英文契約書の長文読解
英文契約書には長文の部分が多く登場します。英文を読む上で長文読解は難しい分野です。
そのため、例えば、英文に関する多くの試験では、長文読解が大きな配点を占めている場合が多々見られます。契約書翻訳の視点から解説します。
英文契約書の誤字、脱字、文章の脱落、消し忘れ
ところで、まず試験では見かけませんが、実際の英文契約書では、「いわゆる“typographical error (通称、typo)”と称される誤字、脱字、誤植」または「不注意によるによる文字、文章の脱落、消し忘れ」等が発生することがあります。
下記に作成したサンプルの文章は長文ではありませんが、微妙に読みにくく感じます。それもそのはず、「抜け」があります。
It is not bound by any contractual obligation, juridical decision or restriction order from any issuing authority, any statutory or regulatory duty.
もちろん、訳すことはでき、訳文は、「これは、契約上の義務、命令発行機関による決定もしくは差し止め命令、または制定法上の義務もしくは規制法上の義務により拘束されない。」となります。
ただし、よく読むと、「any issuing authority」と「any statutory or regulatory duty」が微妙につながりません。理由は、「or」を抜いてあるからです。
改めて文章を見て行くと、
A. contractual obligation (契約上の義務)
B. juridical decision or restriction order from any issuing authority
(命令発行機関による決定または差し止め命令)
C. any statutory or regulatory duty(制定法上の義務もしくは規制法上の義務)
上記の3本立ての制約により、主語である「It」が「not bound」されている。
このように考えると、「or」がany issuing authorityとany statutory or regulatory dutyとの間に必要になることがわかります。
インデックスとなる言葉が重要になる
上記の例文は、短いものですが、長い文章になってくると、文章を構成する上で「and」、「or」の様なインデックスになる言葉がとても重要になります。
実際の英文契約書では、さらに文章が長くなります。元々長い文章の中に、あらゆる想定で、あらゆる言葉を足して、契約文書として抜かりなく、漏れがないように作成されているため、さらに、翻訳しにくくなっています。「and」、「or」ばかりではない、文章の区切りとなるインデックスワードを見つけることが翻訳の際に必要となってきます。
また、例えば、長年の間、何回も異なる相手方に対して発行されたような契約書は、「typographical error 」に加え、文章の未修整、消し忘れ、脱落、本来追加すべき部分の欠落等が存在することがあり、その場合でも、これらを見極めるための1つの手段としてインデックスとなる言葉が重要になることがあります。
参考図書:
研究社新英和辞典(研究社)
ランダムハウス英和大辞典(小学館)