契約書翻訳

英文契約書の関係代名詞(その1)

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契約書翻訳の視点にかかわらず、当然のことながら英文契約書にも関係代名詞は使われています。ただし、経験的には、その使用頻度はそれほど多いという印象は受けません。むしろ一般的な英文のほうが多く遭遇します(いずれもあくまで個人的な印象です)。英文契約書を和訳するにせよ、日本語でかかれた契約書を英文に翻訳するにせよ、関係代名詞を扱うことは避けて通れない部分です。

一般的に関係代名詞が得意とか、好きとかという話はあまり聞いたことがありません。理由のひとつとしては、日本語には関係代名詞に相当する言葉が存在しないといこともあるようです。

関係代名詞について書かれた入門書は多くのものが世に送り出されていますが、ここでは、契約書翻訳の観点からみてゆきます。とはいっても、ここでは契約書での使われ方云々の前に、まずは関係代名詞の成り立ちを振り返ってみたいと思います。

1.  関係代名詞の成り立ち

2つの文章を、who、which、thatやwhatを使い1つの文章にするため使われます。「英語の2つの文章を1つにまとめるための道具的なもの」としてとらえると良いかもしれません。教科書にでてくる関係代名詞の種類とか格(主格、目的格等)についての文法的解説は省略します。

「I like this bicycle.」、「My mother bought me a bicycle.」という2つの文を、関係代名詞を使って一つの文章にすると「I like this bicycle that my mother bought me.」となります。

関係代名詞を「英語の2つの文章を1つにまとめるための道具的なもの」といいましたが、ほとんどの場合、関係代名詞を使う必要がない場合の方が、関係代名詞を使う必要がある場合より多いのが現実です。簡単に言うと、学校で習ったように「英語は1つの文章中に動詞は1つ」という原則があります。上記の文章、「I like this bicycle that my mother bought me.」では、「that」以下は、どんな自転車なのかを形容詞的に表現しています。

他の例では、「He goes his house to eat lunch」という文章の場合、「He goes his house」「He eats lunch」という2つの文章に分けることもできます。彼が行う行為「goes」と「eat」が2つあるため(つまり、動詞が2つ)、上記の原則を踏まえ、動詞「eat」の部分を不定詞の「to eat」にしてつなげています。つまり、これで、動詞が1つになります。

内容がそれましたが、英文契約書でみかける関係代名詞の例を作成した例文を通してみてみます。

2. 契約書に出てくる関係代名詞の例

The System may only be used on or in relation to Products which conform to in the Specifications. (システムは、仕様に準拠する製品でのみ使用できる)

This cost shall be categorized in acquisition costs, which are reported to investors based on the annual financial report. (この費用は、年次財務報告に基づいて投資家に報告される買収費用に分類される)

Either party may seek injunctive relief or other equitable remedies against any breach of this Agreement, in addition to any other legal remedies which may be available. (いずれの当事者も、有効なその他の法的救済に加えて、本契約の違反に対する差し止めによる救済またはその他の衡平法上の救済を求めことができる)

If any dispute arises in the course of the performance of this Agreement, either party shall immediately give a written notice to the other party, which must include the reasons for the dispute. (本契約の履行中に紛争が発生した場合、いずれかの当事者は、紛争の理由を記載した書面による通知を直ちに相手方に通知する)

以上は、英文契約書で使われる場合の関係代名詞の例文ですが、上記の例よりも、実際には、英文契約書では「前置詞+関係代名詞」のパターンが多く見られます。

例えば、In no event shall Buyer’s liability under this Agreement exceed the purchase price of the Product sold hereunder with respect to which losses or damages are claimed.(いかなる場合も、本契約に基づく売主の責任は、請求された損失もしくは損害賠償に関連して、本契約に基づき販売された製品の購入価格を超えない)

関係代名詞自体が日本語にないため、「前置詞+関係代名詞」はなじみが薄いという方々もおられるようです。「前置詞+関係代名詞」の説明と「契約書に出てくる前置詞+関係代名詞の例」については、別の機会にあらためて見てゆきます。

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

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