英文契約書の用語・単語の中で今回は、「liable」について見てみたいと思います。契約書では外せない単語の1つです。まずは、辞書で単語「liable」について主な意味を調べてみると以下の様な意味があります。
1. liableの意味
「(法律上の)責任を負うべきで」、「責任があって」、「(~義務に)服すべきで」、(「病気などに)かかりやすくて」、「~しがちで」、「…しそうで」等
実際に「liable」が使われる場合、「liable」は形容詞のため、英文契約書に限らず、多くは「liable」の頭に「be」を付け、後ろに「to」または「for」を付けた熟語「be liable to」、「be liable for」の形でよく使われます。
be liable to + 名詞または動詞。
とりあえず英文契約書や法律文書等で良く目にするbe liable toの例として、いくつか例文を作ってみました。
The Company shall not be liable for any damages other than those resulting from the obligations stipulated in this Agreement. (当社は、本契約に定める義務に起因する損害以外の損害については一切責任を負わないものとします。)
Neither party hereto shall be liable to the other party for failure to perform its obligations due to the occurrence of any act of God, fire, act of government or state, war, civil commotion, insurrection, embargo and any other reason beyond the reasonable control of either party.(本契約のいずれの当事者も、天災、火事、政府または国家の行為、戦争、内乱、暴動、禁輸、およびいずれかの当事者の合理的な制御を超えるその他の理由が生じた場合、その義務を履行しなかったことについて相手方に責任を負わないものとします。)
Neither Party shall be liable to the other for failure or delay in the performance of a required obligation. (いずれの当事者も、必要な義務の履行における不作為もしくは遅延に対し、相手方に対し責任を負うことはない。)
Neither Party hereto shall be liable to the other party for failure to perform its obligations hereunder or under any Order due to the occurrence of any act of God.
本契約のいずれの当事者も、不可抗力の発生により、本契約に基づく、または、注文に基づく相手方の不履行に対して、相手方に責任を負わせることはないものとする。
その他、法律文で使われる例として。
If a liquidator fails to discharge the liquidator’s duties, the liquidator is liable to compensate such Liquidating Stock Companies for any losses arising as a result.
(清算人は、その任務を怠ったときは、清算株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。)(会社法)
いずれもすでに述べた「(法律上の)責任を負うべきで」、「責任があって」の意味で使われています。
ところでこれとは別に、上記の「liable to」に関しては、以前2回ほど取り上げたことがある「subject to」が使われた英文契約書の文章を日本語にした場合、時として「liable to」を使用してある場合と同じような意味に訳せることがあります。英語のネィティブでも、「liable to」と「subject to」は同義語ではないかと思う人もいます。ただし、そこには微妙な違いがあります。以下を参照してください。
2.「liable to」と「subject to」の微妙な違い
A: In the case of “liable to”, an event is likely to happen but may not do so.
B: In the case of “subject to”, something has happened or is going to happen.
Aの「liable to」の場合、イベントが発生する可能性がありますが、発生しない可能性もあります。
Bの「subject to」の場合は、何かが起こったか、または起こりそうです。「subject to」の方が発生し易いようです。
英文契約書を作成する場合、この微妙な違いを考慮して、作成するとよいかもしれません。実際の英訳の場合、混同して使用している場合も多いようです。
上記を踏まえて、以下に、辞書から調べた「be liable to」の例文を掲載します。
3. liable toについて
be liable to~しがちだ、~しそうだ、~の傾向がある、~に傾きやすい、~する恐れがある:良くないことに用いられる表現。
・This computer is liable to break down any minute. : このコンピューターはすぐに故障する。
・He’s liable to do anything. : あいつはどんなことでもやりそうだ。
be liable to〔病気などに〕かかりやすい
be liable to~に対して責任がある、~する義務がある
be liable to a fine: 罰金を科される(可能性がある)
be liable to be wrong: 間違いやすい
be liable to criminal charges: 刑事責任に服すべきである
be liable to criminal punishment:刑事処分を受けるべきである
be liable to custom duty: 関税の対象である
be liable to err: 誤る恐れがある
be liable to make mistake: 間違いを犯しかねない
be liable to pay compensation: 損害賠償を支払うべきである
be liable to recurrence: 再発しやすい
be liable to variation: 変化しやすい
4. subject toについて
subject toの意味としは、
〈…を〉〔…に〕服従させる,従属させる, 〈人を〉〔いやな目に〕あわせる; 受けさせる, [subject oneself で] 〔…に〕身をさらす, 〈ものを〉〔…に〕当てる,かける, 受けやすくて,こうむりやすくて; 〔…に〕かかりやすくて,陥りやすくて等があります。
これらに加え、以前、ブログ「英文契約書の単語・用語 Subject toについて」で述べたように、「subject to」の立ち位置は、その後に続く内容を導入する役目を果たします。契約書の場合、例えば、subject to以降に記載の内容がacceptable(受け入れられる)であれば、その書かれた内容が受け入れられ、unacceptable(受け入れがたい)ものであれば、その書かれた内容は受け入れがたいものであることになります。
例えば、Supplier warrants that the price is not subject to increase.
(サプライヤーは、価格を値上げしないことを保証する。)
また、一般的は事実を述べるだけの場合でも、The contents of this manual are subject to change without prior notice.(本マニュアルの内容は、事前の通告なしに変更されることがあります。)
以下に、辞書から調べた「be subject to」の例文を掲載します。
be subject to〔法律・法則・規則など〕の支配下[影響下]にある
・This Agreement shall be subject to the laws of Japan. : 本契約は日本国の法律に従うものとする。
be subject to〔政府【機関】・管理組織など〕の認可[承認]を必要とする[受けることを条件とする]
be subject to ~しがちである、~の癖がある
be subject to~にさらされる、~を被る
・This region is subject to earthquakes. : この地域は地震が起こりやすい。
・The terms of the contract are subject to change. : 本契約の条件は変わることがあります。
be subject to~次第である、~に依存する
be subject to a $__ fine: _ドルの罰金を科せられる
be subject to a custom duty: 関税対象である
be subject to a major change: 大幅な変更の可能性がある
be subject to a special rule: 特別規則[ルール]の対象になる
be subject to a variety of influence: さまざまな影響を受けることになる
be subject to additional fee:追加料金の対象となる
be subject to adverse effect:弊害[悪影響]を受けることになる
be subject to an annual review:毎年見直される
be subject to appropriate criminal:しかるべき刑事処分を受けさせられる
be subject to approval by: (人)の承認を得ることを条件として
「liable to」と「subject to」について見てみました、英文契約書に限らず、これら2つの単語の意味を感覚的に理解するための一助になればと考えました。
参考図書
ランダムハウス英和大辞典(小学館)
新英和大辞典 (研究社)
The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press) 他