英文契約書翻訳に携わる中で経験上、よく目にしたり、よく使われたり、または知っておいて損はないと思われる単語と用語について、契約書翻訳の観点から簡単な例文を作成してその用例(一部ですが)を見てみます。
前回、「credit」について触れました。今回、「credit」と対になる「debit」について簡単に見てみます。
de facto | (=from the fact)事実上の
de facto contract(事実上の契約) de facto corporation(事実上の会社) de facto dissolution (事実上の解散) |
dead loan | 貸倒れ、こげつき融資、無期限貸付金 |
deadline | 期限、締切り
cf term:期限、期日、任期、勘定日 |
dealer | 販売店、販売業者、ディーラー |
deal dealings |
取引 |
debenture | 社債、無担保債権 |
debit/debt
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借方、債務、借金
cf credit:(貸方、債権) |
1. debitとcreditについてdebitとcreditについては、以前にもブログ「英文契約書の用語、構文(その13) 「CreditとLoan」」の中で書いたことがあります。これらの用語は、日本語としても使用されています。ただし、なじみのある言葉にしては、英文中に記載された場合、意味として分かりにくいことがあるようです。あらためて簡単に見てみます。 例えば、「売買契約」で、AがBに商品を販売する場合、その売買代金を、Bは、Aに対して、Bが商品を受領して後、10日後に支払うことを約したとします。 実際にAからBに商品が引き渡された時点で、Aは、Bに対する売掛金(債権)を有し、BはAに対する買掛金の支払い義務(債務)を負っています。 この状況-A(債権者)とB(債務者)双方の立場-を表すのに「Credit」が使われることがあります。 この売買代金は、A(債権者)の立場では、「my credit to B」、B(債務者)の立場では、「my credit from A」となります。 debtee/creditor(債権者)debtor/obligor(債務者) その他債務は、obligation、liabilities等が使われます。また、債権は、claim等が使われます。詳しくは、辞書や専門書をご参照ください。 2. 実際の用例実際の英文契約書やビジネス文書では、上記のように親切に記載されていることは、まず期待できません。契約書の内容、当事者間の関係、前後の文脈から判断します。 なを、英文契約書やビジネス文書のドラフティングを行う場合、慣れないうちは、creditとdebitの使用は、避けたほうが良いかもしれません。 |
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deceit
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詐欺
fraud、swindle |
decision | 決定、判決
decision of dismissal of prosecution(公訴棄却の決定)、decision to reopen of the proceedings(再審開始決定)、decision as to the principal matter(本案の裁判) |
declarant | 表意者 |
declaration | 宣言、申告
declaration of invalidity(無効宣言) declaration of provisional execution (仮執行の宣言) declaratory judgment (宣言的判決) |
declaration of intention | 意思表示(manifestation of intention) |
declare | 宣言する、言明する、自分の立場を表明する、意思表示する、申述する |
declare orally | 口授する |
decree | 判決、布告 |
主に「credit」と対になる「debit」について簡単に見てきました。「credit」は、「クレジット」として日本語として使われているためか、単語「credit」が本来持つ多様な意味を理解しないまま、「credit」=「クレジット」(日本語として使われているもの)に単純に置き換えてしまうと、文脈上の本来に意味を見失うこともあり、注すべき単語です。
参考図書
- 法律用語辞典(有斐閣)
- 英和大辞典(研究社)
- コンパクト六法(岩波書店)
- Trend (小学館)
- Oxford Dictionary of English他