(本契約に関して、契約の以前の日付でなされた当事者間のすべての契約、交渉、了解事項および往復書簡は、本契約の署名の日付から無効となる。)
その他、「null and void」が多く見受けられるのは、契約譲渡制限に関する条項で、例えば、「Any purported or attempted assignment or transfer without a consent of other party will be null and void 」(相手方の承諾のない譲渡または移転の意図もしくはその試みは、無効である)
なを、契約譲渡制限に関する条項については、ブログ「英文契約書の条項」の「一般条項」の中で、後程、別途、見てみます。
2. 「assign and transfer」(譲渡する/譲渡し、移転する)
作成した上記の例にある「assignment or transfer」は、名詞ですが、同様の意味です。契約譲渡制限の条項は、基本的には、契約の譲渡(下請け業者の利用を含む)の禁止、制限、条件付制限を設けた条項を規定します。
「assign and transfer」が契約譲渡制限の条項で使われる場合の一般的な例(契約の譲渡の原則禁止(相手方が同意した場合を除く))
「Party A shall not assign or transfer its right and duties hereunder without Party B’s prior written consent.」(Aは、Bの事前の書面による承諾なしに、本契約にもとづくその権利と義務を譲渡し、移転しないものとする)
また、「assign」が単体で使われることもあります。
「Neither party may assign any of its rights under this Agreement without the prior written consent of the other party.」(いずれの当事者も、相手方の事前の書面による同意なしに、本契約に基づくいかなる権利も譲渡することはできない。)
もちろん契約譲渡制限以外で使われることもあります。例えば、「assign」を単体で使い
「Party A may assign this Agreement or any interest therein.」(Aは、本契約またはその所有権を譲渡することができる。)などとすることもあります。
なを、「譲渡」は、権利、財産、法律上の地位等を他人に移転すること(法律用語辞典)
「移転」は、「移転」⇒「移動」として、物の移動の他に、「移転」=事実関係の変動、権利の変動 = 法律関係の変動)(法律用語辞典)などとされています。
参考図書:
法律用語辞典(有斐閣)
ランダムハウス英和大辞典(小学館)
法律英単語ハンドブック(自由国民社)