契約書翻訳に際し、特に英文契約書の翻訳を行う際に、気配りが必要な事柄の1つが「固有名詞」のあつかいです。例えば、日本語から英語への翻訳(契約書、株主総会議事録、定款、その他法律文書、技術文書、ビジネス文書にかかわらず)の場合、すべての翻訳で人名については、一般的と思われるお名前でも「読み方」を必ず確認します。また、地名、住所、建物等についても、「読み方」を確認することが必要です。
次に、固有名詞に関して、気配りが必要なのは、「組織名」と「役職名」です。
同じ役職名でも、例えば、「最高経営責任者」=「CEO(Chief Executive Officer)」等、一般的に流布している役職名もありますが、同じ役職名でも、辞書等により、異なる場合が多く見受けられます。例えば、「専務取締役」は、「Managing Director」が使用される場合が多いようですが、「Executive Director」、「Chief Director」等と表記されることもあります。また、「常勤」と「非常勤」についても、例えば、「常勤」=「Permanent」、「Full Time」等があります。一例をあげると、「常任監査役」は、「Permanent Auditor」、「Standing Auditor」、「Statutory Auditor」、「Full Time Auditor」等さまざまです。「常任監査役」と同じような意味で用いられる「常勤監査役」は、「Full Time Auditor」または「Standing Statutory Auditor」とされます。
また、組織により、役職名について内部的に固有の英文名称を策定している場合があります。一例として「Supervisor」という役職名が記されていたため、「上司」もしくは「監督者」の意味合いで考えていたところ、その組織内では、「係長」という正式名称が内部的に定められているとのことがありました。「係長」=Chief、Section Chief等の場合が多く、また、「Supervisor」それ自体を独立したある職位の名称として使う場合もあるようです。
同様に部長、課長という職位の名称についても、「部長」=Manager, General Manger, Division Chief, Director, Director General, Head of Section, Head of Division等があり、「課長」=Section Chief, Chief of Section, Manager, Section Manager等々、いろいろな表記があり、また、組織ごとに異なります。
「組織名」でも、「部」を例にとると、「Division」、「Section」、「Unit」、「Department」等、組織により、任意にその組織内において適切と思われる語が使用されています。
また、英語から日本語への場合も、同じ単語で複数の訳がある場合があります。このように、「組織名」、同じ名称でも「役職名」は、各企業、組織により、異なります。
役職名については、先入観をもって接するのは禁物のようです。人名、組織名、役職名については、翻訳に際して、確認することが原則です。
例文に訳文が付いている場合、それらの訳文は暫定訳(法律文を除く)です。
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参考図書
カレッジライトハウス和英辞典(小学館)
New Japanese English Dictionary(研究社)他