今回、false、fault、failure等をとりあげてみました。意味については、主に契約書や法律文書で主に使われる意味をとりあげています。
- false: 主に「虚偽の」、「偽りの」等の意味で形容詞として使われます。成句としては、false accusation(誣告罪、濡れ衣)、false charge(冤罪、false description;false indication(虚偽表示)、false matter(不実の事項)、false personation(氏名詐称)、false statement(虚偽表示、虚偽陳述)、false testimony(偽証)などがあります。
Franchisee shall not make any false or misleading representations with respect to products or services to be sold to the customers. (フランチャイジーは、顧客に販売される製品もしくはサービスに関して、虚偽または誤解を招く表現を行わない)
The Supplier shall not provide inaccurate, misleading or false information to the Buyer. (サプライヤーは、買主にて不正確な、誤解を与えるまたは虚偽の情報を提供しない)
- fault: 「短所」、「落ち度」、「過失」、「義務の不履行」、「瑕疵」、「欠陥」、「故障」等の意味で使われます。
成句としては、fault in common(過失相殺)、fault in explanation(説明の誤り)、fault in calculation(計算の誤り)などがあります(ほんの一部です)。この言葉は、障害、故障、 漏電等の意味で技術文書でも良く使われているのを見かけます。例:The preventive maintenance described in this manual is useful for avoiding faults such as disconnection, short circuit, and poor contact.(本マニュアルに記載の予防保守は、断線、回路のショート、接触不良などの障害を回避するための有用です。)
“Critical Fault” means a fault specified as a ” Critical Fault” in this Agreement or any other Non-Compliance with laws and regulations.(「重大な過失」とは、本契約で「重大な過失」として指定された過失、または法律および規制に対するその他の重大な違反を意味します。)
Any claim for breach of contract, any fault or negligence or otherwise whatsoever arising out of or in connection with this engagement shall be brought to the Audit Commission.(契約違反、過失または怠慢、あるいは、それ以外の場合、この契約に起因または関連して発生したものすべては、監査委員会に提起されるものとします。)なお、「fault or negligence」をまとめて「過失」とする場合のあります。
The information shall not be categorized as the Confidential Information if it was in the public domain at the time of its disclosure or later became part of the public domain through no fault of the Receiving Party.(その情報が開示の時点で公有であった場合、または後で受領者の過失によらず公有の一部となった場合、その情報は機密情報として分類されないものとします。)
- failure: 契約書、法律文では、主に「不履行」、「破産」、「倒産」、「支払い不能」等の意味で使われます。日常語では「失敗」とされる場合が良く見られ、技術文書では、「故障」、「不具合」、「機能不全」等の意味で使われます(例:failure of engine (エンジンの故障))例えば、製品等の売買に関する契約などでは、技術的な意味で「failure」が使われること多く見受けられます。ネガティブな意味を持つこと言葉ですが、使い勝手の良い言葉です。
なを、文脈的に「fault」と置き換えることもできる場合があります。The preventive maintenance described in this manual is useful for avoiding any failure such as disconnection, short circuit, and poor contact. (本マニュアルに記載の予防保守は、断線、回路のショート、接触不良などの障害を回避するための有用です。)
If the failure is not corrected within fourteen (14) days after a written notice specifying the nature of the failure is given to other party who has failed to fulfill its obligations under this Agreement, (本契約に基づく義務を履行しなかった相手方に不履行の性質を明記した書面による通知が行われてから14日以内に不履行が是正されない場合、)
The Buyer shall be deemed to have accepted the Products upon shipment, unless Buyer immediately notifies the Seller in writing that Buyer rejects a particular unit of the Products for failure to conform to the specifications. (買主は、仕様書に準拠していないために製品の特定のユニットの受け入れを拒否することを購入者が書面で直ちに販売者に通知する場合を除き、出荷時に製品を受け入れたと見なされる)
Systemic Failure” means, in relation to the Equipment, a significant material defect (meaning a defect that prevents the Equipment from being used) (「システムの不具合」とは、装置に関連する重大な具体的瑕疵(装置の使用を阻害する瑕疵の意味)を意味する)。
なを、以前からこのブログの目的は、1つの単語に様々に意味を持つ傾向がある英単語が契約書・法律文書で使われる場合、特有の意味を持つことがあります。このブログではその単語が英文契約書で使われる場合のその単語の意味と使われ方を手っ取り早く理解し、英文契約書を読んだり、書いたり、和訳したり、英訳するための一助になればとの考えからつれづれに書いています。そのため法律的な意味や解釈については、専門書を参照してください。
余談ですが、2020年4月1日から民法の改正におり、請負契約で「瑕疵(かし)」と呼んでいた法律用語が廃止され、売買契約で規定した「契約不適合」という言葉に置き換わっています。そのためか、最近、日本語から英語への翻訳でも、契約により「契約不適合」という言葉を見かけるようになりました。ところで「fault」と並んでも文脈上「瑕疵」を意味する単語は「defect」です。個人的には、「defect」方が使い勝手(特に和文英訳)の良さを感じます。
参考図書:
研究社新英和辞典(研究社)
ランダムハウス英和大辞典(小学館)
カレッジライトハウス和英辞典(研究社)